投資家に利益を還元する「株主配当」とは。配当金の仕組みと選ばれる企業になるには

株式・投資

株式投資において「配当金」は、安定・継続的に投資利益が見込まれるインカムゲインの源泉です。配当を左右する純利益は投資家から注目されており、それに紐づくROE(自己資本利益率)は欧米に限らず日本でも経営指標の一つとして取り入れられています。

特に日本の個人投資家は、配当金と株主優待に対する目が鋭く、企業は配当性向を高めたり株主優待の拡充を図ることで投資家の支持を集めてきました。

本記事では、投資家に利益を還元する配当金の仕組みや、投資先として選ばれる企業になるためのポイントについて詳しく解説します。

株式配当とは

株主配当とは、企業が上げた利益を投資家に分配する仕組みを言い、株主が保有する株数に応じて配当金が支払われます。長期的な資産形成を意図する投資家ほど配当金への期待が高くなります。旧商法では配当の回数が年2回と決められていましたが、2005年に成立した会社法により、四半期ごとに年4回の配当を行うことができるようになりました。

企業は株主への配慮や戦略を勘案し、配当の出し方に工夫をしています。ただし、ポイントは配当の回数ではなく、増配や配当性向であり、どれだけ株主に還元するのかということです。一般的には毎年の決算時に配当金が支払われますが、企業の業績が著しく良ければ「特別配当」「記念配当」という形で分配金が上乗せされることもあります。

一方で企業の業績が悪化すると、配当が減る「減配」が生じたり、配当金が出ない「無配」が起こることもあります。

配当金の仕組み

企業は、自社が定める権利確定日時点で株式名簿に記載のある株主に対し、配当金を支払います。

配当金は企業の純利益配当性向によって決められます。配当性向とは、純利益の何パーセントを配当として出すのかを決めるものです。例えば、トヨタ自動車株式会社の2021年3月期の配当性向は28.4%。本田技研工業株式会社は22.07%、赤字の日産自動車は無配といった具合です。

株主が配当金を受け取る時期

多くの企業は中間決算と本決算の年2回を採用しており、株主が配当を貰う時期は決算が終わった後が一般的です。

ただし、会社法では株主に対する利益の還元方法を多様化するため、年に何回でも利益の配当ができると定めています。株主総会の決議があれば、何回でも「余剰金の配当」として株主に配当することが可能です。

また、「余剰金の配当」は事業利益に限られておらず、資本金や資本準備金の減少により生じた、その他資本余剰金を原資とするものも含まれます。

配当金の計算方法と利回りについて

以下では、株主が受け取る配当金と利回りの計算方法について紹介します。

配当金の計算式

配当金は投資している企業の持株数に応じて支払われるため、「一株あたりの配当金」×「持株数」=「配当金」という計算式で配当金を調べることができます。

例えば、一株あたりの配当金が100円で1,000株を保有していると仮定します。すると、計算式は下記の通りになります。

「一株あたりの配当金(100円)」×「持株数(1,000株)」=「配当金(100,000円)」

つまり、投資家が配当金を増やすためには「持株数を増やす」もしくは、「配当金の高い銘柄に投資をする」かの2つの選択肢で利回りが大きく変わります。

配当利回りとは

配当利回りとは、投資先企業の株が1年間トータルでどのくらいの配当金額を得られるかを示す指標の一つです。​​

配当利回りを把握する計算式は、一株の配当金に対して一株の株価で割ると配当利回りのパーセンテージが出てきます。

例えば、仮に一株の配当金が100円で一株の株価1000円の配当利回りを出すと、計算式は下記の通りになります。

「100円(一株の配当金)」÷「1000円(一株の株価)」=「10%(配当利回り率)」

このように計算式に当てはめるだけで利回り率を算出できます。

株式配当金と株主優待の違い

株式配当金とは、投資してくれている株主に対して企業の利益を分配するものです。企業は株主のものなので、持株数に応じて現金配当します。

会社法では株主に配当として金銭以外の財産を分配できる現物配当が認められていますが、原則株主総会の特別決議が必要です。この現物配当が株主優待にあたります。株主優待は自社に投資してくれている株主へ自社製品やサービスを感謝の気持ちとしてプレゼントするものです。代表的なところでは、QUOカード、カタログギフト、映画チケット、自社商品の割引・優待券、旅券、お米やお肉などが挙げられます。

要するに、株主配当金は自社に投資してくれる投資家へ持ち株数に応じた利益を配当する義務であるのに対し、株主優待投資家に向けた企業側の好意による贈り物という違いがあります。

株主間とのコミュニケーション活性化を行う『プレミアム優待倶楽部』とは

投資家に選ばれる企業になるには

企業は投資家から資金を募るべく、配当金に限らず、市場の成長性や破綻のない事業計画、事業の収益性など、企業価値を高めるために知恵を絞ります。

また、投資家が投資先を選定する理由は、業績や収益だけではなく、事業の持続可能性の観点から、環境、社会、ガバナンスを重要視するESG投資の考え方にも広がっています。投資の具体的な判断指標は企業の収益性や安全性の部分です。

特に長期投資をされる方は、ROE(自己資本利益率)ROA(総資産利益率)の2つの指標を重要視されています。ROE(自己資本利益率)とは、「投資した株に対してどの程度効率よく利益を上げられるのか」を示した数値です。一方、ROA(総資産利益率)とは、「会社の総資産を使用してどの程度の利益を上げられたのか」を示した数値です。

この2つは、会社経営の収益性や効率性を重視する指標なので、ROEとROAがどちらも高ければ株式市場で高い評価を得ている可能性が高いです。また、その他にもBPSと言われる企業の安定性を見る指標や、EPSという1株当たりの収益なども確認しています。

配当を減らさない安定配当

安定配当株とはその名の通り配当金を長期に渡り減配することなく、安定的に配当を出したり、時には増配したりする銘柄のことを言います。連続増配株であれば、毎年配当金が増えているので誰が見ても優良な銘柄だと判断できますが、安定配当株は連続増配を行わないためあまり目立ちません。そのため、「隠れ増配株」や「非減配株」と言われています。

投資家は年間配当額の推移から「配当金の増配率」「配当金増配の頻度」「配当利回り率」「配当性向」などを厳しくチェックしています。

IR活動やESGなど経営戦略を明確にする

投資家に評価される企業になるには、個人投資家向けにIR活動を行い財務状況や経営状況、今季の課題や今後の見通し、自己資本利益率や総資産利益率など、投資判断に大切な情報を開示することが大切です。

例えば、個人投資家向けにセミナーを開催したり、企業説明会や決算説明会を開いて経営陣と株主でディスカッションを行い、今後の経営戦略を明確に可視化させることが投資家との信頼関係構築へとつながります。

また、最近はIR活動の他にESGと言われる、環境問題、社会問題、人種問題などの課題に対しての企業の取り組みも投資家に評価されるポイントなので、ESGを考慮した経営をしている企業は投資先として注目を集めています。

企業活動の利益を還元し、株主と継続的な関係を

企業価値を最大化し多くの人に評価される企業になるには、安定的な利益を還元することは当然であり、それ以上に株主との長期的・安定的な信頼関係が求められます。

信頼関係を築くにはIR活動を積極的に行い経営戦略を株主に共有し、そこで頂いた意見や要望を迅速に経営に反映させることがポイントです。

適切な情報を開示し、株主との活発なコミュニケーションを充実させることが、企業価値を向上させ、多くの株主から信頼される企業への近道です。

株主間とのコミュニケーション活性化を行う『プレミアム優待倶楽部』とは

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