企業価値とは何か?価値を計算する方法や企業価値を高める方法を解説

経営

企業価値とは、会社全体の経済的価値のことをいいます。
しかし、具体的に会社のどの部分を見て『企業価値』としているかは、よく分からないという人もいるでしょう。企業価値とはさまざまな計算法によって導き出される数値で表すことができます。

本記事では企業価値の定義から、企業価値の計算方法、企業価値を高めるメリットや高め方を解説します。自社の企業価値を知りたい、価値を高めたいと考えている方はぜひチェックしてみてください。

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企業価値とは

企業価値とは、その企業全体の経済的価値のことを指します。具体的には、企業の事業活動からもたらされる事業価値に、投資有価証券や遊休資産と言った非事業用資産や、貸借対照表には表されない無形資産(ブランド力や人的資源、知的財産など)の価値も含めます。

企業価値はいわば「企業の値段」です。会社の経済的な価値を金額で示し、M&Aや投資においての根拠や基準となります。企業価値の表現方法にはさまざまな考え方があるため、いくつかの算定の方式が存在します。

企業価値と株主価値の違い

株主価値とは、企業価値のうち株主に帰属する価値、つまり「企業価値のうち、株主の取り分」のことをいいます。

多くの企業は債権者に返済すべき債権を抱えているため、企業価値=株主価値(株主の取り分)とはなりません。会社全体の価値(企業価値)が100だとすると、債権者が20の貸し付けをしていれば、債権者に帰属する価値は20、残りの80が株主に帰属する価値となります。

株主価値を式で表すと以下のようになります。

◆株主価値=企業価値ー負債価値(債権や他人資本、有利子負債などの借入金)

企業価値と事業価値の違い

事業価値とは企業の事業活動から生み出される価値を指します。事業や資産、負債のほか、その事業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの合計です。なお、「資産」には数値化しにくいのれん(ブランドやノウハウ、人的資源など)や、無形資産・知的財産なども含まれます。

一方で、現預金や遊休地、投資目的の有価証券など事業外の資産は含まれません。事業価値は企業価値の一部であり、企業価値=事業価値ではないことに注意しましょう。

事業価値を式で表すと以下のようになります。

◆事業価値=企業価値-事業外の価値(非事業用資産)

企業価値の計算方法

企業価値の計算方法はいくつかありますが、一般的には「コスト・アプローチ」「インカム・アプローチ」「マーケットアプローチ」の代表的な3つに分けられます。

コスト・アプローチ

コスト・アプローチとは、企業の保有資産を基準に企業価値を算出する方法です。貸借対照表の純資産をもとに算出されるため、客観的かつ明確な計算方法といわれています。価値を算定しにくい中小企業のM&Aで採用されるケースが多いです。

コスト・アプローチには、簿価に基づいて計算を行う「簿価純資産法」と資産と負債を時価で評価して計算を行う「時価純資産法」の2つがあります。

簿価純資産法

帳簿に計上された資産と負債の価額に基づき、計算を行います。

資産から負債を差し引くだけで計算でき、数値の客観性が保たれるメリットがありますが、簿価と時価で乖離が大きい場合には、適性な価値が算出できないとして、この計算が実際に用いられてるケースは稀です。

時価評価をしても大きな差異がない場合や、時価評価のコスト(鑑定費用等)をかけられない場合には有効な手段とされています。

時価純資産法

時価評価した純資産額に基づき、計算を行う方法です。

帳簿上の資産や負債を時価へ修正するため、現時点での価値を考慮した適性な純資産額を算出できます。ただし全ての資産を時価評価することは現実的に困難なため、主にこの計算の対象となるのは価値の変動しやすい不動産や有価証券などです。

保有資産を処分して負債を支払う清算場面で利用されることの多い計算法です。

一方で、この計算法では既存の資産及び負債しか考慮されていないため、企業の持つ将来的な収益力や利益予想は反映されないデメリットがあります。

インカム・アプローチ

インカム・アプローチとは、企業の将来的な収益力に注目し、企業価値を算定する方法です。過去の業績とは関係なく、将来得られる収益やキャッシュフロー予想に基づき企業価値を計算します。特に、将来、成長が期待されるベンチャー企業に適したアプローチです。

