昨今サステナビリティ経営が話題となっています。しかし、そもそもサステナビリティとは何か?自社で実践するのは難しいのではと思っている方も多いでしょう。
本記事ではサステナビリティ経営とは何か、サステナビリティ経営を行っている企業の事例や実践の方法を紹介します。
「サステナビリティ経営について知りたい」「自社でもサステナビリティ経営を実践してみたい」と考えているならぜひチェックしてみてください。
サステナビリティ経営とは
サステナビリティ経営とは、さまざまな環境・社会・経済問題への配慮やその課題を解決することで、事業の持続可能性(サステナビリティ)を図る経営を指します。
社会貢献活動を行う企業は以前からありましたが、それは経営や事業とは別の活動として実施される場合がほとんどでした。
しかし、2030年までに世界がSDGs17の目標の達成を目指し進む中、企業が事業を長期継続させていくためには、サステナビリティの観点を事業に取り入れる必要があります。
そのため、サステナビリティ経営が今注目されているのです。
サステナビリティとは?
サステナビリティとは、「持続可能性」のことです。環境・社会・経済という3つの観点全てにおいて持続可能な状態に導くことを言います。
言い換えると、環境や資源を守り、健全な社会を保った上で、良好な経済活動を維持することです。容易に実現できることではありません。
現在、それぞれの分野で解決すべき課題として挙げられているのは、以下の事柄です。
【環境】・・・気候変動、森林伐採、海洋汚染、生物多様性、水・エネルギーなどの資源の保護
⇒人類が住み続けられる持続可能な場所として地球を後世へ残していくためには環境の保護や、環境に配慮した経済活動へのシフトが必要です。
【社会】・・・ジェンダーや教育の格差、難民問題、健康・医療問題など
⇒これらの課題を解決し、公平性を保つことは、国や地域だけでなくグローバルな規模での社会安定に繋がります。2020年から続く新型コロナ感染症によりこの問題はさらに深刻化したと言われています。
【経済】・・・貧困問題、公正な取引(フェアトレード)、健全な労働環境の整備、セーフティネットの拡充など
⇒人間の生活の持続可能性とも言い換えられます。経済の持続可能性については企業はもちろん、政府にも求められています。
サスティナビリティとSDGs・CSRの違いは?
サステナビリティとよく似た用語に「SDGs」「CSR」があります。このパートでは、それぞれについてサステナビリティとの違いや用語の意味を解説していきます。
CSRとは?
CSRとは、「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」を意味する言葉です。
企業が自社の短期的な利益のみを追求するのではなく、従業員や取引先、投資家、顧客など、全てのステークホルダー(利害関係者)に対して責任を持ち、その要求に応えていくべきという考え方です。
具体的には、事業活動や経営方針について積極的に情報を開示して投資家や社会に対する説明責任を果たすことや、法令やコンプライアンスの順守、環境保護や社会課題解決への支援などを行うことを言います。
CSRは主に企業の事業活動を中心としたもので、取組自体も収益を追求しない社会貢献活動と捉えられていました。
社会全体や環境、経済システムを対象とし、企業の事業活動に直結するサステナビリティ経営とは少し違います。
SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を意味する言葉です。
先進国と新興国が力を合わせて取り組み、環境・社会・経済の3つのバランスを取りながら、持続可能な世界を実現すべく掲げられた目標で、2030年の達成を目指した「17の具体的なゴール」が示されています。
17の具体的なゴールには「目標13:気候変動に具体的な対策を」「目標16:平和と公正を全ての人に」「目標8:働きがいも経済成長も」などがあります。
環境・社会・経済の3つの観点から持続可能な世界を実現するという点では、サステナビリティ経営と同じですが、サステナビリティ経営とは違い、3つの側面それぞれで具体的なゴールを設定しています。
SDGsはサステナビリティの考え方をより具体化し目標という形に落とし込んだものと言えます。
サステナビリティ経営に取り組む意義とは?
