独学では厳しく、何回も受験を繰り返してやっと合格できる司法書士は、専門的な法律知識を活用して国民の財産と権利を守る、社会的に責任のある国家資格です。
では、司法書士の難易度はどれくらいなのでしょうか。
他の国家資格と比較しながら、司法書士の合格率や平均受験回数、勉強時間などから分かる難易度を解説します。
司法書士を目指して、勉強を始めようとしている方はぜひ参考になさってください。
- 司法書士の合格率は約3%
- 司法書士の合格までの受験回数は5回以上がほとんど
- 司法書士の勉強時間は約3,000時間
【高難易度】司法書士とはどんな仕事?目指す4つのメリット
司法書士とは、専門的な法律の知識を持っていることを国家資格によって証明されている人たちのことです。
高度な法律知識を活用して人々の権利と財産を法律的に守るために、幅広い業務を行っています。
不動産の登記代理
会社設立や役員変更時の登記申請代理
供託手続きの代理
法律に関する提出書類の作成
簡易裁判所での訴訟・調停・和解代理
法律相談
成年後見事務
財産管理
企業法務
多重債務者の救済
司法書士は一度国家資格を取得すると、意志がある限り仕事を続けられます。
定年制度はないため、自分が望む限りいつまでも現役として活躍できるのが司法書士の大きな魅力です。
司法書士はいつから目指せばいいの?
司法書士は難易度の高い国家資格ですが、受験資格はありません。
国籍や学歴、年齢などの制限はなく、だれでもチャレンジできます。
司法書士試験を受験している人の多くは社会人であり、合格者の平均年齢は35歳。
また、40代以上の人もたくさん合格しているため社会人としての経験を積んでから、国家資格を取得するために挑んでいる人は少なくないといえます。
さらに、司法書士試験の合格者のうち約30%は女性です。
出産、育児などで一度現役を離れなければいけなくなった場合でも、後々復帰しやすい職業ですから、司法書士は女性にとっても人気があります。
司法書士の魅力
- 専門職ならではの安定した収入
- 開業資金が低い
- 廃業率が低い
- 社会に貢献できる
法律上、司法書士しか行えない独占業務があり、かつ全国で幅広く必要とされている業務であるためいつまでも安定した収入を見込める職業といえます。
男性の司法書士の中では、年所得が1,000万円以上になっている人もいるのです。
基本的に開業資金が1,000万円以上なのに対し、司法書士の開業資金は50~150万円程度で済みます。
特別な設備は必要なく、ある程度の広さの事務所とFAXや電話などお客様対応できるものがあれば開業できるのです。
そのため、運用費用も少なくて済み、廃業率が低い職業となっています。
国民の権利と財産を守るために、法律知識を生かして仕事ができるため社会に貢献していると感じられることも大きな魅力でしょう。
司法書士になるには難易度の高い試験に合格しなければならない
司法書士の資格を取得するためには次の2つの条件を満たしていなければなりません。
- 司法書士試験に合格する
- 裁判所書記官または法務事務官として10年以上職務につく
(または簡易裁判所判事副検事として5年以上職務につき、法務大臣の認可を受ける)
10月に行なわれる口述試験は、7月の試験合格者のみが受験可能です。
司法書士試験に合格するだけではなく、法務大臣の認定を受けると通常業務に加えて民事事件の代理業務を行うことも可能になります。
また、司法書士試験に合格したらすぐに司法書士として働けるわけではありません。
日本司法書士会連合会の名簿に登録する必要があります。
司法書士の難易度を大学の偏差値で考えてみよう
司法書士はかなり合格が難しい試験を乗り越えなければならない、と考えている人は多いようです。
では、司法書士の難易度について徹底的に解説しましょう。
司法書士試験の合格率は毎年約3%。
2018年の口述模擬試験アンケートによると、司法書士合格者の受験回数で最も多かったのは5回以上でした。
反対に、1回の試験で合格しているのはたった9.7%で、1割にも達していません。