インカム・アプローチには「DCF法」「収益還元法」「配当還元法」の3つがあります。

DCF法

DCF法とはインカム・アプローチの中では最もポピュラーな方法です。

企業が将来獲得すると予想される収益を、適切な割引率で現在価値に割り引いて企業価値を計算します。(※「現在価値に割り引く」とは、金利やリスクなどを考慮したうえで、将来得られる収益を現時点での価値に換算することを言います。)

大企業や上場企業のM&Aでよく用いられています。

収益還元法

収益還元法とは企業が将来生み出すであろう収益を現在の価値に変換して企業価値を算出する方法です。

平均収益÷資本還元率(自己資本利益率や国債の利回りを使う)といった簡易な式で計算できます。
ただ、計算は毎年の収益が同額であるという仮定のもとで行われるため、事業価値を算出する方法として精度は低いと言えるでしょう。

また、ベンチャー企業のように収益の変化が大きい企業の価値算定には適しません

配当還元法

配当還元法とは過去の配当額から将来の配当額を予想し、それをもとに企業価値を計算する方法です。一株当たりの配当金を、一定の割引率で現在価値に換算します。

配当金のみを評価の対象としており、企業の財産をトータルで評価できない上、配当金の額も恣意的に変えられることから、あまり厳密な方法とは言えません。

株主の多い上場企業では予想が困難なため、非公開企業の企業価値を算出する場合に用いられます。

マーケット・アプローチ

マーケット・アプローチとは、企業価値を同業他社や株式市場での株価などと比較し、算定する方法です。企業価値を企業単体で見るだけでなく、市場環境といった外部要因も織り込んだ価値を算定できます。非上場企業では、類似取引事例を参照して計算する場合もあります。

マーケット・アプローチには「類似会社比準法」「類似業種比準法」「市場株価法」の3つがあります。

類似企業比準法

類似企業比準法は非上場企業のM&Aで使われる算定方法です。非上場企業は市場での価値がないため、類似する上場企業や目標とする企業の時価総額から計数を算出して計算に用います。

しかし乗じる係数により企業価値が左右され、また、どの企業を類似企業とするかによっても結果が大きく変わるため、算出根拠が的確でないというデメリットがあります。

手早く価値を算出したいときに用いられるのが一般的です。

類似業種比準法

類似業種比準法とは、業種が似ている企業の財務指標を使う算定方法です。

相続時の株式評価用の計算方法で、国税庁が財産評価のために用います。それ以外の用途には適しません。株価等を考慮した国税庁指定の統一的な評価法により算定されます。

市場株価法

市場株価法とは、株価を基に上場企業の企業価値を算定する方法です。非上場企業の価値算定には適しません。

短期的な株価の上下といったマーケットの影響を排除するため、1〜6ヶ月程度に渡り日々の終値の平均を取って、これを評価額とします。株価は公開市場で取引される客観性・透明性の高い指標といえるため、企業の公正な価値として比較に用います。

とはいえ、出来高が極端に少ない銘柄や、騰落の激しい銘柄の算定には適さないでしょう。

企業価値を高める方法

ここではどうすれば企業価値を高められるか、その方法を紹介します。

事業収益性の向上

企業価値を高める方法として最も有効な手段は収益力を向上させることです。企業価値を高めようと思ったら、まず始めに取り掛かるべき施策でしょう。

現状の経営戦略を見直し、営業力や商品開発力の向上による売上アップのほか、生産管理や工程の見直し、アウトソーシングによるコスト削減など摂るべき手段は多くあります。収益拡大のために出来ることは何か、あらゆる角度からビジネスモデルを検証することが重要です。

投資効率向上

経営戦略の見直しの次は、遊休設備や活用していない不動産、在庫などを見直し、必要であれば売却して手放すことも検討しましょう。キャッシュフローを生み出さない固定資産を売却することで、浮いた資金を再び投資に利用できるメリットがあります。

