昨今、NISAの普及等により個人株主は年々増加しています。その中で注目を集めているのが株主優待制度。株主優待制度は個人株主からの人気が高く、株主を増やすため制度を新設する企業もあるほどです。
本記事では株主優待制度の概要や、メリット・デメリットを解説。また特に人気の高い優待を行っている企業事例を紹介します。優待制度の導入を検討している、または優待制度をもっと充実させたいとお悩みの企業様におすすめのサービスも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
株主優待制度とは
株主優待制度とは、自社の株を保有する株主に対して会社が商品やサービスなどの優待品を贈ることを言います。年に1~2回の提供が一般的で、制度の導入は企業の任意とされています。配当金以外のリターンを得られることから、株式投資の楽しみの一つとして、特に個人投資家から支持されている制度です。
優待品の内容は自社製品や自社サービス以外にも、米や金券、カタログギフトなどバリエーション豊富。安定株主の増加を狙って商品やサービスを豪華にしたり、株数や保有年数に応じて優待内容を優遇する会社もあります。
2021年時点では上場企業約3,800社のうち、約1,500社が優待制度を導入しており、実施社数は年々増えています。
株主優待制度のメリット・デメリット
このパートでは株主優待制度のメリット・デメリットについてそれぞれ説明します。
メリット
配当や値上がり益のほかに、企業から金券や品物が送られてくる優待制度は投資家にとってはお得な制度。けれど企業の側にも株主優待を行うメリットがあります。ここでは、その主なものを解説していきます。
安定株主を確保できる
企業は株主優待を行うことで、長期に渡って株を保有し続ける安定株主を確保できます。
優待を目的に株を保有している投資家は、株価や企業の業績が下がっても簡単には株を手放しません。多少の値動きがあっても、優待内容に魅力を感じている限り、株を保有し続ける傾向があります。機関投資家や売買益狙いの投資家と違い、目先の株価動向によって売買を左右されない安定株主は企業にとってありがたい存在でしょう。
また、もし株価が下がった場合でも投資家にとっては安く優待を手に入れられる(優待利回りが上がる)チャンスとなるため、下値で買いが入りやすくなるメリットもあります。株価変動を抑え、安定株主を確保しておきたい企業にとって優待制度は有効な方策といえます。
自社製品の宣伝にも
株主へ送られる優待品に自社製品を採用すれば、自社製品の宣伝ができます。自社製品を送り、ファンになってもらえれば株主を顧客(ユーザー)として取り込めることもあるでしょう。特に株主が顧客となりやすい外食系産業や小売業の優待品では、自社商品やサービスのクーポン、割引券などが多い傾向です。
また自社製品やサービスを優待とすることで、金券等と比べコストを抑えて優待品を提供できるメリットもあります。製品やサービスそのものでなくても、「製品を2割引で買えるクーポン」や、「サービスを1割引で提供するクーポン」を採用している企業もあります。
優待内容が投資家の間で話題になれば、それがそのまま自社の商品やサービスの知名度アップに繋がるでしょう。株主優待は企業の売上向上にも貢献しうる制度なのです。
株主を増やせる
株主優待は株主を増やしたい企業にとっても、良い制度です。特に個人投資家の中には優待品を目的に株を保有する人はもちろん、株主優待に興味を持ったことがきっかけで株式投資を始める人も多くいます。
日本証券業協会の「平成30年度 証券投資に関する全国調査」では、株式の購入理由として「株主優待が受けられる」と回答した投資家は全体の36.2%にのぼります。これは最も多い「配当がもらえる」の52.3%に次ぐものです。
優待を行っている会社は、数万〜十数万の投資で優待が受けられるように設定しているところが多いです。そのためNISAとも相性がよく、優待株の人気を高める要因のひとつとなっているようです。
デメリット
ここまでは、株主優待制度のメリットについて説明してきました。株主優待制度は会社にとっても株主にとってもWin-Winの制度のように見えますが、実はデメリットもあります。このパートでは主なデメリットについて解説していきます。
株価下落リスク
近年では、業績悪化や機関投資家からの圧力もあり、株主優待を廃止したり改悪したりする会社も増えています。そうなると、優待目的の個人投資家による売りが株価を下げる恐れも。優待制度を手厚くしている会社ほど、株価下落リスクは高まります。
優待制度廃止による株価下落について、2つの事例を紹介します。
事例①日本たばこ産業(JT)
2022年2月14日に株主優待の廃止を発表。100株で2,500円相当の優待品が受け取れ、配当利回りも6%と高かったことから個人投資家に人気でした。株主数は60万人を超えていたと言われています。優待廃止に加えて年間配当金が減額した影響もあり、一時株価は1.7%ほど下落しました。
