価値開発株式会社/代表取締役社長 梅木篤郎 氏 2020 11/08 インタビュー 2020年9月28日2020年11月8日 Tweet Pocket “当社の目的を正しく株主の皆様にご理解いただきたい” そう話すのは、価値開発株式会社の梅木社長。実は、2018年に廃止した株主優待制度の再開を発表したのだ。奇策とも思える突然の優待再開。その真意を聞いた。 目次1.株主管理におけるデジタルトランスフォーメーションの推進 伊藤:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、先行きが見通しにくい中での株主優待制度の再開。思い切った経営判断だと思いますが、その目的をお聞かせください。 梅木 :「優待再開」の目的は、株主様への還元と株主様情報の有効活用の2つです。 そもそも当社は、株主様への還元を重要な経営上の使命と考えております。まずは、当社を中長期的にご支援くださる株主様に当社株式を保有していただくことが、「優待再開」の一番の目的です。先だって、当社は、2021年3月期~2022年3月期にかけての成長戦略プランをお示ししたところです。 やはり、この成長戦略プランを推進するためにも、株主様への還元を通して、株主様のご支援やご理解を賜りたいと考えております。 (参考)価値開発成長戦略プラン(2021年3月期-2022年3月期) 伊藤:素晴らしいお考えだと思います。御社の今後の戦略の骨子は後ほど伺うとして、「優待再開」の2つ目の「株主様情報の有効活用」について、詳しくお聞かせいただけますか。 梅木:これは、優待制度を再開させた最も重要な点です。当社のメイン事業はホテル事業です。コロナ禍においては、従来以上に宿泊ゲストの皆様に安全でご満足いただけるサービスを提供することが、他社との差別化を図る上で非常に重要なファクターであると考えています。 当社側から株主様に積極的にアクションを取ることで、より多くの方々に、当社が運営しているホテルへ興味を持ってもらい、運営改善に関する様々なフィードバックを頂戴する良い契機につながると考えています。 特に、株主様は、当社の潜在的かつ優良な顧客層になりうるため、当社グループが運営するホテルのキャンペーン告知やアンケートなどを通じて、当社の成長のために、忌憚のないご意見を承り、経営に生かしたいと思っています。 伊藤:先日ちょうど、経団連から「企業と投資家による建設的対話の促進に向けて」という指針が出されたところです。これまでの株主と企業との対話は、企業側からの一方通行になることが多かったように思います。 梅木:仰る通りです。普段のIRやお問い合わせの対応等は行いますが、株主様と双方向でコミュニケーションができているという実感はあまりありませんでした。また、対話の場面も日常のIR活動を除けば、どうしても株主総会の場や説明会の場に限られてしまいます。 伊藤:これから、事業改革や大規模な資金調達を控えていらっしゃいますので、より一層株主様とのコミュニケーションが重要になってきますね。 梅木:先の成長戦略プランでお示しした通り、当社では、事業改革を進めてまいります。今後は、事業のPR情報、決算情報や適時開示情報などのIR情報を随時配信し、アンケートなどを通して、株主様とのコミュニケーションの活性化を図りたいと考えております。 今回、ご縁があり、株主優待制度、株主管理分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)などについて、株式会社ウィルズのプラットフォームを利用させていただくこととなりました。 冒頭も申し上げましたが、株主優待を実施するのは、直接的な株主還元だけが目的ではありません。株主優待をきっかけにして、株主管理プラットフォーム(価値開発・プレミアム優待倶楽部)に会員登録いただくことで、成長を目的とした株主様との対話を活性化させたいのです。 2.GoToトラベルキャンペーンは追い風 伊藤:御社の今後の事業戦略を伺う前に、業界環境についてお聞かせいただけますか?正直なところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、ホテル業界も厳しいのではないですか? 梅木:ご存じのとおり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、ホテル業界はこれまでに経験したことのない大変厳しい状況にあります。