新型コロナウイルス感染症の影響を受け会場開催の決算説明会の多くが中止・延期となる中、オンライン決算説明会のニーズが高まっています。
野村インベスター・リレーションズ株式会社が機関投資家・アナリストに行った調査では、2020年にIR活動に変化があったとの回答は19.4%に及び、2019年の5.5%を大きく上回りました。変化の理由として多く挙げられているのが、Web説明会やリモート化への対応です。
現在、IRイベントのオンライン開催数は増えている一方で、未だオンライン化に踏み切れず、対応を迫られている企業もあります。
本記事ではオンライン決算説明会の概要とメリットのほか、配信方法や配信を行う際の注意点も紹介します。オンライン決算説明会の開催を検討している方や、具体的な実施方法を知りたい方は参考にしてください。
オンライン決算説明会とは
オンライン決算説明会とは、Web上で開催する決算説明会のことです。決算説明会は自社の業績や、将来の事業計画を分かりやすく説明するための会合で、参加者のほとんどは機関投資家やアナリスト、報道関係者です。
これまで企業の決算説明会は、自社または会場を借りて開催する形式が一般的でしたが、オンライン決算説明会では主催者がWebを通じて決算説明会の動画を配信し、参加者はPCやスマートフォンでそれを視聴します。
配信の方法は、決算発表や業績報告だけの一方通行配信や、リアルタイムで質疑応答ができるライブ配信、あらかじめ録画しておいた動画を配信するオンデマンド配信があります。
オンライン説明会、「オンデマンド型」と「ライブ配信型」
オンライン決算説明会の開催方法には、大きく分けて「オンデマンド型」と「ライブ配信型」の二つがあり、企業は内容や開催頻度などによって配信スタイルを使い分けます。
運営会社によって、提供されるサービスの内容は異なりますが、一般的なサービスタイプと内容は以下の通りです。
サービスタイプ | サービス内容 | |||
機関投資家への案内 | 映像撮影 | 映像編集 | オンデマンド
配信 |
|
オンデマンド型 | 〇 | 〇 | 〇 |
※ (別途オプション) |
ライブ配信型① (オンデマンド配信なし) |
〇 | 〇 | - |
※ (別途オプション) |
ライブ配信型② (オンデマンド配信あり) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
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オンデマンド型
オンデマンド型は事前に撮影した説明会動画を配信する方式です。映像の編集や、ナレーション・テロップの挿入などコンテンツの作り込みができ、また、撮り直し・修正も可能なので誤った情報を伝える恐れがありません。
録画済みの動画を使うため、説明会を複数開催する場合でもその都度撮影をし直したり会場の設営をしたりする手間が省けます。動画はアーカイブも可能です。ライブ配信型と違い、配信中にトラブルが起きる心配がありません。
デメリットは、説明会の参加者とのコミュニケーションが一方通行になる点です。オンデマンド型は一方的な配信になってしまうため、リアルタイムで質疑応答できず、また会場の雰囲気や反応も把握できません。そのため、オンデマンド型で説明会を行う際は、動画配信だけでなく質問を受け付ける窓口を設けることで説明会の手ごたえを感じられ、参加者の納得感も増す傾向があります。
ライブ配信型
ライブ配信型は、説明会動画の配信と視聴がリアルタイムで行われるものです。チャットや音声ツールを使ってその場で質疑応答ができ、オンデマンド型に比べて企業と参加者とのコミュニケーションが活発になる利点があります。
配信日には前もって説明会会場に撮影・録音機材を搬入し、開催時刻となったら動画撮影とともにライブ配信を始めます。ライブ配信型には「ライブ配信のみ」と「ライブ配信+映像編集、オンデマンド」の二つのタイプがあります。配信と視聴が同時に行われる点はどちらも変わりませんが、後者の場合は配信後に編集を行い、オンデマンド配信用の動画として保管が可能です。詳細については次項で説明します。
ライブ配信型は撮影と視聴が同時に行われるため、進行ミスや機材トラブルが起きた際は即時対応が求められます。初めてオンライン説明会を開催するときは、事前準備やリハーサルを入念に行い、起こりうるトラブルへの対処法をよく検討しておく必要があります。
