株式会社ピアラ代表取締役飛鳥貴雄氏2/3

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会社名  : 株式会社ピアラ
証券コード: 東証マザーズ 7044
代表者  : 代表取締役 飛鳥 貴雄(あすか たかお)
略歴   : 1975年生まれ、愛知県出身。早稲田大学法学部卒。2004年にピアラを設立、代表取締役に就任。マーケティングコミットカンパニーとして業界シェアを拡大し、2018年に東証マザーズ上場。
所在地  : 東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー29F
設立   : 2004年3月24日
事業   : 「ECトランスフォーメーション」をコンセプトに、ビューティ・ヘルス食品領域におけるダイレクトマーケティング事業を支援。
資本金  : 844百万円
URL  : https://www.piala.co.jp/

目次

15年の蓄積データからくる競争優位性

ウィルズ:今後、取り巻く環境にどのような変化が起こると飛鳥社長は見ていらっしゃいますか?

飛鳥:私たちのビューティーアンドヘルス市場は、シニアが3,300万人程度いまして、2065年には8,000万人強になると思います。このビューティーアンドヘルスの通販市場も毎年6~8%程度伸びています。日本の人口は減っているのに、シニア向けサービスがすごく増えています。また売上に対してマーケティングコストの比率は平均3割です。そこで、「マーケティングコストの最適化」を僕らはやろうとしています。われわれは、データをすべて「人の悩み」データグ付けしてます。例えば、シミしわとか、中性脂肪が高いとか、腰が痛いとか、普遍的であんまり変わらないのです。他の市場よりマイナーチェンジが少ないんですよ。それはなぜかというと、「人の悩みが変わっていないから」です。アパレルでいうと、定番品で機能をアップしていくユニクロに似ています。僕らは15年間のコンサルを通して、売上向上の要素を全部タグ付けして学習しています。新商品の戦略を過去のデータをもとに予測モデルで設計可能です。投下する広告コストに対するリターンが予測することが可能となるため、KPI保証ができるのです。
過去データから、広告媒体やクリエイティブそして予算の最適な配分が可能となり成果に結びつけることが出来ます。

ウィルズ:いや、これもう衝撃の事実ですね。競合に対する自社の強みの源泉はこの15年の蓄積ですね。

飛鳥:ほんとにそう思いますね。過去のデータの蓄積から、最適な手法と媒体を提案できます。悩みは普遍的で変わらないので、データも結構似ていて、やり方も手法も結構似ているところが一番のポイント。意味付け出来ていないデータは無価値でして、僕らはそれを「商品」ではなくて、「悩み」で分類しているのです。

ウィルズ:「商品ではなく、悩みという普遍的なものをタグの軸にした」ということがイノベーションだと思います。

飛鳥:そうですね。僕らの特徴はKPI保証の成果報酬であることです。自由に新規事業が試せてリスク回避もしやすい。クライアントは私たちがどのような広告を運用するかは気にしておらず、いくらのリターンがあるのかが最大の関心事です。そのリターンを保証するために、私たちは状況に合わせて予算配分を勝手に変えています。成績がいい広告もあれば悪い広告もある、それをフレキシブルに運用し、結果として合格点をとれればいいわけです。だから、僕らはその合格しか握っていないわけです。そこを握れば、運用の自由度が出てきます。新しい広告手法にも果敢に取り組むことが出来るわけです。
もう1個の特徴は共通の成功データを横展開がしやすいのです。データがない新しい広告手法は、人間が挑戦しなきゃいけないんです。そういう挑戦をしていくと、失敗データも成功データも蓄積され、またどんどん変化していくっていう感じでやれるっていうのが、われわれの特徴。そして、それを共通の成功データとすることにより、他の企業にも展開していくことが出来ます。

ウィルズ:非常にクレバーですね。「クライアントから怒られる、怒られない」というよりも、「最終的にはKPIで握ってるからその途中は何も言わないでね」っていう、クライアントとの対話のプロトコルを変えてしまっていますね。

飛鳥:そうですね。

ウィルズ:すごい。そして広告運用の自由度も高めつつ、自社にとってもメリットがあるようなやり方ができる。

飛鳥:広告代理業やったときに、一番不毛だったのがレポート作成なんですよ。僕らは基本、レポートを出さないです。売上の表と、あと僕らのツールでも一応売上げ計測してますんで、画面を見たらわかる状態なのです。細かい数字や情報を報告されると、クライアントは何かしら言いたがるのです。最終的なKPIを握って成果報酬でやっていれば本質的には問題なく、そのレポートを深夜まで作ってると、結構広告代理店は不毛な仕事ばかりになっていくんです。

ウィルズ:本質的な仕事にフォーカスして、それをクライアントにも納得頂いている仕組みが出来ているのですね。

飛鳥:レポートを作っても、本質的なところを改善できるわけではないのです。クライアントにとっても、僕らがレポートを作ることに時間に割くことって何らお互い不毛な作業なのです。そういった無駄をそもそも無くしています。

ウィルズ:多くの代理店が、その無駄な努力でやっているのが現状です。マーケーッターを志す人がもしいるならば、もしくはブラックな環境で日々涙を流して仕事をしているようであるならば、ぜひ御社に転職された方がいいんじゃないかと思います。

