過去10年間の試験合格率が15~17%の宅建。
決して、合格率が高く難易度の低い試験ではありませんが、毎年大勢の人が受験する人気資格です。
難易度が高いと言われる宅建を偏差値で表すとどれくらいなのでしょうか。
宅建の資格取得を目指す人のために、難易度を基準に勉強時間の目安や勉強方法について解説します。
また、宅建の難易度が今後さらに上がると言われている噂の裏を調べてみましょう。
- 宅建の難易度を偏差値で表すと「50ー<60」
- 宅建の資格取得に必要な勉強時間は約250時間
- 宅建の難易度は上がるが、教材や受験生のレベルも上がっている
難易度の高い宅建の仕事内容・資格概要について解説
宅建は正式名称を「宅地建物取引士」といいます。
宅地建物取引業で活用する資格であり、不動産取引のエキスパートであることを証明します。
宅建の資格を取得するには、宅建試験を受けなければなりません。
不動産売買や賃貸物件のあっせんは、宅建の国家資格を有している人しか行なえない独占業務です。
- 重要事項説明書への記名・押印
- 不動産契約時の重要事項の説明
- 契約書への記名・押印
- 宅建試験に合格していること
- 2年以上の実務経験を有していること
- または実務経験に変わる実務講習を修了していること
問題数は50問で、四肢択一式。
試験時間は2時間です。
宅建試験に合格し、宅建士として登録すれば就職や転職時に役立ちます。
不動産事務所にとって、宅建士は絶対に必要な存在だからです。
また、将来マイホームを購入したり売却したりするときには、宅建の資格が役立ちます。
宅建の難易度を偏差値で表すと「50-60」
不動産適正取引推進機構は宅建試験を受験した人の得点分布状況を非公開にしています。
ですから、宅建試験の偏差値を正確に抽出することはできませんが、目安として「50-60」と想定できます。
大学受験の偏差値で表すと、青森公立大学や静岡大学、神戸学院大学や関西学院大学の偏差値に相当。
しかし、試験の難易度は偏差値だけで決まるわけではありません。
特に、宅建は受験資格が設けられていないため、さまざまな立場の人が受験しています。
ですから年齢・経験・モチベーション・健康状態・勉強量などのあらゆる要素が関係しているのです。
このように考える必要はありません。
記憶力の低下が著しくなる前の若いうちに受験するのは、一つのポイントです。
また、受験合格したあとの人生設計を考えてモチベーションを高めると試験結果に影響する場合があります。
宅建の難易度から考える勉強時間の目安
宅建は不動産取引に関係する国家資格の一つですから、取得したいと考えている人は少なくありません。
しかし、合格率は10%台で難易度が高いのも事実。
では、どれくらいの勉強に時間を割けば合格ラインに達するのでしょうか。
宅建合格に必要な勉強時間は250時間です。
もちろん、必要な勉強時間はすでに持っている知識量や能力によって差が生まれるため目安としてお考えください。
基礎知識や経験が全くない初学者の場合は、合格するまでに500時間費やしている人もいます。
また、試験経験者や勉強方法を効率化した人の中には、100時間程度で合格を狙ったケースもあるようです。
余裕を持って300時間を勉強時間として設定するとしましょう。
1日2時間を勉強時間に使えるなら、300時間勉強するには約5か月間必要です。
ですから、宅建の試験月から5カ月前には勉強をスタートしなければなりません。
1年以上前からスケジュールを立てて合格を目指すのもおすすめですが、暗記問題は記憶が要ですから試験が近づいてから短期集中したほうが有利ですよ。
宅建は独学で合格できる難易度?