サステナビリティ経営を実現するためには、これまでの事業活動の見直しや変革が必要となります。そのためには当然コストや労力がかかることは避けられません。
しかし、コストや労力がかかってもなお、企業にはサステナビリティ経営に取り組むべき意義やメリットがあります。
①企業価値の向上に繋がる
環境・社会・経済のサステナビリティに配慮した事業活動を行うことは、自社の事業継続リスクに備えることにも繋がります。
例えば、製品製造時のエネルギー消費量や原材料の使用量を削減することにより、エネルギーや資源の調達が困難となる将来のリスクに備えられます。また、コストの削減にもなるため企業の利益を最大化する方策としても有効です。
そして、企業がSDGsに取り組むことにより、新たな市場を開拓するチャンスが生まれます。社会課題解決の市場規模は1,200兆円とも言われており、環境課題や社会課題を解決する取り組みそのものが、新たな事業やサービスを生み出すケースも沢山あります。
企業成長の新たな起爆剤として、サステナビリティ経営を採用する企業は多いでしょう。
②ステークホルダーからの評価向上に繋がる
サステナビリティ経営に取り組むことは企業イメージの向上、ひいては従業員や取引先、投資家、顧客などステークホルダーからの評価向上にも繋がります。
顧客・消費者
世界的にエシカル消費の意識が高まっています。
エシカル消費とは「倫理的消費」とも呼ばれ、環境や社会の課題解決に貢献できる消費活動のことを指します。
今や日本の消費者の6割はエシカル消費に繋がる商品やサービスを購入したいと考えています。サステナビリティ経営は企業のイメージアップだけでなく、顧客や消費者のニーズを叶える取り組みでもあります。
取引先・他企業
環境・社会への配慮を進めるサステナビリティ経営は、同じ志を持つ取引先や企業からの信用や支持の獲得に繋がります。
また、SDGsといったサステナビリティにまつわる用語が広く認知されてきた昨今では、サステナビリティという共通の価値観が他企業との連携を進めるきっかけともなります。
連携によって、新たな製品やサービス、イノベーションを生み出すことも可能になるでしょう。
従業員
サステナビリティ経営へ取り組むことは従業員の働きがいに繋がります。
自社の事業活動が社会課題を解決するという事実は、仕事に対する誇りや自信を生みます。また、求職者の6割は就職先企業の社会貢献度を重視することが分かっています。
サステナビリティ経営への取り組みを積極的に発信することで、優秀な人材を確保しやすいメリットもあるでしょう。
金融機関
多くの銀行や金融機関などで、サステナビリティ・リンク・ローンなど、サステナビリティ経営に積極的に取り組む企業に有利な条件で融資を提示するケースが増えています。
サステナビリティ経営に取り組む企業は金融機関にとっても良い融資先とみなされるのです。
投資家
ESG投資の規模は欧米を中心に年々拡大しています。
ESG投資とは、企業の売上や利益だけでなく、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資方法です。
ESG投資の規模は、今や世界の投資額の26.3%を占めており、今後まずます拡大していくと見られています。
サステナビリティ経営の事例
このパートではサステナビリティ経営を実践する企業の事例を紹介します。
エーザイ
エーザイは医薬品の提供のほか、医薬品アクセス向上、地域医療へのソリューション提供などを通し、世界中に存在する医療・ケアのギャップの解消に取り組んでいます。
サステナビリティ経営の目標をSDGsが掲げるものと連動させており、以下の7つの目標達成を目指しています。
目標1:貧困の撲滅
開発途上国・新興国の健康福祉の向上、中間所得層の拡大による経済成長への貢献をめざす
目標3:健康と福祉
革新的な医薬品の創出、医薬品の提供にとどまらないソリューションの提供、購入しやすい価格での製品提供
目標5:ジェンダー平等
2020年度までに女性管理職比率10%をめざす
目標6:水と衛生
水の使用量削減により、医薬品の生産に不可欠な水が不足するリスクへ対応する
目標12:持続可能な消費と生産
廃棄物発生量削減、リサイクル率向上、最終埋立量の削減の推進
目標13:気候変動
国内グループのCO2排出量を2020年度までに2005年度比で23%削減する
目標17:パートナーシップ
イノベーション創出に向けた企業、アカデミアとのパートナーシップや医薬品アクセス拡大に向けた国連機関、非営利組織、研究機関、アカデミア等とのパートナーシップ
コニカミノルタ
コニカミノルタでは以下の5つをサステナビリティ経営の重要課題と定め、事業と社内活動の両方において取り組みを行っています。
働きがい向上及び企業活性化
生産現場の検査工程自動化/女性のキャリア形成支援・多様な人財の活用支援・障がい者雇用
健康で高い生活の質の実現
独自の遺伝子検査や動態検査技術を活用し、疾病の早期発見を実現、重症化リスクを低減
/従業員の健康管理、労働安全衛生
社会における安全・安心確保
労働安全支援ソリューションの提供(フォークリフト事故低減サービス)/健康に影響を与える物質の排除(生産活動での化学物質リスク低減)
気候変動への対応
オンデマンド生産で顧客の業務プロセスのエネルギーやCO2を削減/生産活動での省エネ・温暖化防止
有限な資源の有効利用
製品の省資源・リサイクル
大林組
