Caseプレミアム優待倶楽部導入事例

掲載日時:2024/9/10

東証再編で地方上場企業が選んだ株主優待。導入2年で株主数は約1.6倍、株価は約1.4倍

1971年6月にタケダ機械株式会社(石川県能美市)は設立され、機械メーカーとして事業を発展させ、1992年7月には株式を市場に公開して現在に至っております。

近年では日本の投資戦略(貯蓄から投資へ)として、コーポレートガバナンスが提唱され、2022年4月には株式会社東京証券取引所が市場区分を見直し、同社はその同年に株主優待制度「プレミアム優待倶楽部」を導入されております。

また、現在もさまざまな制度の見直しと企業のIRの在り方が検討される中、各社ともIR強化が課題になってきております。
そこで、同社が株主優待制度を導入後、地方企業ならではの課題や問題点を解決して一定の成果を得た経緯などをご担当の南様に伺いました。

お話をうかがった方
タケダ機械株式会社
  • 経理担当 南様
課題
  • ■東京証券取引所の市場区分見直しによる上場維持基準の厳格化への対応
  • ■IRによる企業認知度の向上と費用対効果のバランス
  • ■IR業務の負担増加(リソース不足)
解決策
  • ■事務負担はほぼ「ゼロ」で株主優待制度導入
  • ■株主優待制度の導入による株式売買の活性化
  • ■中長期的な株式保有を意識した株主優待制度の設計
効果
  • ■新しい上場維持基準をクリア
  • ■導入2年で株主数約1.6倍、株価約1.4倍
  • ■株主優待制度が企業認知度を高める新たなIRのツールに発展

市場再編で生まれ変わり、一層厳格化され上場維持基準が大きくなった課題に、努力でどうやって立ち向かうのか

―― 御社の事業内容と南様のお立場をご紹介ください。

南様:
私たちは、石川県能美市を拠点に本社工場を構え、また同拠点にある連結子会社タケダ精機株式会社とともに、グループ企業として金属加工機械並びにそれに付帯する周辺機器及び部品を製造する機械メーカーであり、全国にある当社の8営業所及び1駐在所と販売代理店を通じ、製品や消耗部品の販売、修理、保守サービスといった事業を展開している会社であります。
当社の製品は、商業施設・工場などの建築物、橋梁・トンネルなど建造物に使用されるH形鋼のほか各種鋼材をドリル、鋸、金型刃物で穴あけ・切断加工を施す形鋼加工機、精密な部品を形成する工作機械に鋼材を提供するための無垢材のほか、パイプ材を鋸で切断加工する丸鋸切断機が主力製品となります。それらが省人化用の大型機械から少ロット生産用の小型機械まで、その用途や加工する鋼材の種類も含めてさまざまバリエーションを想定し、数多くの機械をラインアップしております。
(タケダ機械様HPより抜粋)
その中で私は、開示に関わる経理業務を主に担当しております。一般的に上場企業の経理業務と言いますと、会社の計数管理や決算業務に従事するイメージを持たれがちですが、経理業務だけに専任するわけではありません。

例えば蛍光灯の交換、会社の清掃、敷地内の水まきといった庶務的な業務を行ったり、今こうして受けている広報対応もそうですし、必要に応じて業務を選ばず、何でも主体的に行う必要があります。そういった中で、特定の業務を専任して強化を図り、継続的に一定の効果を維持することについては、かなりの労力が必要になってきます。

―― IR業務を兼務する中で、IR活動や株主様への応対などでの困りごとはありましたか。

南様:
最近の東京証券取引所の市場区分見直しにより、これまでの流動株式の取扱いが狭く定義されより厳格化する中で、流通株式時価総額10億円を満たすという、喫緊の大きな課題に対応することが必要になりました。

市場区分を見直す前の当社株式の市場区分はJASDAQ(スタンダード)でありました。当該市場において、上場維持基準の流通株式時価総額の条件は2.5億円でしたから、ハードルが4倍になったわけです。