飛鳥:この改革によって、労働環境的にはすごく良くなったんじゃないかな。人間が一番やらなきゃいけないのが、やっぱり細かいクリエイティブのディレクションなんですね。人がどうやって反応するかって。各要素はあってもちょっとしたコピーの違い、ちょっとした写真の違い、ちょっとした違いで全部大きく反応が変わるので。人は「どうやったら、もっとお客さんが動いてくれるか」っていうことを真剣に考えることだけに集中したい。
だから、そういう運用とか作業とかは外注したり、徐々にシステム化していく考えです。僕らも仕事の単純化を常に考えています。やはりそこが一番、リソースがかかります。

ウィルズ:まさにこれが強みの源泉であることが良く理解できました。整理されていないデータは無価値であって、意味のあるタグを付与して初めて価値が出てくるわけですね。

飛鳥:アマゾンぐらいの規模のデータがあれば有意な示唆は出てくると思いますが、AIを使ったマーケティングオートメーションツールって、そこまでデータがないので大した答えは返ってこないのです。だから、僕たちは学習させるために、もうちょっとわかりやすい指針のタグを早めに付けることでデータ量をカバーしてるわけです。

ウィルズ:AIが働きやすいように人間がしてあげるんですね。

飛鳥:AIに何を学習してほしいかというと、売上に影響するポイントを見付けてほしいわけです。では、そのポイントは何かという話になります。そこでコンサルで今まで蓄積したノウハウを伝授してるっていう感じですかね。

ウィルズ:観点が非常におもしろいですね。ビックデータがはやり言葉になるもっともっと前の段階から、それをもうすでにやられているわけですね。

飛鳥:15年の蓄積データはあるけど意味付けが足りなかったため、アウトプットも当たり前の内容しか返ってこなかった。そこで、意味付けを細かく分類したことで、もう少し人間がやるように近付けるようにしました。僕らがやってるのって、タグの意味付けを僕が読み取って、数学的に学習をさせている作業をしています。今後は、それを画像やイメージ、テキストの方でもやろうとしています。

ネットとリアルの横断的なノウハウが競争優位性

ウィルズ:興味深いですね。過去データの蓄積と意味のあるタグ付けで有益な示唆を出すわけですね。それとともに、広告出稿の環境やデバイスが時代とともに変わっていく際にネガティブな影響はありますか?

飛鳥:そうですね。デバイスとかそのネットワークがどんなに増えても、別に新たに試していけばいいだけです。それから、僕らのもう1つの強みって、オンライン、オフライン両方やっていることです。最近ですと、郵便局2,000拠点でお客さまに体験をしていただいて、その場でアンケート答えてもらって、さらに買ってもらって、定期コース入ってもらうという企画も実施しました。それも成果報酬なんですけど。要は、ユーザとの接点がオフラインにも僕らは持っているわけです。これからは、オフライン、オンラインクロスで設定していくことが大切です。どうしてもネット通販会社さんって、ユーザが体験する場がないのです。体験っていうのは非常に大きいテーマになってきます。僕らもその新しい市場を常に作っていくっていう試みを人間がやっています。今年のわれわれの戦略は、オフライン広告を結構頑張るという内容でもあったりします。オンライン広告はヤフー、グーグル、Facebook、LINEなどのプラットフォームに乗る必要があるため、勝手にテクノロジーが変わると影響があります。しかし、オフライン広告は、ユーザと直接向き合っているのでコントロールできない急激な環境変化が少なく安定しています。

ウィルズ:オンラインやITのみで完結するサービスは常に模倣のリスクを伴いますが、そこにリアルが掛け合わされると途端に模倣の難易度が上がります。リアルの世界でいかに手を動かす泥臭い作業を何のためらいもなく実行できる組織があるかどうかが、競合の追随を許さない強い会社の共通項なんじゃないかと思います。従って、上場後にさらに「リアルを強化する」ということに納得です。

飛鳥:そうですね。ECにおいてやはり最後に残るのはアマゾンと言われています。アマゾンはどこにでもあるものをとにかく利便性よく、早く手に入って安いわけです。僕らはどちらかというと、逆バリをしています。化粧品、健康食品の業界は同じものを繰り返し購入いただき、ファンになって頂きます。どちらかというと、僕らが目指しているのは百貨店の外商であり、サザエさんの三河屋さんのイメージです。商品価値のみならず、接客価値の観点があります。皆さんでも「安くて便利でいいものがあるんだけど、自分の友達が経営してるからちょっとまずくてもこのレストラン行くよ」とか、「ここ良くしてくれてるから行くよ」という消費行動があるともいます。そこで効いてくるのが、接客であり、ファン化であるわけです。そこをやらないと、どうしても機械的で利便性が高いアマゾンに負けます。僕らが売っているのは、「いいものをそこそこの値段でちゃんと売り、深くずっと愛していただく」取り組みの支援です。そこはやっぱり、変わらないですよね。だから、逆に必ず残ると思っています。だから、体験を重視するし、リアルにも関わらなければならないわけです。そこを僕らも重視しています。それが多分、ネットマーケティング会社のできないことだし、総合会社でもそこの深さにいかないところだと思います。

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(インタビュー日 2019/1/10)

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