会社を運営していくうえで、株主管理は欠かせない要素の1つです。株主が株主名簿の開示を求めれば応じる義務があるだけでなく、株主が分からなくなると株主総会の出席通知が出せず、株主総会、ひいては会社の運営にも影響を与えます。
本記事では、株式会社として必要な株主管理の方法について紹介します。株主の管理やリスト化に利用できるツールも紹介しますので、ぜひ貴社の株主管理に役立ててください。
株式会社の運営には「株主管理」が重要
株式会社は株式(株主から集めた資金に対して発行する証書)を発行することで、企業活動で必要不可欠な資金を調達しています。
株主は株式をもっている人が実質的な持ち主になるため、「誰が」「どれだけの」株式を保有しているか把握することは企業活動の基本です。資金調達に関する重要事項であり、慎重かつ正確な業務の遂行が求められます。
株主情報の管理業務
株主情報を管理するうえで、基本になる管理業務は、株券の発行・再発行や株式の変更手続きといった株式に関する業務以外に、株主に関する業務もあります。
今回は株主情報の管理業務のうち、以下の2つを解説します。
- 株主名簿の管理
- 株主への利益配当
株主名簿の管理
株主名簿は会社法に基づき、以下の事項を記載することが定められています。
- 株主の氏名および住所
- 株主が有する株式の種類および株式数
- 株式の取得年月日
- 株券発行会社の場合は株券の番号
個人の場合はその氏名を記載しますが、株主が法人の場合に記載するのは法人の名称です。住所に関しては法人の場合、本社所在地を記載します。仮に株主が1人だけでも、1人だけの株主を株主名簿に記載する必要があります。
株主総会の招集通知は株主名簿に記載された住所に送付されるため、常に最新の状態に更新が必要です。株式の売却や相続で名義が変わった場合、株主の請求によって規定に基づいて要件審査を行い、記載ミスのないように速やかに処理を行います。
株主管理を怠って株主がだれかが分からなくなると株主総会の出席通知が渡せず、株主総会の開催ができないおそれもあります。
株主への利益配当
株主への利益配当は、株主管理の重要な内容の1つです。
株主総会で配当金額が承認されたあと1ヶ月以内に手続きを行います。株主総会での承認後は、税務署と株主に対して以下の手続きが必要です。
- 税務署:配当・余剰金の分配および基金利息の支払」の合計表と支払調書を提出
- 株主:配当金振込み時に「配当・余剰金の分配および基金利息の支払調書」を送付
加えて、振込み日の翌月10日までに源泉所得税の納付を行います。
株主管理に使われる「株主名簿」
株主名簿は株主の氏名、住所、保有する株式数など、株主に関する情報を記載する帳簿のことです。会社法ではすべての株式会社に対して定められた内容が記載された株主名簿を備え置くことを義務付けています。
株主は「株主総会の議決権」「剰余金の配当請求権」などさまざまな権利を有しており、株主名簿は権利を有する株主を特定する意義があります。
株主名簿があることで会社側は現在の株主を把握でき、株主は権利を主張することができるのです。
株式取得者から請求があった場合は株主名簿の書き換えが必要
株式の譲渡などで株式取得者から請求があった場合、株主名簿の書き換え手続きが必要です。株式取得者が株券を提示して名義変更を請求した場合、会社側は拒むことができません。
会社に代わって事務を行う株主名簿管理人とは
株式会社は、会社に代わって株主名簿の作成・管理などの事務を行う「株主名簿管理人」を定め、株主名簿に関する事務を委託することができます。
非上場の会社は自己で株式名簿の管理を行うケースもありますが、上場企業は金融証券取引所の規程に基づき、株主名簿管理人に事務を委託することが必要です。
株主名簿管理人を選定するポイント
株主名簿管理人は株式発行の代理人として株主名簿の作成管理や配当処理の事務を請け負うだけではありません。新株予約権原簿の管理、株主総会の準備・運営についての指導・助言も行います。
必要になる費用は株主名簿管理人ごとにさまざまです。上場前の費用感はどの株主名簿管理人を選定しても大差はありませんが、上場後は株主数や事務取扱い量に応じた代行手数料が収受されます。手数料の金額やサービス内容、関連するIR業務への展開は株主名簿管理人によって大きく異なるため、費用とサービスの内容・特徴を比較して委託先を決めることが大切です。