まず、新ルールを適用するに当たって条件を満たしていない企業については一定の経過期間を設けるとありましたので、とりわけ、制約が課せられる中で「株価をどのように上げるのか」を検討しました。
検討する中で、短期的又は中長期的な観点においても、まずは「会社を知っていただく必要がある」との共通認識を確認しました。しかしながら、地方に拠点を構える当社を実際に見る機会はほとんどなく、個人向けの事業でもないため、当社を知っていただくためのIRの難しさに直面しておりました。

もちろん、広告出稿、配当金増額などを行うことで一定の成果を得ることができるとは思います。その決果、どれだけの投資家が当社に興味を持っていただき、当社の株式を実際に取引していただけるのかについては未知数です。

そのような状況の中、「個人投資家に人気がある株主優待制度はどうか」と株主優待制度を選択肢に入れることになりました。

―― 株主優待制度の新設はスムーズに進みましたか。

南様:
結果的にはスムーズに決まりましたが、経営者においては思い悩む場面もあったかと思います。

当社には、株式の購入をご検討する方が当社のホームページ、四季報、適時開示などさまざまな手段を通じて事業やその業績についての情報を詳細に知り、納得してご購入していただき、株主様には業績に応じて配当金をもって適切な利益還元を行うこと、これがあるべき姿だという考え方があったからです。

株主優待制度は人気があるものの、最近では株主還元における公平性を課題にすること、株主優待制度だけに興味があって企業の事業に興味がない株主様が増える可能性など、いくつかの懸念もありました。

また、株主優待制度を導入するにしても、個人向けの商品を持たない当社では何を優待品として提供できるのかということもありました。他社を参考に地元の特産品、商品券、クオカードなどいろいろ考えましたが、事務負担や付随するするコストの想像が難しく悩みました。

「配当金の高さで争っても認知度や資本コストの解決にはならない」弱点の指摘と具体的な提案に背中を押された

―― そんな中でなぜ、プレミアム優待倶楽部を導入していただいたのでしょうか。

南様:
株主優待制度について、社長自らが調査して見つけたのがプレミアム優待倶楽部であります。私がそのきっかけを伺うと、「いろいろ調べたけど、どうもプレミアム優待倶楽部が人気でいいらしい」ということで「自分の判断が間違っていないか、ウィルズさんの担当者と会って一緒に話を聞いてくれないか」と指示され、役員とともにウィルズさんに話を伺ったことが、私がプレミアム優待倶楽部を初めて知る機会となりました。

―― ウィルズやプレミアム優待倶楽部の印象はいかがでしたか。

南様:
今でも覚えていますが、ウィルズさんの担当者から「失礼ながら」と切り出され、当社が配当金でプライム市場やスタンダード市場の大手企業と争っても、投資家は事業の種類、規模、認知度、株式の流動性等で判断し、当社の株式には目が向きづらいとはっきりおっしゃたんです。

実際に、当社はコロナ禍の期は除き、ここ数年間は業績に応じて配当金を増額するなどメリハリをつけて対応しております。
それでも、株価や株主数は変わらない、そのような実績からその根拠があります。おそらく、経営陣もこれまでと違うことをしなければならないという思いがどこかであったかと思います。ウィルズさんのはっきりした姿勢に背中を押された気がしました。

―― プレミアム優待倶楽部を導入するにあたって不安などはありましたか。

南様:
今では本当に笑い話ですが、コロナ禍の影響で直接会うことなくオンラインだけでの商談だったので、疑心暗鬼が全くなかったわけではありません。

例えば、配当金を増配した場合と同等額の資金で株主優待制度を導入した場合の当社の負担や過去に株主優待制度を導入した他社の事例(株主数や売買高の増加)を示し、当社の株主優待制度導入後の見通しを試算してくれたのですが、これまで誰も具体的な数値で分析し提示してくれることはなかったので「本当にうまくいくのかな?」という不安はありました。

しかし、ウィルズさんの提案は、当時の当社の株主構成や出来高の少なさを始め、課題をヒアリングした上で過去の導入実績データに基づいて根拠を示しているという実感があったので導入に至りました。

―― その他にプレミアム優待倶楽部を導入した理由はありますか?