短期間での合格は難しく、何度もチャレンジしている受験者が多い中、合格率は非常に低いのが司法書士試験です。
司法書士の難易度を分かりやすく数値化した偏差値。
正確な偏差値は、全ての受験者の得点から計算しないと判断できないため、あくまでも想定値ですが約75~78です。
つまり、超難関の高校や大学を受験するときと同じほどの偏差値が必要とされているほど、難易度の高い試験といえます。
司法書士の難易度に怖気づかない!正しい勉強方法・勉強時間
初学者が司法書士試験に合格するまでに、必要な勉強時間は約3,000時間。
司法書士試験の筆記試験では11科目から出題されるため、勉強する範囲は膨大です。
ただし、全ての人が必ずしも3,000時間の勉強で合格を目指せるわけではありません。
人によっては、3,000時間以下でも合格できる人はいますし、反対に3,000時間以上費やしてようやく合格できる場合もあります。
3,000時間の勉強をして、2年で司法書士試験合格を目標とするなら1日の勉強時間はどれくらいでしょうか。
1年365日休みなく勉強するなら、1日当たりの勉強時間は約4時間。
社会人が仕事と並行しながら1日4時間の勉強時間を確保するのはかなり難しいでしょう。
受験勉強に専念できる人の場合は、1日6~8時間勉強して1年程で合格を目指せる可能性もあります。
しかし、働きながら勉強するなら、現実的なスケジュールを組み立てて何年かかけて司法書士の勉強を根気強く続けなければなりません。
司法書士試験の勉強はいつからスタートする?
司法書士試験の筆記試験は7月に行なわれるため、日程に合わせて逆算しスタート時期を決めます。
1年半の勉強期間で合格を目指すなら、受験年より1年前の1月から勉強を開始しましょう。
しかし、約3,000時間の勉強時間を確保できるギリギリのラインでスタートするのではなく、出来るだけ早く開始するようおすすめします。
効率よく司法書士の勉強を進める方法
出来るだけ短い期間で、効率よく司法書士試験合格を目指すのであればポイントを押さえた勉強方法が重要です。
- 自分が集中して学びやすい勉強スタイルを見つける
- 自分のペースでコツコツと続ける
- 試験科目ごとに時間配分する
- 五感をフル活用する
- 六法全書を引く
現在の法律知識や生活スタイルに合わせて、効率の良い勉強方法を選択しましょう。
また、やみくもに過去問を解いたり、情報を頭に詰め込む勉強ではなく、理解しながら暗記していくために自分のペースで着実に勉強を進めていきましょう。
司法書士試験の科目範囲は広いため、勉強時間をどの科目にどれくらい配分するかを決めておくのは大切です。
テキストを声に出して読んだり、動画や音声による解説教材を活用したりして、五感をフル活用しながら勉強しましょう。
司法書士にとって、六法全書はバイブルです。
定期的に六法全書を引く習慣をつけ、意味や論理を理解しながら暗記するようにしましょう。
法律の背景を知ることも、覚えやすくなるコツの一つです。
司法書士は独学で合格するのが極めて難しい
難易度の高い国家試験と言われている行政書士試験や社労士試験は、独学で合格している人もいますが、司法書士で独学に成功している人は極めて少数です。
つまり、司法書士は独学では合格できる可能性が0に近い、非常に難易度の高い試験。
法律の具体的なイメージをつかめない
市販の問題集では演習量に限界がある
記述問題の解法が身につかない
モチベーションが維持しにくい
司法書士が学ぶ法律のほとんどは、身近で使うものではないため視覚的に捉えることが非常に難しいといえます。
筆記試験の記述問題はどれほど演習したかによって実力が決まります。
市販の問題集で対応するには量に限界があるため、スクールやオンライン講座を活用してより多くの問題集に挑戦すると良いでしょう。
また、記述問題はアプローチの型を身につけなければどれも解けません。
基本的な解法を知るには、分からないことをいつでも聞ける環境が必要です。
3,000時間という膨大な勉強時間を一人で頑張るよりも、仲間や講師とともに合格を目指す方がモチベーションを維持しやすいでしょう。
【難易度ランキング】司法書士の難易度は何位?
