独学でも合格できる可能性はあるのかな。
「日本版MBA」といわれ、ビジネス資格の中で人気の高い中小企業診断士。
国がコンサルタントとして認めてくれる唯一の国家資格であるため、社会的な評価が高いのも特徴です。
中小企業診断士の資格に興味を持っている方のために、試験難易度を解説します。
資格取得を目指す前に、独学で合格するためのコツや一般的な勉強時間についての知識を付けられるでしょう。
- 中小企業診断士の難易度は偏差値63
- 中小企業診断士は独学でも合格できる難易度
- 中小企業診断士の合格に必要な勉強時間は1,000時間
中小企業診断士の仕事内容と魅力を解説
中小企業診断士とは、国から唯一認められている経営コンサルタントです。
企業の経営状態をチェックし、「今後どうすれば会社の売上をアップできるのか」について提案や助言を行います。
「中小企業支援法」や「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則」という法令に基づいて、中小企業診断士という資格を取得します。
中小企業診断士と名乗るためには、国家試験に合格し、経済産業省へ登録しなければなりません。
世界的には「MBA」が経営コンサルタントの学位として有名ですが、中小企業診断士は「日本の「MBA」と呼ばれているほど学習内容が似ています。
日本人の平均年収に比べて、中小企業診断士の平均年収は500~800万円程度と高めです。
中小企業診断士として独立すれば、若くして年収1000万円を実現させることも可能です。
- 企業内診断士
- 独立診断士
一般企業の会社員や公務員として、社内で経営コンサルタントとして活動する人もいます。
また、組織には属さずにコンサルタント契約を締結して業務を行っている人もいるようです。
では、中小企業診断士になるためには、どのような難関を潜り抜けなければならないのでしょうか。
これから、試験の難易度や勉強時間などについて紹介していきます。
中小企業診断士の難易度を大学偏差値に変換してみよう
中小企業診断士の試験は一次試験と二次試験を合わせた合格率がたった4%。
では、一次試験と二次試験の合格率を具体的な数字で見てみましょう。
<一次試験の年度別受験者数と合格率>
年度 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2020年度 | 11,785人 | 42.5% |
2019年度 | 14,691人 | 30.2% |
2018年度 | 13,773人 | 23.5% |
2017年度 | 14,343人 | 21.7% |
2016年度 | 13,605人 | 17.7% |
2014年度 | 13,186人 | 26.0% |
<二次試験の年度別受験者数と合格率>
年度 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2020年度 | 6,388人 | 18.4% |
2019年度 | 5,954人 | 18.3% |
2018年度 | 4,978人 | 18.8% |
2017年度 | 4,289人 | 19.4% |
2016年度 | 4,394人 | 19.2% |
2015年度 | 4,941人 | 19.1% |
2014年度 | 4,885人 | 24.3% |
中小企業診断士の合格率は年度によって若干ばらつきがあります。
年代別では、一次試験の合格率が高いのは30~40代であるのに対し、二次試験は20代の合格率が高いようです。
二次試験の内容は経験値に左右されず、情報をもとに正しい回答が導き出せる能力が試されているのが理由として考えられます。
中小企業診断士の偏差値は63
大学受験などでよくきく偏差値。
中小企業診断士の難易度を偏差値で表すと「63」になります。
ちなみに、税理士や弁護士などの資格難易度を偏差値で表すと70以上と言われています。
ですから、中小企業診断士は難関資格に分類されるものの、取得しやすい資格です。
つまり、簡単に取得できる資格ではありませんが、秀才でなければ合格できないという訳でもありません。
正しい方法で努力すれば他の勉強や仕事と並行しながら合格を目指せる難易度です。
中小企業診断士の試験合格率は低いと言われる理由
合格率4%といわれる中小企業診断士は、なぜ取得しがたいといわれているのでしょうか。
試験の合格率が低いといわれる主な理由は2つあります。
- 1年に1度しか試験が行われない
- 二次試験は合格率よりも受験者のレベルが高い
簿記などの検定試験のように年に何度も受験チャンスがあるわけではないので、1年間という長い時間を投資して勉強します。
気軽に受験し直せる試験ではないため、ひとりひとりが持つプレッシャーが大きく、必然的に受験者レベルが高くなるのです。
また、二次試験は一次試験と違い、相対評価されるためレベルの高い受験生同士で戦わなければなりません。
合格地点に達すればよいわけではないので、合格率うんぬんよりも同じ受験者に蹴落とされて合格できなかったというケースもあるようです。
中小企業診断士の難易度から必要な勉強時間は?
