投資家は様々な指標をチェックして購入・売却する銘柄を決めています。その中でも流動性が高く、取引が活発に行われていることを示す「出来高」は投資の際の指標にされやすい項目です。
株価が出来高を伴って上昇するような施策を打つのは、個人投資家に選ばれる企業になるための重要なポイントです。
本記事では出来高が株価に与える影響と、出来高を上げて投資家に選ばれる企業になるための方法を解説します。
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株取引における出来高とは
出来高は証券取引所で株などが一定期間中に売買された数量のことです。成立した取引の売りと買いで1つの取引として数えます。たとえば1,000株ずつの売りと買いが成立した場合の出来高は1,000株です。
同じ株価でも、100株で成立した場合と1,000株で成立した場合では出来高に差が出ます。100株では売り買いともに1注文(計2注文)ですが、1,000株は売り買いで10注文ずつ(計20注文)が入ります。出来高が多いほど、より多くの注文が成立したと読み取れます。
出来高は投資家からの注目度を表す指標
出来高は一般的に「株価に先行する」とされていて、株価との連動性が高いことから投資判断のツールとして使われます。
出来高が大きいということは、たくさんの売買が成立している状態です。取引が活発に行われると価格の変動が大きくなるため、更に投資家の注目を集められます。
逆に出来高が小さいと取引が行われておらず、投資家から見向きもされていない状態です。
株価チャートの出来高の見方
証券会社や投資家向けの情報サイトでは、ローソク足のチャートの下に出来高が棒グラフで表示されることが一般的です。
出来高が増加するのはどんなとき?
出来高が増加するのは、多くの人がその株を売りたい・買いたいと思って取引が活発になる時です。
一般的に以下のようなケースで出来高が大きくなる傾向にあります。
- 業績の上方修正・下方修正
- 上場の廃止・市場変更
- 資本業務提携
- 新製品の開発 など
出来高ランキングでよく登場する株の特徴
どのような特長を持った銘柄が出来高ランキングによく登場するのか、具体的な銘柄とその理由を解説します。
発行済株式数が多い
発行済株式数が多いことは、売買が活発に行われる1つの要因です。
たとえばソフトバンクグループ株式会社(9984)を例に挙げると、発行済株式数が17億株以上(2021年9月末現在)と多く、日経225に含まれる代表的な銘柄として取引が活発に行われています。
株価がさほど高くない
東証一部に上場している有名企業のなかでも取引しやすい価格帯の銘柄は個人投資家に選ばれやすい傾向にあります。
東証一部上場企業の出来高ランキングの常連は以下のように、株価が1,000円前後の銘柄が多く含まれます。
- 株式会社三菱UFJ銀行(株価726.3円
- 丸紅株式会社(株価1,237円
- 日産自動車株式会社(株価615円
- 日本郵政(株価976.5円
※株価は2022年2月18日の終値
株価が安いと売買代金のランキングには入りにくい一方、投資資金が少ない個人投資家でも取引しやすいことで上位に入りやすいのです。
投資家は出来高と株価で相場を読む
一般的には出来高は「株価に先行する」とされていますが、必ずしも決まった値動きをするとは限りません。
出来高と株価は大きく分けて「株価に先行」「株価と並行」「株価が先行」のパターンに分かれます。
出来高が株価に先行するケース
出来高が株価の上昇に先行して上昇するパターンです。
たとえば株価が右肩下がりの中、出来高の急上昇を機に反発するパターン。何らかのきっかけで、これから株価が上がると予想した人が多くなると買いが集中し、出来高が上がって株価も追随して上がります。
株価が出来高の増加を伴って急落してその後に上昇する流れは「セリングクライマックス」とも呼ばれ、投げ売りが集中して出来高が一時的に急増しますが、底を打ってから株価が急反発します。
あるいは下落局面でなくても、不人気な銘柄の安値圏で出来高が急上昇した場合も買いのサインです。
「出来高は株価に先行する」の典型的な例といえましょう。
出来高が株価に連動するケース
出来高が株価に先行して上昇する以外に、株価とほぼ同時に増加する場合もあります。株価が上昇と下降を繰り返す中で出来高が増え、そこを起点に株価が上昇に転じる等のパターンです。
逆に株価がもみ合いの中で、出来高の増加と同時に株価が下落に転じることもあります。
出来高が株価に遅れて動くケース
株価が上昇したあとに出来高が上昇するのは、投資家が出来高を見てから動くパターンです。
株価が上がったことで投資家の注目を浴び、買いたい・売りたい人が殺到して出来高が増加します。ニュースなどで企業の不祥事などマイナスな情報で株価が下がり始めると、含み損を抱えないように投資家が殺到して、株価に遅行して出来高が上がることもあります。
「売り・買い」の水準が分かる価格帯別出来高も活用できる
投資家は通常の出来高だけでなく、価格帯出来高という指標を使って投資判断に活用しています。
