会社名 : 株式会社エイジア
証券コード: 東証第一部 2352
代表者 : 代表取締役社長 美濃 和男(みの かずお)
略歴 : 1989年に明治大学を卒業後、株式会社みずほ銀行を経て、2005年にエイジアに入社、取締役 経営企画室長に就任。2009年に代表取締役社長に就任。
所在地 : 東京都品川区西五反田7-20-9 KDX西五反田ビル4階
設立 : 1995年4月
事業 : マーケティングコミュニケーションシステム「WEBCAS」シリーズの開発・販売、メールコンテンツやWebアンケートのコンサルティング・制作、ウェブサイトおよび企業業務システムの受託開発
資本金 : 3億2,242万円
URL :https://www.azia.jp/
エイジアは「eコマース売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」をビジョンに掲げ、メール配信システムを中心に企業と消費者をつなぐコミュニケーションシステムを提供している会社で累計4,000社以上に御採用いただいています。主力のアプリケーション事業では粗利率約70%の高収益体質で、サブスクリプションモデルのクラウドサービスは事業売上の80%を構成し安定的に成長するビジネスモデルで10期連続増収を実現し、今後も毎年2桁成長をしていく計画です。昨年は当社顧客の主力市場であるEC事業を買収し子会社化しました。キャッシュが豊富で今後もM&A等の事業成長に投資を積極的に行います。
創業の経緯
株式会社ウィルズ(以下、ウィルズ):最初に、創業から今までの経緯をお伺いします。
美濃和男氏(株式会社エイジア代表取締役:以下、美濃):当社の創業は、1995年です。1995年といえばまだインターネット黎明期。インターネットという、何か「ものすごいもの」がやってきた。何から始めていいかわからないけど、とにかくすごいことになりそうだ。そういう感覚のもと、先代の社長が創業した会社です。
最初はホームページの制作から始めて、その後WEB系の受託開発をやって、その受託開発を行っている中からヒントを得て、メール配信の自社製品ソフトウェアをつくって売り出した。そのメール配信システムがヒットして、波に乗って売上を伸ばして今日に至る、そういう歴史です。
ウィルズ:受託からビジネスのネタを掘り起こして、そこで広げていったというところですね。確かにその時代、メールマーケティングがこれから全盛のいいタイミングだったと、まさに時代を捉えていたという感じですね。
美濃:そうですね。タイミングもピッタリだったと思います。
ウィルズ:御社の製品、サービスの概要を教えて頂けますか。
美濃:インターネットを活用して売上を高めたい、顧客満足度を高めたい、という企業のニーズに応えるソフトウェア・システム「WEBCASシリーズ」を、自社で企画、開発から販売まで行っています。
1番の売れ筋は、メールのワン・トゥ・ワン配信、つまり、相手によって内容を変えて最適化したメールを同時に大量に送ることができるメール配信システムです。
2番目がアンケートのシステムです。この二つで大体8割くらいの売上を占めています。
引用元:株式会社エイジア2020年3月期 第1四半期 決算補足資料
経営戦略について-ビジネスモデル-
ウィルズ:競合やライバルはいますか?
美濃:成長領域ですので、競合する会社はたくさんあります。小さな会社も含めると、100社から200社くらいはあると思います。その中でライバルと位置づけているのは、上場している会社だと、パイプドホールディングス傘下のパイプドビッツです。あと、今は上場していませんが、シナジーマーケティングも競合ですね。
ウィルズ:御社がそのライバルを押しのけて成長、もしくは切磋琢磨できた強みとは?
美濃:最大の強みは、ソフトウェア製品・サービスの基本性能です。当社はメール配信システムが主力ですが、メールの配信性能は他社には絶対に負けないという自信があります。エンジンの強さというのが、まず一つです。
二つ目は、カスタマイズに積極的に応じるということです。ソフトウェアの開発会社は、事業モデル上、二つのグループに分かれます。一つはオーダーメイド開発を行う受託開発型のグループ、もう一つは自社製品としてのソフトウェア(注:既製品・汎用型ソフトウェア)を開発する自社製品型のグループです。
当社は自社製品型のグループに属します。自社製品型の会社というのは、とにかくカスタマイズをやりたがりません。カスタマイズをせずにそのまま売るというのが業界のセオリーです。そのほうが楽ですし、利幅も高くなるからです。
しかし、当社はあえて、カスタマイズを積極的にやるというのをポリシーにしています。
ウィルズ:それは、最初の段階から?