当社グループでも運営するホテルの一時的な休業などを行わざるを得ない状況になりました。 伊藤:そのような状況の中で貴社ではどのような手を打たれたのでしょうか。 梅木:当社では、このような状況のなかで、運営ホテルの賃借料減額の交渉や各金融機関様とのご協力のもと、運転資金の確保など”守り”の経営を行ってまいりました。ホテル業界全体が大変に厳しい状況のなかで、多くのホテル開発案件が中止され、既存のホテルの用途変更が検討され、ホテル業界における再編・淘汰が起こっている状況にあります。 伊藤:業界再編の兆しだと思いますが、これは御社にとっては、商機ともいえるのではないですか。 梅木:当社では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が収束してくれば、国内利用者及び訪日外国人旅行客は必ず復活すると考えています。そのため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりとホテル業界全体の低迷は非常に残念なことではありますが、将来のビジネスチャンスにもなると考えています。そのため、当社では、アフターコロナを見据えて、新規のホテル運営契約や賃貸借契約をより有利な条件で受託することなど”守り”だけでなく”攻め”の展開を考えております。 伊藤:業界全体として、投資妙味があるのでしょうか? 梅木:来年は、延期されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されております。また、2025年には大阪万博の開催が予定されております。日本には海外からこれまでに評価されてきた食文化、生活様式、アニメを含むサブカルチャー、四季のある自然環境、清潔で安全な環境等、潜在的な魅力がまだまだあると考えております。日本政府も観光立国への取り組みとして「観光ビジョン実現プログラム2020」を打ち出し、アフターコロナにおける日本の観光需要の反転攻勢を掲げています。 ベストウェスタンホテルフィーノ東京赤坂2020年8月1日開業 伊藤:政府が推進している「GoToトラベル キャンペーン」は御社にとっては、追い風でしょうか? 梅木:当社グループへの効果も大きいもの考えております。当社グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止対策を、運営するホテルで徹底して行っております。「Go Toトラベル キャンペーン」を活用して多くの宿泊者の方にご利用をいただきたいと考えております。ホテル運営会社では、コロナ禍の厳しい環境下での経営を迫られておりますが、このような状況にあるからこそ効率的なホテル運営の方法などホテル経営を見直す機会になっているものと考えております。 3.新しい社名とともに、経営改革を断行 伊藤:今後の展望・成長戦略を教えてください。 梅木:ホテル業界は、日本のいわゆる「おもてなし」が高く評価され、コロナウイルス感染症の拡大前まで訪日外国人旅行客も右肩上がりで推移してきました。ただし、ホテル業界は古くから存在していることから、業界全体にこれまでに形成された固定観念や既成概念に支配されている部分も多いと感じております。 私は、当社の取締役となる昨年までホテル業界への関りがあまりなかったことから、特にこのように感じるのかもしれません。そのため、ホテルの運営方法についてはまだまだ改善の余地があり、より経営効率の高い運営を行っていくことができると考えております。 当社の経営陣にはホテル業界からの叩き上げの人間は少なく、多くの取締役が他の様々な分野で活動してきた者で構成されているところに特徴があります。そういった点では、他のホテル運営会社から見れば異色であるかと思います。ホテル業界出身以外の他の業界出身のものであるからこそ、これまでの固定観念や既成概念に捉われないホテル運営の発想ができるものと感じております。 今後は、AIやITなどの先端技術を導入して経営効率の高いホテル運営を目指しております。 4.ホスピタリティと効率化を両立したホテル事業の新ブランドに期待 伊藤:経営戦略の1つに、「新しいホテルブランドの展開」があると思いますが、この点についてお聞かせいただけますか。 梅木:これまでは、当社は、東日本大震災の震災復興需要を目的とした「バリュー・ザ・ホテル」と海外のブランドである「ベストウェスタン」を中心にホテルの運営を行ってまいりました。 