国家資格の中でも最も難易度の高い「三大国家資格」は医師・弁護士・公認会計士であり、そこに司法書士は含まれていません。
三大国家資格は試験に合格しても、実務研修や確認試験などが行なわれるため実際に業務を行えるようになるまでにかなりの時間が必要です。
司法書士を含めた難易度の高い国家資格は、国の法律に基づいて社会的地位が保証されているため、社会の中で信頼性が高いのが魅力。
有資格者でなければ行えない独占業務もあります。
国家資格の難易度は合格率だけではなく、受験者のレベルや出題範囲、勉強時間などがかかわっていますが、司法書士はどれくらい難しいのでしょうか。
一般的によく知られている国家資格を、偏差値順に並べランキングを作成しました。
順位 | 資格名 | 偏差値 |
---|---|---|
1位 | 弁護士(司法試験) | 75 |
2位 | 医師 | 74 |
3位 | 公認会計士 | 74 |
4位 | 司法書士 | 72 |
5位 | 税理士 | 72 |
6位 | 弁理士 | 70 |
7位 | 不動産鑑定士 | 68 |
8位 | 総合無線通信士1級 | 66 |
9位 | 中小企業診断士 | 63 |
10位 | ITストラテジスト | 63 |
11位 | 社会保険労務士 | 62 |
裁判官・検察官・弁護士になる資格が与えられる司法試験は、国家資格の中でも一番難易度が高い資格です。
また、ランキング表を見ればわかるとおり、司法書士は三大国家資格である医師・弁護士・公認会計士の次に難易度が高く、合格への道のりは厳しいでしょう。
司法書士は受験資格の制限がないため、入り口は広いですが合格の門は狭められています。
司法書士の難易度を他資格と比較!【税理士・弁護士・宅建】
では、司法書士とよく比較される税理士・弁護士・宅建の試験内容や勉強時間、合格率を参考に難易度を比較してみましょう。
司法書士の難易度を税理士と比較
税の専門家として、国家資格を取得した税理士は税務関係においてプロフェッショナル。
司法書士は法律の専門家として、日常生活で必要になる法的な相談を受けたり、手続きの代行をしたりします。
司法書士試験はマークシート方式だけではなく記述式試験があるため、知識を応用して答えられるように勉強する必要があります。
また、基準点を下回らないように膨大な試験範囲をまんべんなく勉強しなければなりません。
その結果、必要な勉強時間は3,000時間で合格率はたったの3%です。
税理士の試験は正答率60%以上で合格できます。
必修科目と選択必修科目、さらに選択科目の試験が必要ですが、ある科目の合格基準点を合格しているなら半永久的に合格状態がキープされ試験が免除される制度があるのは魅力的です。
この免除制度は、税理士試験の難易度に大きく影響しており近年の合格率は約20%。
税理士の合格までに必要な勉強時間は約2,000~2,500時間といわれています。
ただし、司法書士試験と違い税理士試験の場合は受験資格が設けられているため、司法書士のように気軽に誰でも受験できるわけではありません。
司法書士 | 税理士 | |
---|---|---|
受験条件 | なし | あり 大学等で法律学や経済学を1科目以上履修 日商簿記検定1級合格 弁理士・行政書士・司法書士等の業務に従事した者 |
合格率 | 3% | 20% |
勉強時間 | 3,000時間 | 2,000時間 |
税理士も決して合格率が高い簡単な試験とは言えませんが、司法書士の方がより多くの法律を学ぶのに時間を必要としており、合格率も低い難しい試験であると分かります。
司法書士の難易度を弁護士と比較
司法書士試験の受験資格は特に限定されていませんが、合格率は約3%。
弁護士になるための司法試験は、受験資格を満たすために一定の条件が設けられています。
また、受験回数についても5年間で最大5回までしか受験できないように制限されているため、気軽な受験は不可能です。