価格帯別出来高は、過去の一定期間内に売買が成立した株数を株価(価格帯)別に表示したものです。
一般的には株価チャートの右側または左側に横棒グラフで表示されます。
引用:SBI証券
価格帯別出来高が高いと、過去にその株価で売買をした投資家が多かったことを意味しています。将来的にも株価の上昇局面で価格帯別出来高が多いところは売り圧力が強まり、下降局面では買い圧力が強まるポイントになる可能性があります。
投資家に選ばれる企業になるための施策
出来高が高まることで多くの投資家からの目に留まり、取引が活発になることで自社の株価の上昇が期待できます。
投資家に選ばれて出来高が上がる企業になるためには、投資のきっかけになるような施策を打ってファン株主を増やすことが重要です。
個人投資家を取り込む施策として、今回はいくつかの例を紹介します。
株式分割を検討する
株式分割は株式を細かく細分化して、発行済株数を増やすことです。株価10,000円の1株を4株に分割すると分割後の株価は2,500円になり、発行済み株式数は4倍に増えます。
株式分割をすると前述した「発行済み株式数が多い」「株価がさほど高くない」という人気条件が揃い、個人投資家に選ばれやすくなります。
株価が1,000円で発行株数が100万株のA社と、株価が2,500円で発行株数が40万株のB社があった場合、時価総額はどちらも10億円です。ただ、同じ業種で業績もほぼ変わらないと仮定すると、特別な材料がない限り株価が低いA社の出来高が高くなるのが一般的です。
100株単位で売買すると25万円が必要なB社よりも10万円で取引できるA社の方が、投資資金が少ない投資家でも取引に参加しやすいためです。
過去にも、株式分割がきっかけの1つになって株価が上昇した銘柄があります。
たとえば株式会社スノーピーク(7816)は2021年11月12日に12月1日付での1:2の株式分割を発表したところ、11月12日に3,055円だった株価が16日には4,215円と、ストップ高を伴いながら急激に上昇しました。
安定配当・連続増配を目指す
安定的に配当が出る銘柄は投資家の注目を集めやすい傾向にあります。日本証券業協会が発表した「個人投資家の証券投資に関する意識調査」によれば、「配当・分配金・利子を重視する」「株主優待を重視する」と答えた人を合計するとどの世代でも20~30%程度存在することが分かっています。
アメリカと違って日本では10年以上の連続増配は非常に珍しく、増配するほど投資家に注目されます。
花王株式会社を筆頭にユニ・チャーム株式会社・小林製薬株式会社・株式会社イエローハット・リンナイ株式会社などの連続増配が10年以上に及び、安定配当を重視する投資家に人気があります。
また同調査によって「株主優待を重視する」と答えた人が各世代で5~10%存在することも分かっています。いわゆる優待投資家の注目を浴びるために、株主優待の導入を検討するのも1つの方法です。
株式会社ウイルズでは、上場企業と株主間のコミュニケーション活性化に役立つ「プレミアム優待俱楽部」を提供しています。株主は会員専用サイトでプレミアム優待クラブに登録することで、保有株数や保有期間に応じた「優待ポイント」、企業とのコミュニケーションによって「プレミアムポイント」を獲得できます。優待を導入することで個人投資家の投資を促し、自社株の出来高の上昇、ひいては株価上昇にも期待が持てるでしょう。
IR活動で投資家の認知度を高める
個人投資家への知名度を高めるための手法として、以下のようなIR活動を充実させる方法もあります。
- 企業HPや株主向けの広報誌で文書を開示する
- 個人投資家説明会や決算説明会を実施する
- プレスリリースを配信する
個人投資家を獲得するためにはIR戦略として「情報の開示」が重要です。どんな企業理念を持ち、どんな戦略で経営を行っているかを開示することで個人投資家が投資を決めるきっかけになります。逆に事業内容や会社の将来性が分かっていない環境では、個人投資家からの投資は得られません。
そのほか新商品の開発などが行われた場合、プレスリリースの発行も有効です。第三者であるメディアで取り上げられることで信頼性の高い情報提供が可能です。プレスリリースを情報ソースとして活用することで投資家の目に留まりやすくなり、投資のきっかけになることが期待できます。
IR活動を効率的に行うなら、ステークホルダーと良好なコミュニケーションを取れるASPシステム『IR-navi』の導入を検討してはいかがでしょうか。
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出来高上昇の取組で株主に選ばれる企業を目指そう
本記事では出来高が株価に与える影響と、投資家に選ばれるための方法を具体的な銘柄の紹介を交えて解説しました。
株式分割や配当の充実以外に、投資家向けのIRコンテンツを充実させることでもファン株主が増加し、株価に好影響を与えると納得いただけたのではないでしょうか。
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