事例②オリックス
2022年5月12日に株主優待の廃止を発表。100株でご当地グルメや雑貨など好きな商品を受け取れるカタログギフト「ふるさと優待」が人気でした。優待効果で個人株主は2014年の4.5万人から2022年には75万人にまで増加していました。前日に発表された業績予想は堅調でしたが、優待廃止のサプライズにより株価は終値で4日続落しました。
費用がかかる
次に企業側のデメリットとして考えられるのは、株主優待にかかるコストの問題です。自社製品の詰め合わせや少額のギフトカードの贈呈なら、株主1人に対するコストは抑えられそうですが、株主が数万人単位ともなると優待実施のコストは莫大なものになります。
先に事例として挙げたJTであれば、優待は2,500円相当の品ですが60万人の株主に用意するとなると、それだけで15億円の費用がかかります。(全ての株主が最低100株を保有していると考えた場合)仕入れ値がもう少し安かったとしても、梱包や配送等があることを考えると、膨大な費用がかかることに変わりはありません。
数万〜数十万単位の株主を擁する企業は、優待制度によるコスト増を警戒しておく必要があるでしょう。昨今では優待制度を廃止したり、優待を長期保有株主のみに絞ったりして優待コストを削減し、配当金に力を入れる企業も増えています。
優待を希望しない投資家も
株主優待制度は投資家にとってはお得な制度ですが、中には、株主優待制度を希望しない投資家もいます。それは、いわゆる機関投資家と呼ばれる人たちです。
配当金や株価の値上がり益が目的の機関投資家にとっては、自社製品の詰め合わせや商品券はあまり魅力的ではありません。優待制度をいくら充実させても、この層の投資家には響かないでしょう。
また、実は優待制度は日本独自のものです。事実上、個人投資家の優遇制度であることから、特に外国人機関投資家からは「公平な利益還元に反する」として不評です。上場企業にとって日本市場の取引の6〜7割を占める外国人機関投資家の動向は見過ごせません。こうした優待廃止圧力の存在も注視しておく必要があります。
各社の株主優待制度は?
このパートでは株主優待制度を実施している企業の優待内容を紹介します。
優待内容の主なもの
優待品はお米、金券や割引クーポン券といった定番のものから、ユニークな製品やサービスなどバリエーションに富んでいます。自社製品のほか自社工場見学や購入代金からのキャッシュバック、好きな商品を選べるカタログギフト、スポーツイベントへの参加抽選券、寄付を選べる優待もあります。
食品メーカーであれば自社製品の食品詰め合わせセット、航空会社なら運賃の割引券、住宅メーカーや建設会社なら住宅販売代金や施工費から割引を受けられるなど、その会社ならではの個性が光る優待品も人気です。
上場企業の優待内容の割合
大和インベスター・リレーションズの調査では優待実施企業1,507社のうちで優待内容を分類したところ、以下の結果となりました。(複数回答)
- 飲食料品/613社・・・お米、自社製品(食品製造企業)など
- その他/500社・・・寄付、自社サービスの提供、自社工場見学会など
- 買い物券・プリペイドカード/498社・・・QUOカード、ギフト券など
- 日用品・家電/380社・・・カタログギフト、自社製品(機械機器製造企業)など
長期保有株主を優遇する制度も
安定して株を保有する株主を増やしたい意図から、長期保有株主を優遇する制度を設ける企業もあります。
例えば、製品詰め合わせやカタログギフトなら製品の数を増やしたり高価にするなどしてアップグレードしたり、キャッシュバックなら返金率を高める等の方法があります。
「長期保有」の定義は会社が自由に決められます。1年や3年以上を長期としている会社もあれば5年以上というところも。株主優待を求める株主はそもそも長期保有を前提としていることが多いので、この優遇は株主優待制度と相性が良いと言えます。
株主に人気の株主優待制度
このパートでは株主に人気の優待を行っている企業の例をいくつか取り上げます。どれも個人投資家に人気の高い優待株ばかりです。ぜひ参考にしてみてください。
①イオン
小売、デベロッパー、金融、サービスなど多様な事業を持つ総合グループです。287社の子会社と、連結営業収益は8兆円規模。日本国内だけでなく、中国・ASEAN地域にも展開しています。
株主優待カード(イオンオーナーズカード)特典
割当回数:年2回
買い物の際に株主優待カード(イオンオーナーズカード)を提示することで、持株数に応じた返金率でキャッシュバックを受けられます。(半期で購入金額100万円までが上限)
- 100株以上→3%
- 最高3,000株以上で7%まで
長期保有優待特典(年1回)