事業の経営に貢献しない「ムダな資産」は持たず、必要な資産を有効活用することが投資効率を向上させ、企業価値を高めることに繋がります。

例えば、近鉄グループホールディングスは2021年3月25日に保有する8ホテルを投資ファンドに売却すると発表しました。固定資産である不動産を売却して資金を調達し、ホテルの運営に経営資源を集中。経営効率を高める戦略です。

財務状況の見直し

財務の改善も企業価値を向上させる施策の一つです。銀行や株主から調達している資金などを見直し、財務の最適化を行います。財務の最適化には「財務レバレッジ」「負債の節税効果」の2つの手法が挙げられます。

「財務レバレッジ」とは、社債や借入金などの他人資本をてこ(レバレッジ)のように活用することで収益率を向上させる方法です。

中小企業庁によると、日本企業の全産業の財務レバレッジの平均値は2.4倍。日本を代表する企業であるソフトバンク・グループの2021年3月末時点での財務レバレッジは4.5倍で、平均よりも倍近く高くなっています。しかし、2021年3月期の売上高は前期比7.4%増の5兆6,000億円となり、力強く成長しています。

ソフトバンクグループは、成長投資と財務の健全性を両立させるため、調整後EBITDA(営業利益+減価償却費及び償却費(固定資産除却損含む)±その他の調整項目)を分母、純有利子負債を分子とするネットレバレッジ・レシオを経営指標に導入しています。2021年3月末時点でネットレバレッジ・レシオは2.3倍。ソフトバンクグループは2倍台にコントロールすることで財務の健全性を保っているのです。

借入金と効率的な経営は表裏一体の関係があり、それをいかにコントロールするかが重要です。
財務レバレッジが高く、他人資本の割合が大きいということは資金の返済や利息の支払いに追われているとも考えられますが、自己資本だけで経営している会社に比べ積極的な経営をしていることの証とも言えます。

「負債の節税効果」とは、税務上、借り入れた資金の利息は損金として算入できるため、利益から利息を差し引いた額に課税され、利息で支払う金額が多いほど税金の支払が免除されるという税法上の施策です。

節税で得た余剰資金は企業の利益と考えられるため、これも企業価値を高める方法の一つとして利用されています。

無形資産の把握・活用

無形資産とは、物としての実態がない資産を指します。例えば、会社の持つ技術特許やノウハウ、従業員のスキルなどがこれに当たります。有形の資産だけでなく無形資産の活用も企業価値の向上に繋がります。

昨今では、企業と従業員の信頼の強さを表す「従業員エンゲージメント」という用語が話題になっています。従業員の企業に対する貢献意欲は企業の利益と密接な関係があるという考え方です。

こうした従業員の意欲も無形資産と捉え、人材の育成や職場環境の整備を行うことも、無形資産の活用法の一つといえるでしょう。

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企業価値を高めるメリット

ここでは企業価値を高めるメリットを解説します。

株価が上昇する

企業価値が高いということは、すなわち「収益が安定している」「企業経営が良好な状態にある」「事業運用が的確」ということの証拠でもあります。

上場している企業であれば企業価値の向上は株価の上昇に繋がり、株価の上昇が投資家の増加やさらなる株価上昇に繋がるという、よい好循環を生み出す可能性があります。

M&Aを有利にする

企業価値を高めることで、M&Aを有利に進められるというメリットもあります。
企業価値が高いほど、売却の際に高額を提示でき、また自社に有利な条件で交渉を進められるなど、納得感の高いM&Aを行う事が可能です。

また、敵対的買収から自社を守る上でも有効な手立てといえます。

倒産リスクの低下

企業価値の向上は、倒産リスクの低下にも繋がります

金融機関は、企業の将来性や成長性を考慮した上で融資を行うことからも、融資の可否や金額を左右する重要な判断材料です。企業価値が高ければ高いほど収益力が高く、金融機関から見て信用のおける企業と言えるでしょう。

投資家に企業価値を知ってもらうためには発信が重要

企業価値とは会社の持つ有形資産や資本の大きさだけを指すものではありません。「のれん代」のように企業の持つ知名度やブランド、取引先との関係といった無形のものも資産と見なされます。

そうしたことから考えれば、IRによって企業価値を発信し、投資家とのコミニュケーションを図ることも、ひいては企業価値を高める方法の一つと言えるかもしれません。

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