美濃:カスタマイズに積極的に対応することを方針とし、社内外にアピールするようになったのは、10年ほど前からです。そこには、あるこだわりがあります。それをこれからお話しします。
企業が何らかの業務システムを導入する場合、ニーズを100%満たすシステムを得ようとすると、受託開発つまりオーダーメイドで自社専用のものを作ってもらわないと実現できません。
既成の汎用型システム、いわゆるパッケージシステムは、価格は安いしすぐに手に入れることができます。でも、汎用型システムなだけに、おおよそ8割くらいのニーズを満たすのが一般的だと思います。
つまり、汎用型システムを採用する場合、どこか2割分くらいは我慢をしながら使っているわけです。でも、その汎用型のシステムに、カスタマイズ、つまり一部改造を加えれば、100%とまではいかなくても、98%とか99%のニーズを満たすことができ、かつ価格や納期はだいたい数分の一程度で済み、コストを圧倒的に抑えることができます。その価値は非常に大きいと思います。
でも、汎用型のシステムのベンダーで、カスタマイズニーズに応える企業はほとんどありません。
一般にシステムベンダーは、自社が提供したシステムを保守管理する責任を負います。そのため、汎用型システムにカスタマイズを加えて提供すると、カスタマイズを施した数だけシステムの種類が増えることになり、保守管理が非常に煩雑になります。それが、自社製品型のグループがカスタマイズを嫌がる理由です。
企業からすると、汎用型ソフトウェアにカスタマイズを施せばニーズの大部分を満たしながら導入費用も期間も大幅に抑えることができるのに、それに応えてくれるシステムベンダーがいない。
「なるほど、ニーズは大きい。顧客企業も喜んでくれる。でもライバルはやりたがらない。ならば、それは当社が、当社の技術力でもって応えましょう!!」
これが、当社のこだわりなのです。
ウィルズ:ちなみにカスタマイズをする前とカスタマイズをした後で、解約率や継続率の変容はどのように?
美濃:それはすごくいい質問ですね(笑)。
当社のクラウドサービスには、ASPと呼んでいる廉価版と、SaaSと呼んでいる高価格版があって、高価格版のSaaSはカスタマイズの要望にお応えしています。その二つのクラウドサービスの解約率を比べるのが一番わかりやすいと思います。
ASPの解約率は毎月2%くらいです。年間でいうと、2%×12か月で24%ですから、全体のザッと4分の1くらいはお客様が入れ替わる計算になりますね。ちなみに、月2%の解約率は、同様のクラウドサービスでは平均的な水準です。
一方、カスタマイズを施すSaaSの場合は、少ないときは年間でも2%くらいで、ほとんど解約がない年もあるし、ここ数年を平均しても5%以下です。
年間の解約率が5%未満のSaaSと、24%程度のASPでは、その差は歴然です。
ウィルズ:他社が避けて通るカスタマイズにあえて突っ込んでいったことによって、つきものである解約を押し下げた戦略が見事に当たったということですね。
美濃:そうですね。カスタマイズを施すと解約されにくい理由は、当然カスタマイズ自体に費用がかかっているわけですし、使い勝手が圧倒的に良くなっているからだと思います。
あと、我々からすると、平均単価がグッと上がるメリットがあります。
廉価版のカスタマイズをしないASPは、月額の平均利用料は約2万8,000円です。その金額は緩やかに下がる傾向にあります。先ほど申し上げたように、100社から200社の競合があって、当社が2万8,000円で販売していても、月1,000円でのサービスもあるわけです。安く提供する競合がいると、やはりどうしても平均単価は下がってきます。
一方、SaaSのほうは平均で月額20万円くらいいただいていて、しかも下がりません。競合がいないからです。月額10万円からのサービスなのですが、月額200万円いただいているお客様もいらっしゃいます。このように、単価でも圧倒的に違いがでていて、カスタマイズを施すSaaSは、我々にとっては非常に大切な戦略製品・サービスになっています。
ウィルズ:メール配信業界において、レッドオーシャンからブルーオーシャンにしっかりと軸足を移していくといったところですよね。その廉価版の2万8,000円から、カスタマイズのほうへアップセルしていくのは、やはり流れとしてはあるんですか?
美濃:もちろんアップセルもあります。ASPをお使いのお客様が操作に慣れて、「こんなこともやりたい」となってからSaaSに切り替えるケースですね。ただ、最初からSaaSで契約になるお客さんのほうが数は多いです。標準仕様では満足できないし、他社のサービスでもやはり足りない。そういったお客様に対して、最初からカスタマイズを施してSaaSで提供するほうが多いです。
(インタビュー日 2019/7/29)
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