難易度の高い中小企業診断士の資格を取得するには、どれほどの勉強時間が必要なのでしょうか。
一般的に一次試験と二次試験の勉強時間は合わせて約1,000時間といわれています。
ストレート合格できる人の勉強時間は一次試験が約800時間、二次試験が約200時間という8:2の割合です。
では、具体的な科目ごとに学習内容の難易度や勉強時間を表にまとめてみましょう。
科目 | 難易度 | 勉強時間(学習時間) |
---|---|---|
経済学・経済政策 | 難 | 200時間 |
財務・会計 | 難 | 200時間 |
企業経営理論 | 普 | 140時間 |
運営管理 | 易 | 140時間 |
経営法務 | 普 | 120時間 |
経営情報システム | 普 | 120時間 |
中小企業経営・政策 | 易 | 80時間 |
合計 | 1,000時間 |
中小企業診断士の学習内容の中でも、特に経済学や経済政策についての学習、財務・会計に関する学習の難易度が高く、勉強時間の大半を占めています。
また、財務・会計、企業経営理論、運営管理に関する学習は二次試験にも関連しているので入念な準備が必要です。
理解に時間がかかる中小企業診断士の勉強内容
経済学・経済世作・財務・会計は、何かを覚えればよいという学習ではなく、論理的な思考を身に付け、理解しなければなりません。
理解力を重視する学習ですから、書いてあることを覚えるだけで、理屈が分かっていなければ試験問題に対応できません。
ですから、中小企業診断士の学習内容の中でもっとも勉強時間を多くかけなければならない科目といえるでしょう。
暗記する中小企業診断士の勉強内容
理解に時間をかける必要のある科目に対して、経営法務・経営情報システム・中小企業経営・政策の科目は暗記が重視されます。
学習期間の中で、できるだけ最後に回すように計画すれば、試験当日まで記憶に残せます。
短期集中して暗記できる勉強内容ですから、勉強時間は少なくて済むでしょう。
だからといって簡単に習得できる科目というわけではないので十分余裕を持って取り組んでください。
【難関資格を比較】中小企業診断士の難易度ランキング
資格取得の情報サイト「TAC」で公開されている資格難易度を参考に、中小企業診断士の難易度ランキングを作成してみました。
資格難易度ランキング | 資格 | 勉強時間 |
---|---|---|
1位 | 司法試験 | 8,000時間 |
2位 | 司法書士 | 3,000時間 |
3位 | 弁理士 | 3,000時間 |
4位 | 中小企業診断士> | 1,000時間 |
5位 | 社労士 | 800~1,000時間 |
6位 | 行政書士 | 600時間 |
7位 | 宅建士 | 400時間 |
8,000時間の勉強時間を必要とする司法試験に比べると、中小企業診断士は難易度が高いとは言っても努力すれば合格可能性がある試験といえます。
上の表で表したランキングや勉強時間はあくまで目安ですから、参考程度に見ていただけると嬉しいです。
【中小企業診断士 VS 社労士】難易度が高いのはどちら?
