IR活動とは?その目的や具体例、活動の効果を高めるポイントも紹介

経営

IR活動とは、企業が株主や投資家に対し、自社の業績や経営方針などの情報を提供することです。

昨今、IR活動は多くの上場企業において経営戦略と同様に重視されるようになりました。株主との関係は、事業拡大に必要な資金調達にも影響を与えるためです。上場企業は、これまでのように企業説明会や株主総会での説明はもちろん、独自の投資家ミーティングやIRを意識した自社ホームページを作成する企業もあります。

本記事では、そもそもIRとは何か?どんな目的で行われるのか?具体例や活動を行う際のポイントを紹介します。「IR活動が具体的にどんなものなのかを知りたい」「どんなことに注意してIR活動を行えばよいか分からない」という人はぜひ参考にしてみてください。

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IR活動とは?

「IR活動」のIRとは「Investor Relations(インベスターリレーションズ)」の略で、日本語では「投資家向け広報」と訳されます。機関投資家や株主に対して、自社の経営・財務状況や企業活動の実績・将来の見通しなど投資の判断に必要な情報を提供します。

近年はそれだけでなく、社会貢献活動・環境保護活動等、非財務状況を公開する企業も増えています。

IR活動の具体的な例としては企業説明会・決算説明会・HP上での情報公開・レポートの発行等がありますが、工場・施設の見学会など独自のIR活動を行う例もあります。IRを積極的に行う企業は自社の事業活動について投資家に公正な情報を提供し、説明を行うことを通して投資家に「健全に運営されている・信頼できる会社」といった印象を与えます。

外国人投資家の増大や日本企業の海外での資金調達が進んだことから、情報開示やIRに対する意識が高まり、重要視されるようになってきました。日本では1990年代後半からIR活動に積極的に取り組む企業が増えています。

日本IR協議会「第29回 IR活動の実態調査(2022年6月)」では、回答した全企業のうちIRを実施していると回答した企業は96.8%、独立した専任部門でIR活動を行っていると回答した企業の割合は49.1%でした。どちらの割合も年々上昇しており、企業にとってIRの重要性が増していることが伺えます。

企業がIR活動を行う目的

では企業がIR活動を行う目的は何でしょうか?

有益なフィードバックを得られる

IR活動の目的の一つに、会社にとって有益なフィードバックを得られるというものがあります。

企業説明会や決算説明会は、企業が自社の経営・財務情報を発信する場であると同時に、投資家が企業に様々な意見を発信し、双方向のコミニュケーションが成立する場でもあります。

自社の経営方針がどう見られ、株価や事業活動にどんな影響を与えたか、マーケット当事者から直接フィードバックを得られる機会は貴重です。上場企業ならではのメリットと言えます。IR活動によって自社に対するマーケットの正当な評価を知り、有益なフィードバックを経営に生かすことで、企業価値の向上・株価の上昇も期待できるでしょう。

投資家との良好な関係を構築

IR活動へ積極的に取り組むことは、投資家の信頼を得、良好な関係を構築することに繋がります

企業が自社の経営の透明性を示すため、経営・財務状況や将来の見通しについて情報提供をしたり、説明会などで投資家からの質問や助言に答えたりするといったコミュニケーションに対する真摯な姿勢は投資家の理解や信頼を深めます。

業績や経営方針・企業活動への理解を得られ信頼感が深まれば、投資家は短期的な株価の上下だけで企業を判断せず、中長期的な視点で会社の株価を支える「良い投資家」となるでしょう。

また、透明性が高く投資に値する企業であるとアピールすることは既存の株主にとってだけではなく、これから投資を始める新規投資家にとっても魅力的に映ります。既存の投資家との良好な関係を築くことは、新規投資家へのアプローチにもなり、新たな資金調達も可能にするでしょう。

