流動性とは、市場に出回る株式の多寡を表したものです。株取引において、投資家は売買機会を逸したくないと考えており、制約条件を嫌います。従って、流動性の高い銘柄は必然的に人気が高まります。
また、企業にとっても流動性が高いことで株主が増えやすくなるほか、上場を目指している際には重要な指標のひとつとなるでしょう。
今回の記事では流動性が高い銘柄の特徴をはじめ、流動性を高めるための施策について紹介します。
流動性が高い銘柄の特徴
「流動性」とは、市場に出回る株式の多さを表す言葉です。
過去5年間の売買代金を見て、その代金が大きいほど「市場での流動性が高い」と判断されます。また、流動性の観点から株価の変動度合いも重視されており、わずかな売買で株価が大きく変動していないかも重要な判断ポイントです。
流動性が高い銘柄のことを「大型株」といい、以下の条件に該当するものを指します。
- 発行済株式総数が2億株を超える銘柄
- 資本金が1,000億円以上または10億株以上の銘柄
なお、東京証券取引所では東証一部の銘柄を時価総額の大きさと流動性の高さでランク付けし、それらを3つのグループに分けています。この上位100位までの銘柄が「TOPIX100」と呼ばれる大型株に該当し、東証市場第一部時価総額の60%をカバーしています。
101位から400位までの銘柄を中型株、それ以外を小型株と呼びます。それぞれの構成銘柄はその時々の市場実勢をより適切に反映させるため、毎年10月に見直しがされています。
最新の構成銘柄は東京証券取引所のWebサイトでご確認ください。
参考:株価指数ラインナップ
なお、2022年4月から東証は市場区分を3つに再編し、上場条件を次のように定めています。
- プライム市場:流通株式比率が全体の35%以上、流通株式時価総額100億円以上
- スタンダード市場:流通株式比率が全体の25%以上、流通株式時価総額10億円以上
- グロース市場:流通株式比率が全体の25%以上、流通株式時価総額5億円以上
このうち、大型企業向けのプライム市場は、「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」と定義されています。
プライム市場の流通株式比率は東証1部の上場廃止基準だった5%未満から35%に大幅に引き上げられ、流通株ベースの時価総額も5億円未満での上場廃止から100億円以上となりました。
流動性はこれまで以上に重視されることとなります。
流動性を高める2つの方法
株式の流動性を高めることは企業価値を向上させ、個人株主を増やすことにも繋がります。
流動性を高める方法として、ここでは次の3つの方法を紹介します。
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- 株式分割を行う
- 株主優待を導入する
- 株式市場と指数への採用を目指す
株式分割を行う
株式分割とは、既に発行されている株式を分割することです。
たとえば、一株2,000円の株式を100株保有していた場合において、当該企業が「1:2」で株式分割を行うと決定したとします。分割の結果、自身の保有している株は200株になりますが、資産上の変化は起こりません。
株式分割は企業、投資家にとってもメリットが多く、その代表的なものとして株価の上昇や企業全体の資本増加が挙げられます。
ここでは株式分割を行った結果、株価が上昇した銘柄として「ブティックス株式会社」と「イーエムネットジャパン」の事例を紹介します。
◆ブティックス株式会社
ブティックス株式会社は、介護業界に特化したマッチング事業を主としている会社です。
同社では2021年5月31日を基準日として、「1:2」の割合で株式分割を実施しました。
◆イーエムネットジャパン株式会社
イーエムネットジャパン株式会社は、ネット広告事業を展開する会社です。
同社では2021年9月30日を基準日として、「1:2」の割合で株式分割を実施しました。
上記2社のチャートを見てもわかるように、株価が下がったことで投資家が購入しやすくなり(=流動性の高まり)、株価が上昇したといえるでしょう。
株主優待の導入
株主優待の導入は株価の流動性指標を改善し、企業の株価上昇にも好影響を与えるとされています。
日本ファイナンス学会が2019年に発表した「株主優待制度の導入目的とその効果について」、および経営財務研究が2018年に発表した「日本企業における株主優待導入の目的」をもとに考察される、株主優待の主な導入目的は次の通りです。
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- 個人投資家の獲得、増加
- 長期保有株主の増加
- 株主への利益還元の一環
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事実、優待制度を導入する企業は増加傾向にあり、1996年の上場企業全体での株主優待実施率が13.3%であったのに対し、2016年では35.0%を超えていることがわかりました。
株主優待の送付に株主アンケートを添付する企業も多く、株主優待の導入が企業と株主の距離を縮め、よりよい関係の構築に役立っていると考えられます。
また、近年の日本ではクオカードやお米券などのいわゆる金券や、選択性のカタログギフトなど直接企業に関係のない非自社製品による株主優待の導入が増加しています。
◆優待実施率と優待内容の変化
上場企業全体での 株主優待実施率 |
株主優待の内容 | |
1996年 | 13.3% | 全体の8割から9割が自社製品による優待 |
2016年 | 35.0%以上 | 自社製品による優待は全体の6割に留まる |
非自社製品による優待導入は自社製品を送る場合に比べコストがかかるものの、なぜ導入企業が増加しているのでしょうか。
調査の結果、自社製品と非自社製品、それぞれの優待導入が次のような効果をもたらすことが判明しています。
◆自社製品による優待実施
・株主数の増加に加えて、広告宣伝効果の期待できる
◆非自社製品による優待実施
・コストはかかるが個人株主の獲得が見込める
