株主の「議決権」とは?株の保有割合による権利と行使方法

株式・投資

会社の最高意思決定機関である株主総会では、株主が保有する「議決権」によって、会社の経営方針や資産の使い方など重要な事案の行方を左右できます。会社の安定運用のためには、議決権への理解とスムーズな株主総会の開催が不可欠です。

本記事では株主の権利である「議決権」についての基本知識と、議決権を行使するための方法を紹介します。スムーズな株主総会を支援するためのツールも紹介しますので、ぜひ貴社の安定経営の参考にしてください。

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株主総会における議決権とは

議決権は、株主総会で投票を行う権利のことで、議決権を通じて会社の経営を左右できます。たとえば3分の1超の株式を保有すれば重要事項の特別決議を拒否することができ、2分の1超を保有すれば取締役の解任・選任などによって経営権の取得も可能です。

株主総会に参加できない場合はハガキによる投票も受け付けているほか、インターネット上での議決権を行使できる株主総会もあります。

1単元株につき1議決権が原則

株主総会では事案に対する議決権を持つ人が賛成・反対の票を投じますが、票の数は1人1票ではなく、保有比率によって決まります。1単元株に対して1つの議決権があるのが一般的です。

ここでいう1単元株とは株式の売買単位のことです。上場会社の場合は原則として100株が1単元になります。99株以下の単元未満株を保有する投資家の場合、決議に参加できません。

株主総会の決議の種類は3つ

株主総会決議の種類には、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類があります。会社法では、決議事項によりその決議方法が定められています。

普通決議

普通決議は、発行済株式数の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって成立する決議のことです。

会社法または定款で特段の定めがない場合は普通決議によって決議を行います。

決算の承認、取締役・監査役の選任、取締役・監査役の報酬、株式の配当などが対象です。会社を共有物、株主を共有者であることを前提に、「会社を管理する行為」に関する決議で選択できます。

「定足数(議事を行うために必要な最小限度の出席者数)」は、定款によって引き下げたり、排除したりすることができます。ただし、役員の選任・解任決議については、定足数を総株主の議決権の3分の1未満に引き下げできません。

なお、一定の重要事項を決議する場合、会社法では普通決議よりも厳格な要件を課しています。これらは普通決議とは別に「特別決議」「特殊決議」と呼ばれます。

特別決議

発行済株式数の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって可決となる決議のことです。

定款の変更、営業の譲渡、減資、会社の解散・合併契約の承認など、会社の基本的な部分に関わる重要な事項を承認する際に選択されます。

特殊決議

特殊決議は決議事項の重大性ゆえ、圧倒的多数の賛成が要求される決議のことです。決議案件によって以下の2つのパターンに分かれています。

  1. 議決権を行使できる株主の半数以上、かつ当該株主の議決権の3分の23にあたる多数の賛成を必要とする
  2. 総株主の半数であって、総株主の議決権4分の3以上の多数で決議とする

1のパターンでの特殊決議が必要な決議事項は以下の通りです。

  • 全部の株式につき譲渡制限株式とする定款変更をするとき
  • 吸収合併契約等の承認
  • 新設合併契約等の承認

2のパターンで決議が必要になるのは、「株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定め」を新たに定款に定めるときや、その内容を変更するときです。

議決権のない株式の種類もある

普通株の保有者は株主総会で議決権を行使できますが、株式の種類によっては議決権がないものもあります。

自己株式

自社株式を取得する際に特定の株主から有償で取得する場合、利害関係を有する株主は議決権を行使できない場合があります。

「相続人等への売渡請求により自己株式を取得するケース」などが該当します。

議決権制限株式

議決権制限株式とは、議決権を行使できる事項に制限のある株式のことです。なかでも議決権が一切ない株式を「無議決権株式」と呼びます。

5名の株主のうち1名が無議決権株主の場合、総株主数は5名でも議決権を有する株主の数は4名です。

単元未満株

単元未満株は、1単元を下回る株式のことです。単元株を下回る単元未満株には議決権がありません。

1単元=100株の企業の株を999株保有している株主の場合、保有する議決権は9個です。

相互保有株式

相互保有株式とは、株式会社同士で相互に株を保有し合うことです。「持合い」とも呼ばれ、取引関係・提携関係の維持・強化などを目的に利用されます。

A株式会社が保有するB株式会社の株式が総株主の議決権の4分の1以上になる場合、B株式会社はその保有するA株式会社の株式につき議決権を行使できません。支配下にある会社は、支配している会社への議決権行使をできないためです。

逆にB会社が保有するA会社の株式が4分の1未満である場合、A会社はB会社への議決権を行使できます。

議決権を行使するための方法

株主総会に参加する株主が実際に議決権を行使する方法としては大きく分けて3通りあります。

書面投票

取締役または取締役会が決定・決議した株主総会の招集について「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使できる」と定めた場合、株主総会に出席しない株主は書面によって議決権を行使できます。

東京で株主総会を開催した場合、沖縄や北海道在住の株主は出向くこともままならない場合があります。そのような場合、書面での議決権を行使できます。

電子投票

書面ではなく、メールなどの電磁的方法によって議決権を行使することも可能です。取締役または取締役会が決定・決議した株主総会の招集について「株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使できる」とした場合、電子投票で議決権を行使できます。