大林組は長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050(OSV2050)」を策定。品質管理や環境への配慮、労働環境の整備、安全衛生といったさまざまなテーマが盛り込まれています。サステナビリティへの取り組みは以下の7つから成ります。
品質:良質な建設物・サービスの提供
AR(拡張現実)やドローンなどによる3D計測を活用した施工プロセスの可視化、遠隔操作による建設機械の無人化など
環境:環境に配慮した社会づくり
CO2排出量や、水使用量、資源リサイクルなど環境負荷への影響が大きい項目について建設現場ごとにモニタリングを実施。その削減に努める
人材:人を大切にする企業の実現
人権啓発活動(ハラスメント、SOGI(性的指向と性自認)、障がい者、人種差別など)
女性技術者が勤務しやすい環境や制度の整備
安全衛生:人を大切にする企業の実現
労働災害の防止に向けた取り組み(安全教育、安全表彰制度)
働きやすい職場作り(現場の週休二日(4週8閉所)の達成に注力)
調達先:調達先との信頼関係の強化
調達先・取引先に大林組のCSRの考え方などを理解してもらい、人権、安全衛生、環境、品質、社会貢献などのテーマに共に取り組んでいくことを目指す。
社会貢献:社会との良好な関係の構築
社会貢献活動(被災地支援・地球環境・社会貢献分野への寄付)
防災と災害時の復旧・復興
企業倫理:企業倫理の徹底
企業倫理委員会および企業倫理責任者・企業倫理推進者の設置
「大林グループ企業倫理相談・通報制度」の導入
ファーストリテイリング
ユニクロのサステナビリティ活動はPLANET・SOCIETY・PEOPLEの3つの柱で構成されています。
PLANET
サステナブルな服づくり(リサイクル素材の利用など)
環境保全のためのボランティア活動
SOCIETY
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とのグローバルパートナーシップによる難民支援
子どもたちへの支援・アクション(難病を抱える子どもや家族の支援)
災害支援(衣料品や寄付金による支援)
PEOPLE
ダイバーシティ推進(ユニクロ店舗での難民雇用、障害者雇用)
安全管理体制の確立、品質向上の支援を通じ生産者との信頼関係を結ぶ
サステナビリティ経営を実践するために
サステナビリティ経営を実践するためには、何から始めたら良いのでしょうか?
課題の特定
まずは、取り組むべき課題を特定しましょう。
自社が環境・社会・経済におけるどのような課題を重要視しているか、自社の商品やサービスがその課題解決に貢献できるものなのかどうかも併せて確認します。
課題の特定は業種に依存するところが大きく、食品業界であれば健康、製造業であれば省資源やリサイクルといったものが挙げられるでしょう。
業種に関わらず多くの企業で採用されている取り組みには、温室効果ガスの排出削減やダイバーシティの推進などがあります。
従業員の声なども参考に、自社が取り組むべき課題は何か、自社のどのような事業がサステナビリティに貢献できるかを考えましょう。
ビジョンの策定
サステナビリティ経営によって、将来自社が目指すべきゴールを設定しましょう。
10~20年先の未来を見据え、サステナビリティ経営の実現に向けたシナリオを描きます。
SDGsは2030年、カーボンニュートラルは2050年に目標が設定されていることから、これからビジョンを策定するのであれば、2030〜2050年にゴールを置くと良いでしょう。
まずは、〇〇ができたら目標達成とする、〇年までに〇〇を達成すると言った風に大きな目標を定めます。
目標は環境や社会情勢によって適宜見直しや調整をしますので、ここではあまり考えすぎる必要はありません。
実践
ゴールを設定したら、目指す姿に到達するために行動を始めます。
ゴールから逆算し、具体的なアクションプランの作成や目標設定を行いましょう。実践にあたってはどんな課題や問題があり、どう解決すべきかも考える必要があります。
ここで最も重要なのは、従業員とのビジョンの共有です。
サステナビリティ経営とは何か、サステナビリティ経営を行う意義は何か、自社の事業がどう社会に貢献できるのかを、全社に周知し、協力を求めることで、初めて実践が可能となります。
継続的な研修や勉強会などで、しっかりと理解を得るようにしましょう。
発信
サステナビリティ経営では、実践だけでなく自社の取り組みを発信することも重要なアクションのひとつです。
達成できたこと、できなかったこと、達成するまでのプロセスやストーリーを開示し、社内外で共有しましょう。
顧客や投資家へ自社のサステナブルな取り組みを発信することは企業イメージや評価の向上にも繋がります。
また、取り組みを他企業とも共有することで、新たな連携が生まれる可能性もあるでしょう。
サステナリビリティ経営は企業の存続に繋がる最重要課題
サステナビリティ経営の重要性は世界的に高まってきており、企業は投資家や金融機関、顧客などの各ステークホルダーに自社の事業の持続可能性を示すよう、求められる場面も増えてくるでしょう。
ESGソリューションでは、サステナビリティ報告書やウェブサイト構築により、企業によるサステナビリティの取り組みを効果的に発信します。
また、マネジメント層や経営幹部向けのESG経営セミナーの開催、組織の課題・リスク抽出といったサービスも提供しています。
自社に合ったサステナビリティ経営を実現したい、または実現のための支援を受けたいという企業様はぜひESGソリューションの利用を検討されてはいかがでしょうか。