決算説明会はアピールと質疑応答の場|出席者・内容・時期について

株主総会・決算説明会

企業のトップなどが決算の説明をする場が「決算説明会」です。企業はIRの1つとして決済資料を公開していますが、なぜ改めて説明会が必要なのでしょうか?

ここでは決算説明会とは何か、説明会の流れや使う資料について説明します。多くの方が疑問を持つ株式総会との違いについても紹介するので、参考にしてください。

with コロナ時代にも支持される決算説明会の在り方とは

決算説明会は企業が言葉を使ってアピールする場

決算説明会とは、企業の業績や計画、戦略などについての説明会です。主に上場企業が年に2〜4回行います。説明会の対象者は機関投資家やアナリスト、メディア関係者であり、誰でも参加できるわけではありません。決算説明会で使われる決算資料はすでに発表済みのため、説明会でのメインは参加者との質疑応答です。

つまり、決算説明会は企業側の人間が言葉を使って参加者へ自社のアピールをする機会と考えられます。

決算説明会はすべての企業が行うわけではありません。特に説明会が必要だと考えられるのは、以下のようなケースです。

  • 経営にとってネガティブな要素がある場合
  • 下方修正を行った場合

これらに当てはまる企業は、発表された決算資料の数字だけでは対策や改善提案を説明しきれず、ネガティブな要素ばかりが目立って株価に影響を与えることがあります。企業の責任者が説明会に参加した投資家やアナリスト、メディア関係者と直接コミュニケーションをとることで、今後の業績の改善計画や株主への還元策を伝えることができます。

説明会は特にネガティブな情報、内容であるほど、責任者が説明を果たすことが重要です。企業側は決算説明会によって投資家の不安を払拭し、明確な将来像を指し示さなければなりません。

決算説明会と株式総会の違い4つ

決算説明会とよく混同されてしまうのが、株主総会です。しかし両者はまったくの別物です。ここで決算説明会と株主総会の違いについて順番に説明します。

  • 参加対象者
  • 開催時期
  • 開催目的
  • 開催場所

参加対象者

1つ目の違いは、参加対象者です。決算説明会に参加するのは機関投資家とアナリスト、そしてマスコミ関係者などです。

それに対して株主総会は、企業の株主が参加します。厳密には株主総会招集通知書に同封されている「議決権行使書」を持っている人のみです。

【決算説明会参加対象者】
企業側からの参加者は、企業のトップなど重要な立場にいる責任者が登壇することが一般的です。社長(最高経営責任者)、財務担当役員、事業担当役員、財務部長、IR部長などが参加します。

聞き手側の参加者は、投資家やマスコミが中心です。機関投資家(信託銀行やヘッジファンド他)、証券アナリスト、新聞社や銀行のRM担当者などで、現在その企業に投資しているかどうかは関係ありません。

【株主総会】
株主総会の参加者は株主のうち、株主総会招集通知書に同封されている「議決権行使書」を持っている人です。議決権行使書が発行されるにはいくつかの条件があるため、株主であれば誰にでも発行されるわけではありません。

開催時期

決算説明会と株主総会では、開催時期にも違いがあります。

決算説明会は四半期ごと、もしくは本決算後と中間決算後に開催されるのに対し、株式総会は毎事業年度の終了後です(定時株主総会)。

開催目的

決算説明会の目的は、言葉による業績や計画のアピールと質疑応答で企業に良いイメージを持ってもらうことにあります。参加者は対象となる企業や競合に対する情報量が多く、さまざまな立場の人が企業を評価するために集まります。

株式総会は、企業の重要事項を決める場です。企業の役員やこれから進む方向性などを決定する場であるため、重要さは株主総会の方が上。ただし、参加者に対する情報量という面では決算説明会の方が上です。

開催場所

開催場所も、決算説明会と株主総会では違います。決算説明会は一般には公開されていないことが多く、企業側が以前に名刺を交換した人にメッセージを送る方法が一般的です。IR代行会社から送られることもあるでしょう。

開催場所を知るには直接企業に問い合わせたり、知り合いに聞いたりするなどの方法があります。本社やホテル、セミナー会場、アナリスト協会の会議室などが一般的です。

一方、株主総会の場合は、誰でも開催日やその場所を知ることができます。場所に関しても特に決まりはありません。しかし過去に開催したいずれの場所からも著しく離れた場所である場合には、その場所を使う理由の記載が法律で定められています。

場所は、本社や社長の自宅、ホテルなどどこでも可能です。

決算説明会の流れ

決算説明会の実際の流れは、以下のようになっています。

  • 企業側参加者の紹介
  • 決算内容説明
  • トピック紹介
  • 質疑応答

参加者は受付で名刺を提出。参加者は記録され、次回からは開催案内が届くようになります。

説明会が始まると、司会が企業側参加者を読み上げて本人が会釈などで挨拶、続いて内容説明のスタートです。説明資料に沿って、社長などが説明します。重要な補足事項や広めたい取り組みなどがあれば、事業担当者がトピック紹介として説明します。

最後は質疑応答です。参加者の中で、主に証券アナリストから質問されます。

全体として1時間から1時間半程度で終了です。

メインは質疑応答

決算説明会のメインは、最後に行われる質疑応答です。
決算説明自体は無難なものなので、質問によって業績の実態や状況、背景などを掘り下げなくてはなりません。

特徴は、鋭い質問が多いこと。参加者の代弁者として質問するのが証券アナリストやジャーナリストの仕事です。企業側は、特に株価への影響が大きい証券アナリストを質問者として選ぶケースが多くなっています。

以下のような質問が目立ちます。

  • 業績が悪化した理由は?回復可能なのかどうか。
  • 他社を買収することを考えているか?
  • (具体的な例を出して)この変化に対応できるのか?