その他にも、個人株主数が少ないほど、また全株主数が1部上場基準に近接しているほど、翌年の株主優待導入の可能性が高いことが調査によってわかっています。企業の経営状態によって株主優待制度の導入目的は異なるものの、流動性指標の改善や株主数の増加を目的としているのであれば、一度検討してみてもよいかもしれません。
参考:株主優待制度の導入目的とその効果について
参考:日本企業における株主優待導入の目的
株式市場と指数への採用
東京証券取引所は主に以下4つの市場に分けられ、それぞれの会社数は次のようになっています。
◆東京証券取引所(2022年2月12日現在 日本取引所グループHPより)
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- 東証一部:2,183社
- 東証二部:474社
- マザーズ:425社
- JASDAQ:694社
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上場時には一定数の株主が必要となるほか、2022年4月に市場区分が再編されたあともスタンダード市場、グロース市場よりもプライム市場の方が信用性が高く、流動性が高まる傾向にあるといえます。
また、日経225、TOPIX、JPX日経インデックス400などのインデックスに採用されることで機関投資家の売買が活発になり、流動性の向上に繋がるでしょう。
それぞれの採用基準は(株)日本経済新聞社が公表している「日経平均株価算出要領」、東京証券取引所と日本経済新聞社が合同で公表している「JPX日経インデックス400算出要領」および「東証指数算出要領」で確認できます。
2021年10月29日、新たにTOPIXに追加されたレザーテック株式会社を例に挙げても、採用日以降株価の上昇が続いており、指数への採用が株価や流動性に影響を与えていることがわかります。
株主優待導入のメリット・デメリット
流動性を高める施策のうち、最も進めやすいのが株主優待の導入です。
ここでは株主優待を導入するメリットとデメリットについて、それぞれ紹介します。
メリット
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- 会社の宣伝になる
- 株主数を増やせる(ファン株主の増加も見込める)
- 株価が安定しやすい
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株主優待を導入している企業では、自社の商品や自社で使える商品券を優待品としているケースがほとんどです。自社の製品やサービスを利用・体験してもらうことで、事業内容に興味を持ってもらうきっかけを作れます。
株主本人がそれらを利用せずとも家族や友人が利用し、利用者の輪が広がることもあるでしょう。また、株主優待目的で保有している投資家は売却益目的で投資している投資家に比べ、株を手放しにくい傾向にあります。
業績が多少悪化した程度では株が手放されにくく、株価の安定にも繋がるといえるでしょう。
デメリット
株主優待を導入することで得られるメリットは多いものの、その反面で各種事務が煩雑になるといったデメリットもあります。
優待事務に対するマンパワーがかかることはもちろん、それ相応の費用もかかるでしょう昨今では優待の魅力を高めるために株主が自ら優待品を選べる「選択式優待」が人気を集めていますが、こちらを選ぶとさらに事務が煩雑となります。
株主優待に関する一連の事務を企業が担うには負担が大きく、それらをアウトソーシングに依頼するのも選択のひとつです。
ウィルズでは株主管理のDX支援サービスとして、「プレミアム提供倶楽部」を提供しています。
プレミアム株主優待倶楽部を導入することで、株主優待管理にかかるコストや労力を大幅にカットできます。
ウィルズが提供するプレミアム株主優待倶楽部とは
プレミアム株主優待クラブは、株主の「デジタル化」と「ポイント機能」を併用した新しいサービスです。
株主は株主会員専用サイトである「プレミアム株主優待倶楽部」に登録することで、以下2つのポイントを得られます。
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- 優待ポイント:保有株数や保有期間に乗じて付与される
- プレミアムポイント:企業とのコミュニケーション活動によって付与される
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また、貯まったポイントは次の4つの方法で使用可能です。
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- 自社商品への交換:貯まったポイント数に応じて、一般消費者向け自社商品に交換する
- 他社ポイントと合算:貯まったポイントをWILLsCoin経由で他社ポイントへ交換する(交換先は順次追加予定)
- 豪華商品への交換:貯まったポイント数に応じて、提携百貨店・旅行会社の取り扱い商品と交換する
- 社会貢献として寄付:貯まったポイントを寄付する
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保有年数が長くなるにつれ、ポイント還元率が上がることから長期保有株主の増加が見込めます。
また、電子版事業報告書やIRニュースを株主へ配信できるほか、株主デジタル化による株主管理コスト(郵券代等)の圧縮も期待できるでしょう。
なお、議決権行使も電子化に対応しており、株主は会員画面から各議案の賛否を選択し、議決権の行使が可能です。
プレミアム株主優待倶楽部についてより詳しく知りたい場合、資料請求も受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。
費用対効果の高い効率的な株主戦略を
本記事では流動性という言葉の意味や重要性、流動性を高めるための方法についてお伝えしました。流動性は株価や株主数を左右する要素であることはもちろん、上場を目指している際には欠かせない指標の一つとなるでしょう。
流動性を高める施策の一つとして株主優待を紹介しましたが、株主優待の導入は流動性向上以外にもさまざまな効果が期待できます。
現時点で株主優待を導入していない場合、ぜひこの機会に一度検討してみてはいかがでしょうか。