合格するまでにかなりの勉強時間が必要になりますが、独学で宅建士になることは可能です。
実際、独学で宅建合格を勝ち取った人はおられます。
ただし、合格率10~15%の難関国家資格である宅建を独学で取得するのはかなり厳しい挑戦です。
独学の場合、自分でテキストを選び、学習スケジュールをたてなければなりません。
もし、わからないことがあっても情報収集や問題解決を自力でする必要があるのです。
スクールに通ったり、通信講座を受講した方が、勉強に集中できるでしょう。
それでも、独学で宅建士を目指すという人のためにおすすめの勉強方法を紹介します。
独学で宅建合格を目指すポイント
独学で宅建を目指すためには、効率よく学ぶための方法を身に付けなければなりません。
限られた時間の中で、着実に知識を取り入れるためにどのような方法を使えばいいのでしょうか。
- 4つの科目別の配点をチェックする
- 科目に優先順位をつけて取り組む
宅建の科目別の配点をチェックする
宅建の問題は4つの項目で成り立っています。
宅建業法:20問
民法:14問
法令上の制限:8問
税他:8問
出題形式は四肢択一式。
問題数は50問と少なく見えるため、簡単に思えるかもしれませんが出題範囲は膨大です。
ですから、一つずつ丁寧に学んでいくよりも配点の高い、宅建業法や民法を中心に勉強をスタートさせた方が効率的でしょう。
宅建の科目別の優先順位を決める
資格を取得するための試験でありがちな勉強方法が、満点を目指して完璧に出題範囲を網羅しようとすることです。
しかし、完璧を求めるあまり途中で挫折してしまったり、まんべんなく出題範囲を網羅できないまま試験を迎えてしまうかもしれません。
宅建試験は、各科目で足切りラインが設けられている試験とは違い、全体の合格基準点が設定されています。
ですから、配点が多い科目を重点的に勉強して確実に得点を稼ぐほうが効率的です。
宅建の試験科目の中では、宅建業法が20点配点、民法が14点配点。
2つの科目だけで全体の50%以上を占めているため、宅建業法と民法を優先的に勉強しましょう。
難易度より大切!宅建の正しい勉強方法
合格率は10~15%、偏差値に例えると「50-60」と難易度の高い宅建。
しかし、難易度ばかり考えてあきらめてしまうのではなく、合格を目指せる正しい勉強方法を修得しましょう。
- 参考書をざっと読んで全体を把握する
- 科目ごとの特徴を把握する
- 過去問を繰り返し解く
- 模試を利用してレベルを確認する
初学者の場合は特に、知識0の状態で一つずつ読み進めるより読み飛ばしながら全体像を把握する方が大切です。
宅建試験は、宅建業法・民法・法令上の制限・税他という4つの科目に分けられています。
それぞれの特徴に合わせて勉強方法を工夫しましょう。
過去問を繰り返し活用しましょう。出題傾向を把握し、正答率が上がれば応用問題にも対応しやすくなります。
過去問で間違えた部分はしっかり見直し、弱点を発見したら克服を目的に勉強しましょう。
模試は試験の雰囲気を感じながらできるのでおすすめ。
自分の学習レベルをチェックして、今後のスケジュールを見直しましょう。
宅建の難易度を他の不動産関係の資格と比較!
宅建は合格率10~15%という狭き門ですが、国家試験の中では難易度が低めです。
では、不動産取引に関連した他の資格と宅建を比較して難易度をチェックしてみましょう。
資格 | 勉強時間 | 合格率 |
---|---|---|
不動産鑑定士 | 2,000~5,000時間 | 30/10% |
マンション管理士 | 600時間 | 10% |
二級建築士 | 700時間 | 20% |
不動産鑑定士は宅建からステップアップに使われる事の多い資格です。
短答試験と論文試験の2部構成になっており、二次試験の合格率は一次試験の3分の1にまで下がります。
マンション管理士は独占業務がないため、取得するメリットが感じにくいでしょう。
宅建資格を取得した後にチャレンジするケースが多く見られます。
二級建築士は受験資格が厳しいため、宅建のように気軽に受験できる資格ではありません。
しかし、合格率20%前後と高いのが特徴です。
では、宅建と同じような国家資格とも比較してみましょう。
資格 | 勉強時間 | 合格率 |
---|---|---|
社労士 | 1,000時間 | 6% |
中小企業診断士 | 1,000時間 | 20~30% |
行政書士 | 1,000時間 | 10% |
社労士・中小企業診断士・行政書士のどれも、勉強時間は宅建の4倍。
合格率は社労士がかなり低く、行政書士と宅建は同レベルといえます。
このように比較すると、宅建に必要な勉強時間はかなり少ないので、仕事や他の学業と並行しながら資格取得を目指しやすいと分かります。
しかし、合格率は10%程度なので決して簡単な試験ではなく、正しい勉強方法が必要です。
宅建は難易度が高いけど人気なのはなぜ?
宅建は国家資格の中でも受験者数が非常に多い試験です。
受験者数が多いからこそ、試験の難易度が上がっているといっても過言ではありません。
宅建が人気を維持している理由は次の4つです。
- 取得しやすい難易度・選択式出題だから
- 就職や転職に有利になるから
- 会社によっては昇格や昇給につながるから
- 試験に合格すると一生有効だから
また、受験資格が設定されていないため学歴や経験に関わらず受験できるのも人気の理由です。
不動産業界では、従業員5人につき1人以上の割合で宅建士が事務所にいなければなりません。
ですから、宅建資格を保有している人は不動産業界において需要が高いのです。
金融業界や保険業界でもプラスに働くことが多く、就職・転職では有利。
加えて、宅建試験は一度合格すると、生涯有効です。
資格登録をしていなくても、試験合格者であることに変わりないのでいつでも資格登録の手続きを行えます。