先ほどの資格難易度ランキングでは、中小企業診断士と社労士が4位・5位で並んでいました。
必要な時間はどちらも1,000時間程度で似ていますが、難易度が高いのはどちらなのでしょうか。
はっきり言って、中小企業診断士と社労士の資格難易度はほぼ同レベルです。
しかし、試験内容は全く異なり、社労士の場合は暗記学習のみで受験できるので人によって向き不向きがあるでしょう。
- 社労士は労働系の法律を問う試験
- 中小企業診断士は経営コンサルタントとして論理的思考力も必要
つまり、暗記学習が得意なら社労士の方が難易度は低く、筋道立てて解決策を導き出すロジカルシンキングが得意なら中小企業診断士の方が難易度は低くなります。
難易度の高い中小企業診断士は独学で目指せるのか
マークシート7科目の一次試験と筆記・口述試験を含む二次試験の受験が必要な中小企業診断士。
合格するための勉強方法として通学・通信・独学など様々な方法があります。
では、独学でも中小企業診断士を目指せるのでしょうか。
もちろん、可能です。
中小企業診断士は難易度が高いものの、秀才でなければ取得できないほど難しいわけではなく正しい方法で努力すれば誰もが合格可能です。
では、中小企業診断士を独学で狙うメリット・デメリットや勉強のコツについて解説しましょう。
中小企業診断士を独学で狙うメリット・デメリット
- 勉強にコストがかからない
- 自分のペース・タイミングで勉強できる
中小企業診断士は自分で工夫した学習方法で資格取得を目指せます。
通学や通信での学習に比べてお金がかからないのが一番のメリット。
また、周りの受講生や講師のペースに影響されることなく、自分らしく勉強できます。
- 学習方法が誤っている可能性がある
- 分からないことを放置しやすい
- 勉強時間を確保できない
分からない問題をそのまま放置したり、色々と理由をつけて勉強時間を他の用事に使ってしまったりする可能性もあります。
中小企業診断士を独学で合格するためには、独学ゆえのデメリットを解決する方法を考える必要があるでしょう。
中小企業診断士の独学を成功させるコツ
独学で中小企業診断士になる道のりは山あり谷ありです。
合格に必要な勉強時間は約1,000時間といわれていますが、試験項目について正しく理解し、応用する力を付ける必要があります。
独学するならテキストと過去問が必要です。
中小企業診断士のテキストは初心者向けのものから上級者向けまで、たくさんの種類があるのでまずは優しい内容から始めて、徐々に難易度を揚げていきましょう。
- テキストを学習する
- 過去問を解いて、テキストの内容を理解できているかチェックする
- 間違えた箇所の理由が分かるまで学習する
中小企業診断協会のホームページに載せられている過去問だけでなく、市販の過去問も使いましょう。
解説内容が充実しているタイプがおすすめです。
- 自分のやりやすい勉強方法を見つける
- モチベーションを保つ
- ルールを決める
勉強会に参加したり、一緒に中小企業診断士を目指す仲間を見つけたりするのはおすすめです。
勉強の習慣が身につくように繰り返しましょう。
勉強時間やノルマなど、自分なりのルールを決めることも大切です。
中小企業診断士の独学が向いているのはこんな人!