当社グループが全国展開しておりますベストウェスタンホテルは、海外での認知度が非常に高く日本に来られる外国人の方にはなじみのある方も多い点でメリットがありましたが、ブランドをお借りして運営している関係上、ホテルの設備や運営の方法に厳しいレギュレーションがあり、当社グループの独自性を出すのは難しい部分もございました。 伊藤:厳しいレギュレーションとはどのようなものでしょうか。 梅木:細かい点までお話しするとたくさんありますが、分かりやすいところで申し上げると、食事ですね。国内外で展開されるベストウェスタンでは、どのホテルでも決まった食事が提供できるように、提供するメニューにも規格があります。 もっとも、当社では、この厳しいレギュレーションを必ずしもマイナス面とは考えておりません。海外の方が訪日される際には、海外では知名度の高いベストウェスタンとして展開することで、訪日客を安定的に取り込んでいくことが出来ると考えております。 伊藤:確かに、厳しいレギュレーションがあるからこそ、どの地域に行っても一定のサービスの提供を受けることができ、宿泊する側としては安心ですよね。 梅木:ただし、一方で、そのレギュレーションがあることで独自性を出すことが難しい。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を契機に様々な点でライフスタイルに変化が起こり、宿泊ニーズに変化が起こっています。ホテルにおきましても、このような変化に対応したホテルが必要であると考えおります。 そこで当社グループが考えるコンセプトに基づきホテル運営を行うことのできる新しいホテルブランドを立ち上げることといたしました。現在、新しいホテルオープンに向けて当社の親会社グループであるスターアジアグループとも協議を行い早期に実現したいと考えております。 新ブランドの展開にあたっては、冒頭にご説明申し上げたように、当社の株主様の視点、ホテル宿泊者の皆様のご意見、当社役職員の目線など多角的に分析をして、新ブランドを作り上げていきたいと考えております。 伊藤:そこで、キーワードになるのが、AIやITの活用ということですね。 梅木:その通りです。with コロナ、新時代における当社のホテル運営方針は、ホスピタリティと効率化の両立です。 フロントでお客様をお待たせすることがないよう、簡単にチェックインできるような仕組みを設けることや、例えば、ご自身の客室でチェックアウトできたり、お客様のご負担を軽減することを目的に効率化できるところは、積極的に行っていきたいと考えております。 ただ、一方でホスピタリティ、サービスレベルの維持向上も重要です。ITを活用して運営効率化を推進するというのは、なにも従業員を減らすことと同じ意味ではありません。ホテル運営においては、お客様の満足度を維持、向上させていくことが最も重要ですので、しっかりと人材にも投資をして国内外のお客様から評価していただけるようなホテルブランドにしていきたいと思います。 5.不動産事業領域での成長も視野に 伊藤:今回発表された成長戦略プランの中には、不動産事業の拡大も1つの要素になっていますね。もう少し具体的にお教えいただけますか。 梅木:ホテル事業におけるホテル運営のノウハウを不動産事業の展開に結び付けていきたいと考えております。 私も不動産業界の出身でありますし、当社の親会社グループであるスターアジアグループは不動産分野に大変強みを持っております。そこで、ホテル事業を通じて収集される様々な情報を基に不動産事業の収益拡大も狙っていきたいと考えております。 また、ホテル運営を通じて積み上げたホスピタリティに係る様々なノウハウを活かして新ブランドのホテルコンセプトを実現できるような新しいホテルの開発や既存のホテルのリノベーションも実施していきたいと考えております。また将来的には、ホテルのみならず、住宅やその他のホスピタリティ分野へ開発領域を広げていきたいと考えております。 6.2022年3月期までにROE15%の目標 伊藤:中長期的な成長を見据える中で、具体的な経営指標はありますか? 梅木:繰り返しになりますが、当社にとっての最優先課題は、中長期的な成長を目指し、株主価値を最大化することです。具体的には、ROE15%を目標に掲げております。具体的な施策は以下の通りです。 伊藤:経営効率を追求されていく中で、今回の社名変更はどのような意味を持つのでしょうか。 