上記のキャッシュバックに加えて、1,000株以上を3年以上継続保有している株主に対し、長期優遇特典としてイオンギフトカードを進呈します。
- 1,000株以上→2,000円
- 最高5,000株以上で10,000円まで
②KDDI
個人向けには「au」ブランドで通信サービスを提供しており、法人向けには5G、IoTサービスを提供しています。日本国内に盤石な基盤を築き、ミャンマーとモンゴルでも携帯事業のシェアNo.1を誇ります。
au PAY マーケット商品カタログギフト
割当回数:年1回
通販サイト「auPAYマーケット」からグルメやクーポンなど好きな商品を1点選べるカタログギフトが贈られます。
- 100株以上→5年未満保有で3,000円相当の商品(山野井ロースハムとソーセージセット、十勝四角いミニチーズケーキなど)
- 1,000株以上→5年未満保有で5,000円相当の商品(千本松牧場アイスクリームセット、デリシャエール氷温熟成牛 ポンドグリルステーキなど)
そのほか、体験型商品や寄付も選べます。(ホテル・旅館、キッザニア、デリバリークーポン、基金へカタログギフト相当額の寄付など)
長期保有優待特典
100株以上を5年以上継続保有している株主に対し、長期優遇特典としてカタログギフトの内容がアップグレードされます。
- 100株以上→5年以上保有で5,000円相当の商品
- 1,000株以上→5年以上保有で10,000円相当の商品(山形牛ローストビーフ、松坂牛しゃぶしゃぶ用など)
③すかいらーく
ガストをはじめ、洋食、中華、和食、イタリアン、回転寿司など規模と多様性を生かした事業を行っています。国内では3,000店舗以上を展開する大規模フードサービス企業です。
株主様ご優待カード
割当回数:年2回
飲食代金より割引を受けられる優待カードが贈られます。(500円単位で使用可能)
- 100株以上→2,000円分
- 最高1,000株以上で17,000円分まで
④オリエンタルランド
東京ディズニーリゾートの開発・運営会社。米ディズニーと業務提携しており、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの経営、運営を行っています。
1デーパスポート
割当回数:年2回
「東京ディズニーランド」または「東京ディズニーシー」で利用可能な1デーパスポートが贈られます。
- 100株以上→1枚
- 最高2,400株以上→6枚まで
※東京ディズニーリゾート40周年記念
上記に加え、2018年9月末~2023年9月末まで5年間継続保有で1デーパスポートが追加進呈されます。
- 100株以上・・・4枚追加で進呈
⑤JAL
国内、国際航空運送事業を営んでいます。連結子会社5社と関連会社1社を擁し、日本を代表する航空会社です。日本で初めて設立された航空会社としても有名。
各種割引券
割当回数:年2回
株主割引券(国内線50%割引・3月/9月末)、旅行商品割引券(7%または5%割引)が贈られます。
- 100株以上→株主割引券1枚+旅行商品割引券1枚(3月末のみ)
- 最大100,000株以上→株主割引券203枚×2+旅行商品割引券(3月末、9月末)
以降、100,000株超過分1,000株ごとに株主割引券、旅行商品割引券が1枚ずつ追加されます。
長期保有株主優待制度
上記に加えて、一定の株数を3年保有している株主には基準日ごとに株主割引券が追加贈呈されます。
- 300株以上→1枚
- 1,000株以上→2枚
- 10,000株以上→3枚
⑥ANAホールディングス
ANA、Peach Aviationの航空事業を中心に、旅行・商社・航空関連事業を行っています。国内では売上高、座席キロ、旅客キロ、旅客数においてNo.1を誇り、日本の航空業界を代表する企業です。
株主優待番号ご案内書
割当回数:年2回
株主優待番号1つにつき、割引運賃で国内線1区間に搭乗できる株主優待番号案内書を発行。(ANA国内全路線が対象)
- 100株以上→1枚
- 最高100,000株以上で254枚 + 100,000株超過分は800株毎に1枚まで
ANAグループ優待券
優待クーポン 18枚の入った冊子を1人1冊発行します。IHG・ANA・ホテルズグループジャパン、空港内売店・免税店での買い物、国内・海外ツアー商品で割引を受けられるほか、優待料金でゴルフのプレーも可能。
- 100株以上で1冊
株主専用サイト特典
株主限定で機体工場など施設見学会の申込みができます。(抽選による)
- 100株以上
カレンダー
半年以上株式を継続保有していると壁掛け型カレンダーまたは卓上型カレンダーのいずれかが贈られます。
- 100株以上・・・1部
株主優待制度を上手に使ってファンを増やそう
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