企業価値の向上

IR活動によって、自社の社会貢献活動や環境保護活動の取り組みを発信することは、市場において企業の価値を高め、株価を押し上げる効果が期待できます。

IRで公開する情報には経営・財務状況だけでなく、社会貢献や環境保護活動への取り組みといった非財務情報も含まれます。

近年、企業には事業活動を通して株主や取引先、社員にその利益を還元するだけではなく、CSR活動やSDGsへの取り組みを通して社会課題を解決したり、社会的責任を果たしたりといった役割も求められています。

機関投資家の中にはESG投資と言い、環境に配慮しているか・社会に貢献しているか・健全な企業経営をしているかという観点で投資先を選別する動きも広まっています。

企業がIR活動によって自社の社会的価値を広く知らしめることで、市場での評価がアップし、資金調達がしやすくなるというメリットもあるのです。

広報とIRの違いとは?

では、企業において広報とIRの違いは何でしょうか?
この2つは似ているようですが、対象や目的等に違いがあります。

対象

広報とIRについて、大きな違いの一つは誰に向けて発信するかというところです。

先に挙げたようにIRは「Investor Relations(インベスターリレーションズ:投資家向け広報)」と訳されるとおり、情報発信の対象は機関投資家や個人投資家といった株主です。

この中には既存の株主だけでなく、これから投資をしようと検討している潜在的な株主も含まれています。

広報はPRとも呼ばれ、「Public Relations(パブリックリレーションズ)」と指すとおり、株主・顧客・取引先・社員といった利害関係のある人だけでなく、直接の関係がない人も含め広く社会全体を対象として、情報発信や対話を行います。

狙い

IRの狙いは、機関投資家や個人投資家といった株主に株を保有してもらい、事業活動の継続的なサポートや、事業への資金を獲得することにあります。そのため、IRでは事業や財務状況に対する投資家の説明責任に加えて、提供する情報には公正さが求められます。

一方で広報は、テレビなどのマスメディアやWebメディアを通して企業やブランド・商品・サービスなどのイメージアップや認知度アップを目的としています。社会一般に広く情報を発信することから、その内容には誰でも理解できるような分かりやすさやキャッチーさが必要とされるでしょう。

担当者に求められるスキルや知識

IR担当者には、事業内容や経営方針、財務状況等自社に関する知識のほか、投資や株式市場・法令に関する幅広い知識が求められます。

具体的な仕事としては会社の業績や事業の見通しを株主に開示するため、決算資料を作成したり、開示した資料に関する投資家からの質問に対応したりすることなどが挙げられます。

自社の状況や業界動向、市況などを広い視野で捉え、理解できるスキルや知識を有していなければIR担当の仕事をこなすことは難しいでしょう。

一方、広報担当者には自社の事業内容・商品知識に加えて、メディア対応・SNS運用スキルが求められます。

近頃は自社のSNSを活用して一般の消費者とコミニュケーションを取ったり、ニーズやトレンド分析を行ったりする企業も。また、社内の担当者と社外のメディア関係者の橋渡し役となることも多いため、対人間の折衝能力も必要です。

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高評価を受けるIR活動のポイントとは?