その代わり、司法試験の合格率は30%と司法書士試験の約10倍。
試験内容は、司法書士試験が全部で11科目なのに対し、司法試験は8科目と少なめです。
しかし、司法書士試験は1日で終わりますが、司法試験は4日間の日程で行なわれるため体力面や精神面でも強さが必要といえるでしょう。
また、司法書士試験は実務シミュレーションを目的とした記述出題がありますが、司法試験では文章形式で回答を書かなければならないため、正確な知識に基づいた論理的な思考矢文章力が求められます。
合格率や試験科目の数のみを比べると、一見司法書士試験の方が難易度が高いかのように思えますが、弁護士になるための司法試験は試験内容がかなり難しいことは明らかです。
では、表にまとめて司法書士と弁護士の難易度を見直してみましょう。
司法書士 | 弁護士 | |
---|---|---|
受験条件 | なし | あり (5年最大5回まで) |
合格率 | 3% | 30% |
科目内容 | 11科目 | 8科目 |
記述式問題の内容 | 実務シミュレーション | 課題について文章で回答 |
弁護士になるための司法試験に比べて、司法書士は受験資格が限定されていないため年齢や性別、学歴を問わず挑戦できます。
司法書士の難易度を宅建と比較
宅建は不動産取引における専門的知識を持っていますが、司法書士は主に法務局で必要な手続きを代行する専門家です。
難易度について司法書士と宅建を比べると、圧倒的に司法書士が高いのは言うまでもありません。
司法書士の勉強時間は約3,000時間なのに対し、宅建は200~300時間です。
また、合格率は宅建が15~17%を行き来している中、司法書士試験は約3%をキープしています。
宅建から司法書士を目指す人は多く、試験範囲も被っている部分があります。
もちろん、司法書士は法律関係の国家資格では司法試験に並ぶ難易度の高さで、宅建よりも試験範囲はかなり広いです。
宅建の資格を持っていれば、司法書士試験の科目に含まれている民法や不動産登記法の知識を身に付けられるので司法書士へのステップアップがしやすいといえます。
では、司法書士と宅建の難易度を表にして比較してみましょう。
司法書士 | 宅建 | |
---|---|---|
受験条件 | なし | なし |
合格率 | 3% | 15~17% |
勉強時間 | 3,000時間 | 300時間 |
宅建も司法書士も受験資格は設けられていないため、学歴や年齢を問わず誰でも挑戦できます。
受験資格が設けられている資格と比べれば、挑戦するうえでの難易度はどちらも低いのです。
ですから、宅建と司法書士のダブルライセンスを取得して、不動産業務の効率化や開業を目指す人もいます。
司法書士の難易度が高いと言われる理由
書士の難易度がかなり高いと言われている理由には主に3つあります。
- 科目数が多く勉強範囲が広い
- 記述式・口述式問題がある
- 基準点以下であれば足切りされる
- 相対評価の試験
しかし、基準点以下であれば足切りされるため民事訴訟法や民事保全法、刑法などのマイナー科目も捨てるわけにはいかず、特徴を抑えた勉強をしなければなりません。
さらに、不動産登記法と商業登記法の試験では記述式問題があるため、ただテキスト内容を暗記するだけではなくしっかり理解していなければ答えられないのです。
加えて、合格基準は相対評価であるため合格基準点には達していても、受験者レベルが高いと上位に入れず落とされてしまう可能性もあります。
このように、司法書士試験は試験問題の形式や合格基準、試験範囲の広さなどから合格率1桁という難易度の高い試験と言えるのです。
しかし、難易度が高いからと言って100%合格できないわけではありません。
たしかに難しいからと言って受験をあきらめてしまう人もいますが、きちんと勉強スケジュールを作成し、効率よく勉強するなら合格は可能です。
社会的責任が大きく、やりがいのある司法書士を目指して、難易度に物怖じせず挑戦してみることをおすすめします。