このように、宅建士であることのメリットは非常に多いため目指す人が少なくありません。
また、不動産関係の資格や国家資格の中でも比較的取得しやすいことも人気の理由でしょう。
難易度の高い宅建の資格を効率よく取得する方法
宅建の勉強時間は250時間と、他の国家資格に比べて少ないためまとまった時間が確保できなくても取得することが可能です。
ただし、効率よく勉強を進めて短期間で合格をめざすなら、予備校や通信講座などの資格学校を利用するようおすすめします。
試験直前の対策を実施してくれるので、法改正にも柔軟に対応できます。
また、一緒に合格を目指す仲間がいるのでモチベーションを維持しやすいでしょう。
独学に比べて費用は掛かりますが、合格の可能性をアップさせられることを考えると必要な自分への出資といえます。
宅建の難易度が上がるって本当?難しくなっていると言える3つの理由
宅建は毎年20万人以上が受験に申し込んでいる人気資格。
そんな宅建の難易度が上がるという噂が流れています。
実際のところ、出題内容自体は余り変わっていません。
しかし、問題が長文化したり、問われ方が変わったりしたことで難しさを感じる人は増えています。
具体的に、宅建の試験難易度が上がると言われるようになった理由を3つ解説しましょう。
- 問題数が増えているから
- 受験生のレベルが上がったから
- 教材の質が上がったから
問題数が増えているから
宅建の出題形式に変化が見られているため、難易度が上がると考えられています。
例えば、個数問題形式。
正しい答えや間違っているものを選ぶのではなく、「この中で正しい選択肢はいくつあるか」と問われるため、正確な知識が必要です。
正解不正解を選ぶよりも、確実に知識を自分のものとしておかなければなりません。
受験生のレベルが上がっているから
宅建は相対評価されるため、受験者が増加しレベルが上がることによって合格率が下がります。
合格点が明確にされている場合は、受験者数や受験者レベルに関わらず自己レベルを上げるだけで合格率を高められます。
宅建は33~37点が合格基準点ですが、合格率は16%前後に設定されているので合格基準点に関わらず上位16%に入る必要があるのです。
ですから、受験生のレベルが上がると問題自体は難しくなっていないとしても合格できる確率は低くなります。
教材の質が上がっているから
受験生が多いということは、それだけ受験生データがたくさん集まっています。
苦手な部分や躓きやすい箇所をしっかりフォローできる教材があるので、学習に困りません。
独学でもしっかりイメージを膨らませながら勉強できるように、図解入り・写真付き・マンガ風の教材もあります。
ですから、スクールや通信講座を活用していても独学で学んでいても、大きく躓くことなく勉強を進められるため必然的に受験生のレベルが上がるのです。
対策が立てやすくなり、勉強方法が確立されている宅建は、他の受験生よりも高いレベルを目指さなければ蹴落とされてしまいます。
難易度が高いが将来性のある宅建の魅力
最近は、人工知能(AI)の発達により、人間の仕事が奪われていくといったニュースを耳にする機会が増えました。
その流れで、将来失われる可能性がある仕事の一つに不動産ブローカーがあります。
しかし、宅建は不動産販売において対面でのやり取りに欠かせない資格。
時代が移り変わってAIが発達しようとも、不動産業界において宅建は必要不可欠な存在です。
どんな業界で活躍できる資格なんだろう。
宅建士がもつ国家資格は不動産業界だけではなく、金融業界・保険業界・建築業界でも役立ちます。
宅建に知識を役立たせながら、他の関連資格を取得してダブルライセンスを持つ人も多くいます。
最後に、宅建の資格を活かしながら顧客をサポートできる業界について解説しましょう。
不動産業界
言うまでもありませんが、不動産業界で宅建の資格は需要が高いです。
宅建の資格を取得するには不動産に関する法律的な知識を勉強するため、営業の場でも役立ちます。
資格を持っていることにより、会社の業績アップにもつながるでしょう。
宅建の受験者数が増えることにより、宅建資格の価値が下がると考える人もいます。
しかし、申し込み者数全てが合格できるわけではなく、実際に宅建士として資格登録しているのは一部のみ。
試験合格者数に比べて、宅建業者で働いている人の増加率は高くないためまだまだ需要は高いままです。
金融・保険業界
金融業界でも宅建の資格は有利にはたらきます。
なぜなら、金融機関は多くの不動産を所有しているからです。
金融機関の総務部門や財務部門では、宅建の知識が役立つ資産管理・運用を行っています。
また、消費者に融資を行うべきかを判断する際にも、土地や建物の価値を見抜く宅建の知識が役立つでしょう。
金融業界でも、不動産に関する専門的な知識を持っている宅建の需要があります。
さらに、保険会社でも宅建の資格は役立ちます。
宅建は不動産取引において保険会社と交渉したり、金融機関のあっせん等も行わなければなりません。
そのため、保険会社での業務に生かせる部分があります。
最近では宅建とファイナンシャルプランナーの資格を持ち、保険会社で活躍している人もいます。
宅建士が保険会社で業務に携わると、顧客の住宅購入に関わるプランニングや住宅ローンの相談に対応できます。
顧客に対する幅広いサービスを提供できる資格保有者として、金融業界や保険会社では宅建士は重宝されることでしょう。
建築業界
宅建の資格が活かせる場は不動産・金融・保険業界だけではなく、建築業界にもあります。
大手建設会社は完成した建物を販売する事業も行っているため、宅建士も活躍できるでしょう。
建築士は建物の建築を行いますが、完成した建物を販売したり賃貸したりするには宅建士が必要です。
自社で建築から販売まで行えるように、不動産部門を設置している建築会社なら宅建士を雇用するでしょう。