中小企業診断士は独学でも合格できる資格です。
しかし、一般的な学習時間が1,000時間と言われているのに対し、独学では5年以上勉強に費やす人もいます。
独学が自分に合った学習方法ではない場合、学習効率が低下し、プレッシャーだけが大きくのしかかってしまいます。
独学で中小企業診断士を目指す前に、自分が独学に向いているかどうかをチェックしましょう。
- 一人で勉強するのが好き
- 学習時間の確保が自分でできる
- スケジューリング能力に優れている
- 強い意志を持っている
- 情報収集能力に長けている
また、長期的なスケジューリングでも、強い意志を持って予定通りに勉強をすすめられるなら独学が向いていると言えるでしょう。
自分で勉強会をリサーチしたり、仲間を探す行動力も重要です。独学では何よりモチベーションが大切だといえます。
反対に、勉強方法のリサーチが出来ず、誰かに言われないと勉強を始められないタイプは独学に不向きです。
時間があると遊んでしまったり、やる気を持続させることが難しいタイプも厳しいでしょう。
自分は独学に向いていないと分かったら、無理に独学を進めるのではなく第三者のサポートを受けながら効率よく勉強していくようおすすめします。
中小企業診断士の難易度が下がると言われる理由
合格率4%の中小企業診断士は難易度が高めですが、今後は合格しやすくなっていくといえます。
その理由は次の2つです。
- 令和2年度の一次試験合格率が上昇している
- 政府は中小企業診断士の数を増やしたがっている
また、政府の意図もあって、今後の中小企業診断士の試験難易度は下がっていくと予想できます。
さらに、間違った勉強方法をとらなければ努力次第で合格できるのが中小企業診断士です。
さまざまな勉強方法が考案され、通信教育や通学できる教室が増えることによって資格取得難易度が下がっていくことは容易に想像できます。
令和2年度の中小企業診断士試験の合格率が上昇している
中小企業診断士の合格率は低いと言われていますが、実際には徐々に上昇しています。
具体的な数字を見てみましょう。
1次試験合格率 | 2次試験合格率 | |
---|---|---|
平成28年度 | 17.7% | 19.2% |
平成29年度 | 21.7% | 19.4% |
平成30年度 | 23.5% | 18.8% |
令和元年度 | 30.2% | 18.3% |
令和2年度 | 42.5% | 18.5% |
二次試験の合格率にはそれほど差がないものの、一次試験に関しては明らかに合格率が上がっています。
令和2年度の一次試験合格率は平成28年度の2倍以上です。
一次試験の合格率が上昇することによって、中小企業診断士の四県全体での合格率もアップしている事は明らかです。
今後も、中小企業診断士の試験合格率が上昇していくことが予想されています。
大幅な上昇はないにしても、少なくとも40%以上の合格率をキープしていくでしょう。
中小企業診断士の数を増やしたい政府の意図
中小企業診断士の合格率が上昇している背景に、政府の意図があります。
地方では、中小企業診断士の数が不足しているため、企業の売り上げアップのための公的支援が滞っているからです。
現在、全国で約27,000人の中小企業診断士が経済労働省に登録しています。
しかし、ほとんどの中小企業診断士は、大都市圏の大学を卒業し企業に就職しているため、資格取得後も企業での勤務を続けています。
その結果、地方の中小企業診断士は増えず、サポートを必要とする声が高まっているのです。
政府は2005年以来、中小企業診断士の質と信頼性を確保・向上させながら総数の拡大を試みています。
最近では、中小企業診断士が公的支援の現場での不足が著しいため、質の向上よりも寮を増やすことを重点的に意図的に試験の難易度を下げているようです。
ただし、二次試験では登録養成課程を増やすことによって、良質な中小企業診断士を増加させるために奮闘しています。
中小企業診断士は役に立たないって本当?資格の活かし方
中小企業診断士は独立だけでなく、就職や転職に役立つ資格です。
経営コンサルタントとして、国が唯一認めている国家資格だからこそ大企業での評価も高く、アピールできるポイントになります。
既に企業に就職している方も、難関の国家資格である中小企業診断士の資格を取得することによって、昇進や昇給につながるでしょう。
中小企業診断士の主場業務は経営アドバイスですが、行政や金融機関との間に立つことも多いため、専門的な知識が身につきます。
「日本のMBA」といわれ中小企業診断士は、経営学を志す大学生にも注目されています。
- 独立して経営コンサルタントの事務所を開く
- 公的なコンサルタント業務を受注する
- 講演活動・執筆活動を行う
「中小企業診断士」と名乗りさえしなければ、経営アドバイスをすることは誰にでも可能です。
しかし、国家資格を取得している中小企業診断士は、企業にとって大きな安心感となります。
自分の経営コンサルタントとしての能力を客観的に証明する中小企業診断士の資格は、今後活躍の幅を広げていくことでしょう。