株主名簿の管理を怠ると罰則がある
株主名簿は作成後に添付する義務はなくなりましたが、株主に対して開示義務があることは以前と変わりません。株主から請求手続きが行われて拒否することは過料に処すべき行為にあたり、100万円以下の過料が科されます。
株主名簿を管理する際のポイント・注意点
株主名簿を管理する場合、以下の2点の注意点を把握して業務に臨みましょう。
毎年必ず見直し・更新する
株主名簿は常に最新の株主情報が記載されていないといけません。
書き換えの請求があった場合はもちろん、なかった場合でも定期的に内容の見直しをする必要があります。株主管理をおろそかにしている事実を株主に知られると信用の失墜につながり、株式を通じた資金調達にも悪影響があります。
正しい株主名簿を作成すれば、異なる株主から権利を主張されるリスクを減らすことにもつながります。
株主リストとの違いを理解する
株主リストは、商業・法人登記を悪用した犯罪・違法行為の未然防止のための商業登記規則によって定められた書類です。
会社の重要な変更登記申請の際に必要で、株主名簿を正しく作成していれば株主リストも簡単に作成できます。ただし、記載内容が異なるため、株主名簿を株主リストとして提出することはできません。
株主名簿では「株主の氏名又は名称及び住所」「保有する株式の数(種類株式発行会社にあっては種類ごとの数)」「株式取得日」の記載が必要で、株券発行会社の場合には「株券番号」も記載事項に含まれます。
出典:e-GOV|会社法
一方の株主リストでは株主名簿の内容に加えて「議決権の数」「議決権割合」も記載事項に含まれます。
株主管理には「IR-navi」が便利
株主管理は、IR戦略を立てるうえでも重要な要素です。
IRは投資判断に必要な企業情報を発信する広報のことを指し、従来は経営数値に関する情報を発信する程度の取組みしかされていませんでした。現在は比率が増えた個人株主を取り込むことを目的に、より戦略的にIR情報を発信することが期待されるようになっています。
IR活動を資金調達に結びつけるためには、株主・投資家と良好な関係を築き上げることが第一です。ただ、「誰が何株の株をもっているか」を把握できないとIR戦略はうまく立てられません。株主管理ができないと結果的に個人投資家からの注目が集められず、資金調達に影響が出る可能性があるということです。
株主管理を徹底する際に自社だけでは限界がある場合、業務を効率化できるツールの導入を検討できます。株式会社ウィルズが提供する機関投資家マーケティングシステムの「IR-navi」がその代表例です。
用途に応じた投資家をリストアップ
IR-naviは国内外にいる株主の保有株数や運用担当者の連絡先がデータベースで管理されています。名前・住所だけでなく、生年月日や運用スタイルなどの情報まで網羅されており、国内・海外の機関投資家・個人投資家を一元的に管理できます。
IR-naviiから投資家にアプローチできる
IR-naviは IR活動の目的別に投資家リストを作成・管理できる機能があります。
国内の投資家やアナリスト約6,500名のデータベースがあり、決算説明会の招待リストや海外ロードショー用の外国人投資家リストといった具合に、用途に応じて投資家をリストアップできます。
各ファンドマネージャーやアナリストのデータベースには住所やメールアドレスも記載され、自社とコンタクトのない投資家でもアプローチが可能です。
適切な株主管理で投資家からの信頼を得る
株主管理にはさまざまな業務がありますが、なかでも「株主名簿」を管理することは会社を運営するうえでも重要な項目です。株主名簿が管理できていないと株主総会の開催に悪影響があるばかりか、悪意ある第三者から株主としての権利を主張されるトラブルに巻き込まれることも考えられるのです。
一方、株主管理を適切に行うことで効率的なIR活動が可能になり、会社の資金調達にも好影響を与えます。IR-naviでは国内外の個人株主・機関投資家を一元管理することが可能で、会社と関わりのない投資家にも直接アプローチすることもできます。
効率的に株主管理をしたい経営者・総務担当者の方は、IR-naviの導入を検討してはいかがでしょうか。