南様:
もちろん、プレミアム優待倶楽部のサービス面が決め手となったことも大いにあります。

まず、株主様が多くの選択肢の中からお好きな優待品を選べるという点。バリエーションが豊富でその品数が大変多くあります。仮に自前で限定した優待品を用意する場合と比較して株主様にとってプレミアム優待倶楽部の方がはるかに良い選択になると思います。それから、優待品の選択から申込みの受付、配送や株主様からのご照会の対応までワンストップでお任せできるサービスは、事務工数を増やしたくない当社にとっては非常に魅力的でした。
次に、当社を知る機会を提供してくれる点。プレミアム優待倶楽部のポータルサイトを通じて当社の事業、業績等を紹介し、当社のホームページサイトとリンクさせ簡単にアクセスできる環境を提供してくれています。プレミアム優待倶楽部のポータルサイトに訪れれば手軽に当社を知ることができる、便利な検索ツールになっている点も非常に良いと感じております。何より、他社の株式を購入した、実績ある株主様が当社を知っていただく可能性がある訳ですから。

さらに、“プレミアム優待倶楽部”を利用されている他の企業様と当社のポイントを合算できるという点。会員制クラブのような連帯感とシナジーが発揮され、これから株主優待制度を導入する企業が増え、株主様の利便性から利用を増やしたいという期待も持てます。自前では到底できないことですよね。

優待制度導入で流通株式時価総額の課題をクリアし、配当施策にも改めて力を

―― プレミアム優待倶楽部を導入された効果はいかがですか。

南様:
まだ運用開始から約2年ではありますが、株主数が導入前の2021年度対比で約1.6倍程度に増えました。株価についても、株主優待制度導入前の2021年度期末株価は2,480円でしたが、2024年度期末株価は約1.4倍の3,450円(注)になっております。2024年度の期中には最高値で4,390円(注)の値をつけるなど期待以上に上がっており、何より喫緊の課題であった流通株式時価総額はおかげさまで10億円を超えることがました。
(注)取材日は2024年9月10日(9月9日終値:2,840円)
プレミアム優待倶楽部を導入せず、自前で運用した場合、確実に事務負担は増えたでしょうし、このような結果になっていなかっただろうとも感じております。本当にプレミアム優待倶楽部を導入して良かったと思っております。

これとは別に、プレミアム優待倶楽部のポータルサイトでは決算時期で分かりやすく区分されながら、他の企業と並列掲載して宣伝されており、大手の金融情報メディアでは「プレミアム優待倶楽部を利用している会社」として紹介されたりしております。このような間接的な宣伝効果もあってか、確実に当社の認知度も上がっていると実感しています。こうした実感は、個人の株主様がブログ等で当社の株主優待制度を取り上げてくれていることなどからも確認ができます。本当に有難いことだと思っております。

―― 株主様からのご意見などはありましたか。

南様:
直接ご意見をいただくことはなく、受け入れていただいていると感じております。株主総会でも事業等を意識せず、株主優待制度に特化した株主様がいたずらに当該制度について質疑応答するといったことも起こっておりません。

また、できるだけ保有する株主様に不公平感が生じないよう、株主優待制度を受けられる対象を100株以上から細かく設定し、保有年数の制約も定めていないことから、株式の流動性と公平なポイント設計によってそのような効果があったのかもしれません。

―― プレミアム優待倶楽部を今後どのように利用されるか予定ですか。

南様:
今後の株主様に対する利益還元策には、配当金と株主優待制度を併用した実質利回り高めること、当社株式の認知度向上を施策として、2024年7月16日付けで適時開示も行っております。

そのためには、着実かつ安定した業績、堅調な業績といった本業をベースに、配当金を還元していくという原点に改めて力を注がねばならないと当社は思っております。

次の段階で、例えば御社のサービスである株主ポストを利用し、株主様に接する機会も増やしていきたいなと考えております。

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