ライブ配信型①
ライブ配信のみを行うサービスです。映像の編集・加工ができず、オンデマンド配信もオプションサービスとなっているのが一般的です。
参加人数の制限を行っていたり、複数の開催日時を設けていたりする場合はその都度、開催準備が必要となります。
映像編集やオンデマンド配信が不要であれば、最もシンプルなこちらのタイプがおすすめです。
ライブ配信型②
ライブ配信に加え、動画の編集とオンデマンド配信ができるサービスです。当日に参加できなかった視聴希望者にも、ライブ配信の臨場感を残しつつ、見やすく編集した動画をオンデマンド配信で提供できます。また、動画のアーカイブを数ヶ月保存できるプランが用意されているサービスもあります。
オンデマンド型とライブ配信型の両方の利点を兼ね備えているタイプです。
オンライン説明会を導入するメリット
オンライン決算説明会の開催は、企業と参加者の両方にさまざまなメリットがあります。
企業側のメリット
オンライン決算説明会を主催する企業側のメリットには以下のものが挙げられます。
- 感染防止対策の負担を軽減できる
- 決算説明会の実施にかかるコストが削減できる
- 幅広い地域や対象者に向けて発信できる
オンライン決算説明会の普及の要因として最も大きいのは、感染症対策です。オンライン開催であれば、会場の感染防止対策を行う必要がありません。
また、PCなどの機材と会場さえ用意できればオンライン説明会を開催できます。会場は会社の会議室でも構いませんし、説明資料はデータ形式にして事前に配布しておくことが可能です。会場設営や資料の印刷にかかる費用と時間に加え、運営スタッフの人員確保が不要になるため、費用・時間・人的コストを抑えた説明会が実現します。
また、多忙のために来場できない人や、海外など遠方にいる人でも参加しやすいため、広く参加者を募ることができます。オンライン視聴という気軽さから、参加者が獲得しやすいことも利点です。
参加者側のメリット
オンライン決算説明会は、参加者にも以下に挙げるようなメリットがあります。
- 感染症にかかるリスクが減らせる
- より多くの決算説明会に参加できる
- オンデマンド配信なら好きなタイミングで視聴できる
参加者同士が直接対面する機会がないため、接触による感染の心配がありません。また、会場間の移動に関する感染リスクも生じません。
PCやスマートフォンがあれば自宅やオフィスでも視聴できるので、開催日の重複した複数の説明会や遠隔地で実施される説明会にも参加が可能です。移動にかかる時間が削減できるため、より効率的に多くの説明会に参加できます。
アーカイブの残るオンデマンド配信なら、空いた時間に視聴して気になる箇所を何度でも巻き戻して聞き直せます。
オンライン決算説明会の注意点
オンライン決算説明会の実施においては、参加者の快適さと満足度が重視されるポイントです。具体的には、どんなことに注意したらいいのでしょうか。
安定したネットワーク環境が必要
配信をする際に、重要なのはインターネット環境の整備です。
有線など、動画配信に耐えうる安定したインターネット回線を利用します。通信の不安定なWi-Fiや、通信速度の遅いインターネット回線では、音声や映像が切れ切れになってしまい大事な情報が十分に伝わらない恐れがあるためです。そのような視聴環境は参加者に不安とストレスを生み、決算説明会そのものに対する悪印象にも繋がりかねません。
動画配信に資料のデータを添付するときは、データ量を軽くする工夫も重要です。動画と資料のダウンロードにより、通信が途切れてしまう可能性があります。ネットワーク環境やシステムによって画質や音質が著しく下がることもあるので、必ず事前に配信テストを行い、適切に配信が行えることを確認しておきましょう。
チャットでの質疑応答にも対応する
参加者の中には、話を聞いたあと「その場で質問したい」と思う人が多くいます。質疑応答のセッションを持つことは、説明会の雰囲気を活発にするのと同時に参加者の理解度や満足度を高める効果もあります。
質問は音声とチャットのどちらで受け付けても構いませんが、両方を考慮しつつ質問に応えるのは難易度が高いかもしれません。音声には臨場感があり、チャットは気軽に質問できるメリットがあります。質問の受け付け方は、音声主体またはチャット主体のどちらかに寄せておくと進行がスムーズです。