企業側が一番話を聞いてほしいのは投資家です。証券アナリストは投資家との距離が近く、日々変動する株価に厳しい目を向けています。顧客である投資家を代弁し、アナリストが投資家が抱く疑問を投げかけるのです。

決算説明会で使う決算資料は自由度が高い

決算説明会で使われる資料を「決算資料」と呼びます。決算資料は決算内容や企業の状態を示す資料で、決算説明会で使われるものはプレゼンテーション資料の1つです。

書式は決まっておらず、内容や分量にも決まりはありません。自由度が高く、グラフや図形を使って伝えたい内容をわかりやすく載せます。

一般的に書かれる内容は、経営環境、事業活動の結果や今後の事業方針などです。

企業側の決算資料の活用方法

企業側は説明資料をどう活用しているでしょうか。

決算説明会の目的は、株主や投資家、債権者などから評価を得てよい関係を維持・向上させることです。つまり分かりやすく現状を伝え、業績が悪かった場合でも原因を分析して業績回復を目指せる具体案などを示すことが大切です。自社のファンを増やし、明るい将来像を持ってもらうためのものだと考えてください。

説明会参加側の決算資料の活用方法

それでは決算説明会に参加する、聞き手側の資料活用方法は何があるでしょうか。

説明資料はわかりやすいので情報が一目瞭然になるというメリットがあります。そのため、投資家は興味がある企業に対し、決算短信と決算説明資料に目を通して直近の業績、事業活動の結果、計画に対する進捗を把握できます。大まかな企業活動はこの2つの資料で説明するのが好ましいでしょう。

決算説明会で投資家が不安を持つ要因を払拭できれば、投資対象としての魅力が上がります。就職活動中の学生にとっても利用価値が高い企業を研究するための資料になります。決算資料は企業サイトに載せられるうえ、最近は決算説明会の動画を載せるところも増えました。採用面においても、決算説明資料、決算説明会は有効なコンテンツとなります。

アナリストや投資家の注目を集めるソフトバンクグループの決算説明会

決算説明会を巧みに活用している代表的な企業が、ソフトバンクグループです。

ソフトバンクグループは5兆円近い最高益を達成した前年度から一転し、2022年3月期に6兆2,000億円という過去最大の大赤字を出しました。これは、アメリカ金利の上昇などによるテック株の下落で、保有株の評価損を計上した結果です。

しかし、孫正義会長兼社長はソフトバンクグループが重視する時価純資産額が18.5兆円あることを強調。まだ十分に資産はあるとの認識を示しました。さらに、SVFの時価純資産は6兆円から3兆円に下がったものの、投資した元本に対しては3兆円の利益が出ていると説明しました。減収だけについて述べるのではなく、時価純資産額や収益値についても触れ、投資家に安心感を与えたのです。

また、当面は守りを重視した戦略をとることを強調。説明会でネガティブな業績をカバーする論拠を述べました。決して好決算とは言えない内容でしたが、ソフトバンクグループの株価が急落することはありませんでした。決算説明会の内容が一役買っていると言えるでしょう。

参考:2022年3月期決算説明会|ソフトバンクグループ株式会社

決算説明会はオンラインでも開催可能

ここ数年ではオンラインで決算説明会を開催できるようになっています。オンライン決算説明会ではWebで決算説明会の動画を配信、参加者はそれをパソコンやスマートフォンなどで視聴します。報告をするだけのものだけでなく、リアルタイムで質問ができる方式や録画しておいたものを配信するオンデマンド方式が選択可能です。

以下の企業などが実際にオンラインで決算説明会をしています。

  • 株式会社東芝
  • 株式会社両毛システムズ

インターネットで検索すれば、誰でも決算説明会が視聴可能です。企業側にとっては、感染予防対策になることやコスト削減ができること、より幅広い対象者・地域への発信が可能なことなどがメリットです。

参加者にとっては、移動する手間や時間が省けるため多くの企業の決算説明会に参加できること、録画配信なら自分の都合に合わせて視聴できます。

株式会社ウィルズでは、近年需要の高まりを見せるオンライン上で決算説明会を開催するためのプラットフォーム及び運営サービス『オンライン決算説明会』を提供しています。

リアルタイムの双方向ライブ配信方式・録画画像を配信するオンデマンド方式のどちらにも対応。関連サービスIR-naviと連携すれば、グローバルで 100,000名 を超える機関投資家に対してプッシュ型で情報配信も可能です。

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決算説明会は人間同士のコミュニケーションの場でもある

企業が行う決算説明会は、単に決算を説明するだけの場ではありません。関係者同士のコミュニケーションの場として、企業側・参加者側の双方にメリットがあります。

決算説明会で企業側が特に注意したいのは、アナリストからの質問に誰がどのように答えるかです。業績に対するネガティブな質問が多く飛ぶこともありますが、それを好転させるチャンスととらえることが重要です。

企業の将来像や計画を具体的に語ることで、投資家の安心感へとつなげることができます。

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