梅木:既にリリースされておりますが、来年の株主総会において、ご承認をいただくことが条件となりますが、会社名を「ポラリス・ホールディングス株式会社」に変更することといたしました。「ポラリス」とは北極星の意味があり、沈むことのない不動の星である北極星のように恒久的に輝ける企業となるべく当社の新しい名称といたしました。 また、今後は当社をグループ企業の本社機能に特化することに伴い「ホールディングス」を含む名称といたしました。 当社では、1912年の創業以来、業種の変更とともに会社の名称を変更してまいりました。 今後、海外の投資家に向けた英語での情報配信を行い、海外の資本市場からの資金調達も行いたいと考えております。 今回、会社の名称を海外の方になじみやすいものとしたのは、今後海外の投資家に向けた英語での情報配信を行い、海外の資本市場からの資金調達も行いたいと考えており、これまでの会社の名称から、日本国内のみならず国外の利用者や投資家に覚えていただきやすいものにいたしました。 伊藤:本日は、大変貴重なお話を伺うことができ、このインタビュー記事をお読みになる投資家の方々も御社への理解が進むのではないかと思います。ありがとうございました。 7.会社概要 会社名価値開発株式会社(会社名は、2021年6月の株主総会決議を以って、ポラリス・ホールディングス株式会社に変更される予定)証券code 東証2部 3010代表者 代表取締役社長 梅木篤郎経歴 1963年10月9日生まれ。1986年、株式会社トーメン(現、豊田通商株式会社)入社。2009年1月、株式会社明豊プロパティーズ代表取締役社長、2012年10月、株式会社明豊エンタープライズ代表取締役社長、2019年5月、価値開発執行役員、同年6月同社取締役会長・不動産事業本部長などを経て、現職。2017年11月に就いたスターアジア総合開発株式会社 代表取締役等を兼任。所在地東京都千代田区岩本町一丁目12番3号設立 1912年9月事業内容都心部宿泊特化型ビジネスホテルが主。東北での中長期滞在型施設も運営。資本金9,900万円(2020年6月末日現在)決算期3月URLhttps://www.kachikaihatsu.co.jp/ Tweet Pocket 上場社長プレミアムトークについて 定量情報だけでは分からない創業の経緯やビジョン、経営方針、 今後の成長戦略等の非財務情報などを配信中。 「上場社長プレミアムトーク」は、投資家に対して企業経営者から業績等の定量情報だけでは分からない創業の経緯やビジョン、経営方針、今後の成長戦略等の非財務情報など当該企業の様々な魅力を訴求するためのメディアです。 当社は、かねてより、機関投資家向けIRには「IR-navi」及び統合報告書等のコミュニケーションツールの企画制作、個人投資家向けには「プレミアム優待倶楽部」を提供し、企業価値向上のための投資家マーケティングを支援してまいりました。 今日では、企業価値評価基準における非財務情報の比重が高まり、企業も人材や自社のブランド価値等を積極的に開示するようになりました。 本ウェブサイトが、投資家が企業の知られざる魅力を発見・理解する一助になれば幸いです。 各インタビュー記事は、こちらからご覧頂けます。 インタビュー AI IT インバウンド デジタル・トランスフォーメーション ビジネスホテル ホテル 不動産 差別化 成長戦略 東京オリンピック 株主優待 経営戦略 還元 よかったらシェアしてね! URLをコピーしました! URLをコピーしました! 取材記事制作における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染予防対策の留意事項 株式会社アクセスグループ・ホールディングス/代表取締役社長 木村勇也 氏 関連記事 株式会社みらいワークス代表取締役岡本祥治氏 1/3 2018年8月30日 株式会社みらいワークス代表取締役岡本祥治氏 2/3 2018年9月1日 株式会社みらいワークス代表取締役岡本祥治氏 3/3 2018年9月2日 株式会社ライトアップ代表取締役社長 白石崇氏 1/3 2018年9月19日 株式会社ライトアップ代表取締役社長 白石崇氏 2/3 2018年9月20日 株式会社ライトアップ代表取締役社長 白石崇氏 3/3 2018年9月20日 株式会社フォーカスシステムズ代表取締役社長森啓一氏3/3 2018年11月27日 株式会社フォーカスシステムズ代表取締役社長森啓一氏2/3 2018年11月27日