このパートでは、投資家から高評価を受けやすいIR活動のポイントを紹介します。
自社のIR活動を行う際の参考にしてみてください。

経営トップが積極的であること

経営トップ自らが表に立ち、事業戦略や経営目標を示すことで、会社に対する株主の信頼感は一段と高まります。

継続的、積極的にIR活動に取り組み、投資家とのミーティングなどを通して対話し説明責任を果たそうとする姿は株主に好印象を与えるでしょう。

用意された原稿や資料を読み上げるだけではなく、株主からの質問や意見に対して、自らの言葉で語れる経営トップはIR活動を行う上で重要な存在です。

自社にフィードバックの仕組みがある

IR活動で得た情報や意見が経営に反映されるためにファードバックの仕組みがあることも重要です。

説明会や資料などで情報を発信し、投資家からの意見を聞いても、それを経営の改善に役立てていなければIRの意味がありません。

企業にIRを有効活用する気がない、企業価値を向上させる気がないことは、賢い投資家であれば見抜いてしまいます。

もし、自社にフィードバックの仕組みがないのなら、早急に整備する必要があるでしょう。

投資家との対話・コミュニケーションを大切に

説明会は一方的なものではなく、投資家との対話・コミュニケーションが可能な双方向形式が望ましいと言えます。

もちろん、緻密で詳細な資料を用意して説明を尽くすことも重要ですが、やはり株主や投資家が注目しているのは、資料で説明されていない事柄に対して、質問や意見を投げかけたときに企業がどう答えてくれるかという点です。

対応如何では企業のイメージアップ、またはイメージダウンにも繋がるでしょう。

IR担当者には投資家との対話やコミュニケーションの場は確保しつつも、予期せぬ質問に対して適切に対応する能力が求められます。

情報が充実していて分かりやすいこと

IR活動では、企業HPの情報や説明資料は投資家の求める情報を網羅し、詳細・明快に記載しましょう。

自社HP上でIR情報を公開している企業は多いですが、見にくかったり情報が探しにくかったりして、本来の役割が果たせていないものも少なくありません。

自社のHPが以下の特徴に当てはまっているか確認してみましょう。

  • 知りたい情報がすぐに見つかる構成になっている
  • 資料は文章だけでなくイラストや図解があり、分かりやすくなっている
  • 専門用語や業界用語の注釈があある
  • 説明会などの音声・動画ファイルがサイト内にある
  • 個人投資家向けに情報を分かりやすくしたIR情報ページがある

企業の具体的なIR活動事例

このパートでは、日本IR協議会の「IR優良企業賞2021」の大賞に選出された2社のIR活動事例を紹介します。IR優良企業賞とは、会員企業の中から優れたIR活動を行っている企業を選定し、毎年1回発表しているものです。

2005年からは優良企業賞の受賞が3回目以上となる企業を「大賞」として表彰しています。

J・フロントリテイリング

「大丸」「松坂屋」「PARCO」などを展開しているJ・フロントリテイリング。

全社売上のうち、百貨店・ショッピングセンター事業が占める割合はおよそ73%です。コロナ禍で業績が厳しくなる中、ネガティブな材料も含めて積極的な情報開示姿勢を示し続けたことが高評価に繋がりました。

投資家の声を経営に生かすべく、半期ごとに経営トップが直接投資家と対話する場を設けています。経営トップの丁寧な説明姿勢も好印象です。

(2020年・2016年優良企業賞受賞)

三井物産

経営トップがIRを重視し、市場や投資家を意識した経営や財務戦略を行っています。オンラインミーティングでも対面開催と変わらぬ丁寧かつ適切な対応が高い評価を得ています。CEO・CFO・執行役員が参加する「インベスターデイ」など投資家との積極的な対話姿勢も見られます。

IR活動により資金配分に関する考え方を投資家と共有できており、経営計画や株主還元についての説明には透明性と説得力がある点も高評価。

(2019年・2018年・2008年優良企業賞/2014年特別賞 受賞)

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IRは自社の営業活動。単なるPR活動ではない

IRはその活動如何で、会社の価値を高めることもあれば損なう可能性もあります。

公正な情報開示や投資家との対話など、企業のIR活動の取り組みへの評価は、投資家の目を通して株価にも反映されます。IR活動は単なるPR・広報活動ではなく、自社の営業活動であり経営戦略のひとつとも言えるでしょう。

企業にはツール等を活用した効果的なIR戦略が求められます。「IR-navi」は投資家のターゲティングから株主状況の把握、IR業務の効率化まで、IR活動における円滑なコミニュケーションを可能にするツールです。IRイベントの告知や出欠管理をシステムでサポートし、投資家へのアプローチを助けます。

IRイベントを効率よく行いたい、IR業務の負担を少しでも減らしたいと考えている企業におすすめのツールです。

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