オンライン説明会はどうしても主催者である企業側の一方的な配信になりやすい傾向があります。説明会を双方向のコミュニケーションの場として活かすためには、事前にアンケートをとっておき、寄せられた疑問や意見に沿った説明会にする工夫も必要です。
オンライン決算説明会に必要なツールや機材
オンライン決算説明会を実施するためにはどんなツールや機材が必要なのか、解説していきます。
PC・スマートフォン
手持ちのPCやスマートフォンがあれば、特別な機材を新たに購入しなくても、オンライン説明会を実施できます。PC内蔵のカメラとマイクさえあれば撮影と録音が可能で、スマートフォンをカメラやマイク代わりとして使うこともできます。
Web会議などですでに使っているカメラやマイクを、そのままオンライン説明会で利用した企業の事例もありました。もし、配信の質をより高めたい場合は外部カメラや専用マイクの設置がおすすめです。プロ仕様の製品でも数万円程度で購入できます。
Zoomなどのビデオ会議ツール
オンライン決算説明会では、必要な機能を備えたもののうち、最も使い慣れたツールを利用します。
参加者リスト、リマインドメール送信など参加者管理機能のほか、レコーディング、チャット、Q&A、アンケート機能など、自社のオンライン決算説明会に必要な機能が揃っていなければなりません。
ウェビナーを開催した経験が少なく、機能の把握や使い勝手に不安があるのなら、普段から使っているビデオ会議ツールのウェビナー機能の利用をおすすめします。いつも触れているツールの方が操作時の抵抗感は少ないはずです。
例えば、社内会議に以前よりZOOMを採用していたライフネット生命保険株式会社は、アドオンプランを購入し、通常の利用料に月々数千円のウェビナー機能の料金を上乗せして支払っています。
そのほか、オンライン説明会に使用できるツールとしては「Microsoft Teams」、「Cisco Webex」、「Google Meet」があります。どれも月額利用料は数百円〜数千円程度と、低コストで導入できます。
オンライン決算説明会の主な流れ
オンライン決算説明会の流れは企業によって異なります。ここでは一般的な例を紹介します。
配信方法を決める
まずはオンライン決算説明会の配信方法を決めます。ライブ配信なのかオンデマンド配信なのかによって、用意する機材や最適な回線環境は異なります。
集客・案内
配信方法が決定したら、機関投資家やアナリスト、報道関係者など参加者向けにオンライン決算説明会の日程や参加方法を通知します。参加に必要な視聴URLも、このときにメールなどで共有しておきます。
オンラインでの申し込みでは、参加案内や視聴URLを紛失しやすいため、開催日の一週間前のリマインドメール送付もあれば理想的です。
リハーサル
開催日が近づいたら、資料を使って本番と同様の形式でリハーサルを行ってください。テスト配信をして、インターネット回線やマイク・カメラなど機材の動作確認をしておきましょう。
開催当日
説明会の当日は、撮影またはライブ配信を行うため、機材の運搬と会場設営を行います。当日は決算報告、質疑応答の受付だけでなく、万が一のトラブルに対応する余剰人員も必要です。
オンライン決算説明会で株主との関係値を高めよう
決算説明会は参加者と企業の対話の場です。オンライン決算説明会の開催方法は、企業が自社の決算状況をどう伝えたいか、参加者とどう対話したいかで決まります。
配信を成功させるためには、発表内容の準備のほか、配信機材の準備やトラブルへの迅速な対応などノウハウや経験が求められます。担当者がオンライン配信に不慣れであったり、スキル習得に時間がかかったりする場合は、業務をアウトソースすることも可能です。
オンライン決算説明会の運営サポートを行う弊社なら、ライブ配信・オンデマンド配信のどちらにも対応しており、動画の撮影・編集・配信までアシスト可能です。そのほか、案内の送付や集客コールなどの事前準備から当日の運営、アンケートの集計や参加者の登録といった実施後の管理まで、包括的なサポートを提供しています。
オンライン決算説明会を開催するなら、こうした配信サポートをうまく活用してみることをおすすめします。