代理人による議決権の行使

株主本人が出席せずとも、代理人に株主総会に出席してもらう形で議決権を行使することも可能です。

ただし、代理人は代理人であることを証明する委任状を会社に提出する義務があり、株主は代理権の授与を株主総会ごとに行う必要があります。

コロナ禍で注目されるバーチャル株主総会

経営方針の速やかな決定には株主総会での議決権行使が必要ですが、新型コロナウイルスが蔓延するなかにあっては通常の株主総会の開催が難しくなっています。そこで、コロナ禍のなかでスムーズな株主総会を後押しするツールとして「バーチャル株主総会」を紹介します。

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法改正でバーチャルだけでの株主総会が可能に

従来は会社法上の問題もあり、バーチャルオンリーの株主総会の開催は難しいのが実情でした。そこで採用されたのが、物理的な会場を設けたうえで追加的に取締役や株主等がインターネットを使って株主総会に出席する「ハイブリッド型バーチャル株主総会」です。

一方、2021年6月に産業競争力強化法のなかで、会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設されました。これによって上場企業がリアル会場を設けず、バーチャルのみの株主総会(オンリー型)の開催が可能になりました。

参考:「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」の一部が施行されました|経済産業省

バーチャル株主総会の魅力・特徴

バーチャル株主総会の参加者・経営側のメリットをまとめると以下のとおりです。

【参加者のメリット】

  • 遠方の人でも株主総会に参加できる
  • 開催日が重複した株主総会でも参加できる
  • 新型コロナウイルスへの感染対策になる

【企業側のメリット】

  • 規模の大きな会場を用意する必要がない(オンリー型なら準備自体が不要)
  • 遠方にいる人の参加による参加者増が期待できる
  • 新型コロナウイルス感染防止対策の負担が軽減する

双方に共通するメリットは、新型コロナウイルスの感染対策になることです。密な会場での実施をしないことで、感染リスクの低下につながります。

また、従来の株主総会では遠方からの参加が難しかった株主でも参加しやすくなったこともメリットです。より多くの株主が参加できることで活発な議論が期待でき、透明性のある経営につながります。会社の業績や展望を多くの人に知ってもらうきっかけにもなるでしょう。

バーチャル株主総会での議決権行使フロー

バーチャル株主総会で議決権を行使してもらうまでには、会社側が以下2つのフローをこなす必要があります。

  • 株主への招集通知
  • バーチャル株主総会の環境準備

バーチャル株式総会を行うスケジュールが確定したあと、株主への招集通知を行います。バーチャル出席時になりすましを防止するため、本人確認のシステム導入が必要です。バーチャル出席するためのURLだけでなく、ID・パスワードなどを送るなど、なりすまし防止策を行いましょう。一定以上の議決権を有する株主には、より慎重に本人確認を行うことも検討が必要です。

経験豊富な株主でもバーチャル株主総会は初めての方が大半です。バーチャルによって参加のハードルを下げたことで、株主総会自体が初めての株主も多く参加するでしょう。混乱を避けるため、分かりやすい通知を心がける必要があります。

また、バーチャル株主総会では通常の株主総会に必要な会場を準備したうえで、議決権行使が可能な環境が必要です。ライブ配信用の機材、本人認証システムなどの環境を整えることはもちろんですが、アクセスが集中することによる通信の不安定も事前に対処しておかないといけません。バーチャルでの参加を希望する人を把握するため、事前登録を促すことなどが対策として考えられます。

バーチャル株主総会での動議に関する問題点と対策

バーチャル株主総会は未だ解消されていない問題点が多く、導入の妨げになっています。今回は議決権に関する「動議」での問題点と、すでにバーチャル株主総会を実施している企業が行った対策について解説します。

まず、バーチャル出席株主からの動議については、会社の合理的な努力で対応不可能な範囲の困難が生じることが考えられます。

対策として富士ソフトでは、「バーチャル出席株主からの動議は取り上げることが困難なため受け付けない」旨、また「当日にリアル出席株主から動議が提出されるなど、招集通知に記載がない件について採決が必要になった場合、バーチャルで出席した株主は賛否表明ができず、棄権または欠席として取り扱う」旨を招集・通知等に記載しています。

ただし、インフラの実施環境によってはバーチャル出席株主からの動議も可能です。この点はインフラの整備具合によって各企業での対応が分かれます。ソフトバンクでは動議の受付について、株主総会当日の一定の時間(質疑応答開始後○分後)までを期限として設けることで対応しています。

参考:ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集|経済産業省

バーチャル株主総会でスムーズな議決権行使を後押しできる

本記事では、株主が持つ議決権に関する基本事項と、新しい議決権行使の方法としてバーチャル株主総会の概要や注意点を解説しました。株主総会に参加するハードルを下げ、新型コロナウイルス対策にもなるバーチャル株主総会は、株主とのコミュニケーションを活発化させて企業価値を高める点に期待が持てます。

動議について一定の課題もありますが、実施企業が行った対策を取り入れることで対処可能です。この機会に、ぜひバーチャル株主総会の導入をご検討ください。株式会社ウィルズでは、バーチャル株主総会のサービス提供を行っています。詳しく知りたい方は下記ページよりチェックしてみてください。

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